FillIn The Gap #11
ドタバタあめりか縦横断
ちょっとしたドタバタ vol.2 〜ドライブスルー事件〜
Contributed by Haruki Takakura
Trip / 2022.10.14
この春ファッションの世界に飛び込んだHaruki Takakuraさんが、世界との距離を正しく知るために、デンマーク・コペンハーゲンで過ごした小さくて特別な「スキマ時間」の回想記。
#11
「お腹すいたなあ〜。あ、そういえばまだじゃない?」
だだっ広い荒野を走る、退屈なRV車内の空気がガラッと変わった。僕たちは、世紀の大発明をしたかのテンションで「うおぉぉぉぉ〜!!!」と声を上げる。
なにを隠そう、マクドナルドの話である。
この旅が始まって以来、ハンバーガーは自炊でも食べたし、メンバーの大オススメであるChick-Fil-Aでも食べているので、ハンバーガー自体が恋しいというわけではない。それに、実はマクドナルド自体は訪れている。RVに乗り始めて2日目のこと、マクドナルド発祥の地、サンバーナーディーノにある初号店を訪れていたのだ。
僕たちが初号店を訪れた時には、すでに外は薄暗く、さまざまなキャラクターの像を周りに従えた初号店は非常に怪しい雰囲気を放っていた。オフィシャル感が全くない初号店は、よく言えば歴史を感じられる、一般的には廃れたムードとやらを放っている。
よく見ると、ロゴに使われているキャラクターも僕たちがよく知っている不気味なドナルドマクドナルドではない。ハンプティダンプティに似た愛らしいキャラクターである。
マクドナルドの始まりといえば「How McDonald’s Started」という面白いビデオがある。あるサラリーマン風の男性が初めてマクドナルドを訪れ、出てきたオーダーに対して「今オーダーしたばかりだ、No,これは俺のじゃない」と言い、TO GO文化に戸惑い「どこで食べればいい?」と店員に尋ねる。ものすごくチャーミングな男性の戸惑った表情に、とても癒されるビデオだ。
ほんの数十年前には、今では当たり前の文化に驚き、戸惑い、感動できる時代があった。そう考えると、あまりに便利すぎる今の時代がつまらなくも思えた。
だが、便利でおいしいことに恩恵をたくさんもらっているのも確かだ。フィリピンでは、大学を卒業しなければ働けないほどの、職業カーストが高い夢の職業になっていたりもする。給料や労働環境が良いわけではないが。
何はともあれ、僕たちアメスク一行は、まさにスピーディーで病みつきになるあの味が恋しくて、ドライブスルーに行くことを決めた。
確か、ラスベガスの高速道路からなかなか抜け出せずにさんざん迷った挙句、ようやく辿り着いたマクドナルド。
「やっとや〜!」
みんなの希望が、煌めく「M」の一文字に注がれている。本場アメリカで、それもRVで、夢のドライブスルー。テンションが上がった一行は、夜の滑走路のように煌びやかに光るドライブスルーウェイを進んでいく。
その時だった。
「ガガギィイイイ」
意味不明な音が、窓の外から聞こえてくる。と同時に、車の歩みが止まった。
ドライバーの居眠り小僧をみると、真っ青である。
少しして「やっちゃった」と呟いた。
もう時効だろうとは思うがしかしである。これ以上の言及は避けておくべきな気もする。
高さ制限バーぎりぎりのドタバタ語録。
ご査収ください。
エリア51周辺にて。
Yosemite公園内の休憩スペースにて。
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Haruki Takakura
1999年大阪生まれ。ロックダウン中に経験したコペンハーゲンでの休学ライフなど、隙間期間に目を向けた「FillIn The Gap」をContainerにて連載中。ビールが好きで好きでたまりません、なのに、お酒に弱い。