
Couch Surfing Club #11
西海岸ロードトリップ編
Skinny Dip
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2022.10.06
#11

トヨタのタコマに乗り込んで、さらに101を北上すること1時間。
睡眠不足と空腹と長旅の疲れか、助手席で何もせず座ってるだけなのに、気持ちが悪くなってきた自分に焦る。
そろそろ言葉も発せられなくなってきて、生アクビが止まらず、唾を何度も飲み込んだ。
「飽きてきた?」
フロントの液晶に手を伸ばし、聞いていたポッドキャストを止める友達。
「ううん、そうじゃないんだけど。ごめん、わたし今車酔いしてると思う」
そう友達に告げると、近くのガソリンスタンドに立ち寄って、キオスクの前のベンチを指差し、
「ガソリンもついでに補給するから、あそこで少し風にあたって待ってて」
ふらつきながら言われた場所で深呼吸をしてみる。

ガソリンも満タンに自分もこれで大丈夫、と言い聞かせてタコマに戻るもまた気持ち悪くなってしまった。
「まだ気持ち悪い?」
「うん、本当ごめん」
すぐに空調を切り替え、
「酸っぱいのが込み上げてきてるならこれ飲んで」
マテ茶とお腹を落ち着かせるのにナッツバーをくれた。

前回のエピソードで爆笑してしまった一件を心の中で思い出して、気分はまさに大泣きの絵文字状態😭😭
再出発してから1時間後、座面に沈み込んでしまったわたしを見かねてか、
「ちょっとここで休憩しよう」
そう言って、ハイウェイ沿いの車寄せに一度車を停めた。
車を降りてからなぜか嬉しそうな友人。
「多分ここで合ってると思うんだけど」
わたしはなんのことか分からず、車酔いと低血圧とでボーっとしてそれ以上何も聞かなかった。
「ちょっと散歩しよう」

「この赤い葉っぱ分かる?これ全部ポイズンオークだから触らないようにね」
そう言う彼は前回の事件のせいでサンダル素足...
「わたしより自分の心配して」
「そう言われればそうだな」
散歩というよりちょっとしたトレイルを下り、誰かが設置したロープを頼りに急な崖を降りていく。
足元が悪いところを集中して歩いてるうちに、いつのまにか少し酔いも覚めていくようだった。

先に平地に降り立った友人が背中の方で
「やばい!早く!来て!見て!」
と興奮気味に叫んでいる。
わたしも崖を降りたところで、自分の背面に広がる景色に圧倒された。
「うわおぁあ」
多分変な声だったと思う。

そこは侵食されてできた岩壁に大きく開いた穴、そして向こう側から流れ落ちる清流がわたしたちの目の前に広がっていた。
「ちょっとこれは絶対泳ぎたい」
そう言うと絶対写真撮らないでよ、とだけ告げ生まれた時の姿で清流にダイブする友人。
「YUIも入った方がリフレッシュできるかもよ!気持ちいいよー!!」
と穴の近くまで行って気持ちよさそうに水行をしている友達を見て、釣られて自分もダイブイン。
ハリっと冷たい水の上に浮かんで頭から爪先まで水圧に包まれ、太陽も出てきて大自然の力で体調がリセットされていくのを感じた。

水から上がり冷えた体をお日様の光で自然乾燥させるまでの間、生まれたまんまの姿で仁王立ちする二人。
横で笑いながら、
「気分よくなった?これでYUIも正式にヌーディストの仲間入りだね」
思わずわたしも笑って
「こんなこと日本でやったら即逮捕されちゃうしここだけだよ!」
少しずつ蒸発していく水分と反対に、新しい思い出が徐々に自分の中に浸透していくのを感じながら
「じゃあ行こうか」
そんなことが言えるまで復活して、まだ濡れている髪を両手でぐしゃぐしゃと触って顔を覆いながら、さっきまで入っていた水の匂いを思いきり吸い込んだ。
旅路は長いけど時間はたっぷりある。急がなくていいからゆっくり行こう。
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Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。












































































