一生覚えていたい

Greenfields I'm in love #69

一生覚えていたい

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2022.10.14

兵庫県神戸出身、東京在住のWriter/Photographer。学生時代に渡ったイギリス留学を機に、人や、取り巻く空間を魅せる表現に興味を持ち、現在Containerをはじめ、カルチャー、フードメディアにて発信中。

#69

大好きなリアムとサムと3人で最後に過ごした、素敵な土曜日。ロンドンで一番一緒に遊んだのは、紛れもなくリアムだ。もう一人のサムは俳優をしていて、リアムの親友。リアムと会う内の3回に1回は、こうして3人で遊んでいた。リアムとサムとの時間は私にとって特別で、いつもお別れのハグを交わすとき、「今日のこと、絶対忘れないでいよう」と思ったのだった。こんなにもロンドンが大好きなのは、彼らがいつも街のあちこちへ私を連れ回し、魅了させてくれたからに他ならない。

この日はサウスバンクで待ち合わせだった。駅のインフォメーションは、すっかりクリスマス仕様だ。



曇り空でカラッとしていて肌寒い、まさに典型的なロンドンの冬の日。この時期はあちこちではクリスマスマーケットが開かれていて、ここにも小さなものがあった。

小さいけど、すごい人の数。



普段からこの川沿いには、レコードや古本が並ぶ。



テムズ川のほとりを少し散策すると、Southbank Centreに併設された本屋さんへ向かった。サムがそこにいるんだって。
今もアクタースクールへ通うサムは、小説コーナーで次の舞台のために作品を読み漁っていた。サムとはよく遊ぶのに、一度も彼の舞台を見たことがなく、もう見れそうになくて残念だった。
リアムも、今はSOAS(彼が秋から通い始めた学校)で、日本をはじめアジアの歴史や言語の勉強をしているが、その昔はサムと一緒に俳優を目指していた。この国、特にロンドンにはアクターを目指す人がとても多いと思う。もちろん成功する競争率もそれに比例するんだと思うけれど。だから、フルタイムで仕事をしながら俳優業を両立するのはごくごく一般的で、そういった形で夢を追う人たちの年代も様々だった。そうして掛け持ちして仕事をするのは大変なことも多いかもしれないが、夢に正直な分、彼らが「何をしている人なの?」と人に聞かれた時、自信を持って楽しそうに語る姿が印象的だった。

外に出て、サウスバンクのマーケットをぐるぐるしてから、急遽サムのバイト先へ向かった。Evreymanという、かわいい小さな映画館だ。役者をしながら、映画館でバイトをするなんて、彼の演劇への愛がよくわかる。今日は映画を観るわけではなくて、この映画館でmulled wineを飲みにきた。mulled wineはさっきのクリスマスマーケットにももちろんあったのだけれど、高すぎる! とか言って、わざわざここまで足を運んだのだ。



mulled wineとポップコーンを1人1つずつ抱えて、私たちはだらだらといつまでもそこにいた。mulled wineはスパイスが香っていてとても美味しいし、サムの友達が一人ひとつくれた大きなポップコーンは出来立てで温かく、キャラメルがたくさんついている。ああ、この時間はまさに、幸せそのものだった。

映画館までの時間や電車のことを考えたら、mulled wineの値段なんて、さっきのクリスマスマーケットときっと大して変わらない。でも、ここまで来た価値は十分すぎるほど、いや、それ以上に無いほどにあった。


日曜日の朝。昨日のヨークシャープディングをまた食べた。



リアムたちと遊んだ次の日は、日曜日、一人で大好きなコロンビアフラワーマーケットへ行くと決めていた。今年ここで過ごせる日曜日はあと2回、わたしはその2日共、家から1時間もかかるマーケットに通った。
この日はロンドンにしては珍しく、雲一つない、晴れた日だった。

クリスマスももう間近、フラワーマーケットで売られる花や木々も、クリスマスを匂わすものが増えてきた。私がこのマーケットが好きな理由は、四季折々とそうした植物だけではない。そんな花々を求めて、ここへ集う人たちが好きだった。一段と寒さを感じられる今日も、暖かそうな防寒着を身に纏った彼らは私の目を釘付けにした。

ニット帽が素敵。



彼女もかわいい!



マーケットを何重も往復して人間観察を楽しむ。やっと気が済んだら、R&Aという、世界有数の美大へ。今日もリアムとサムと会う。

2人がいたのはメンバーシップだけが入れる素敵なカフェ。入ってみると、知的そうなカッコいい大人たちがたくさんいた。ここに入れるのは、メンバーのリアムのおかげだった。あっちこっちの図書館や建築物のメンバーシップに入会するリアム。前にも書いたけれど、彼は本当に時間を大事にする人だと思う。

今日は、サムが私の似顔絵を描いてくれた。



その後、1時間もかけてWinter Wonderlandが開催されるHyde Parkを渡り、ケンジントンまで散歩した。 こんなことは起こったらどうする? とありもしない仮説を立てたり、究極のクイズをしたりしていたら、どれだけ寒くても何時間にも及ぶ長い散歩は、一瞬に感じた。

ボケボケだけど、お気に入りの写真。



ちょっと歩かせすぎちゃったね!とリアム。



つづく。


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