何にも無いから良い、なんて

To Me, Somewhere in the World #53

何にも無いから良い、なんて

Contributed by Yoko

Trip / 2022.11.16

「世界一周がしたくて、思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#53

今年5回目の道東旅。11月に入り、車で移動できるのは今年最後だと思ったので(冬は運転しないと決めている)、ずっと行きたかったお店に行ってみた。釧路から2時間ほど走ったところにある足寄(あしょろ)。その町中にあるわけでもなく、「町と町のあいだ」のような場所にたった一つあるカフェへ。最近シードルを作り始めたと聞いていて、ずっと行ってみたかった場所だ。




@cafe_de_camino


行けども行けどもカボチャ畑のようにオレンジ色だらけの紅葉の景色を越えて、いくつもの町を超えて、ようやく到着。ガソリンスタンドやお手洗いの場所を間違うとひとり絶望しそうな、想像以上の田舎だった。思った以上にポツンとたたずんでいるカフェ。




ひだまりファーム。


中に入ると、ガラス張りの窓越しに見える大自然が素敵だった。紅葉とはいえオレンジ色ばかり、というのも今週から。少し前までは様々な色の紅葉が楽しめていたらしい。葉が落ちてしまい、オレンジ色だけが残ったとのこと。


秋色ご飯。


お昼時だったので、まずはお昼を、と思ったら本日のスープは「カボチャのスープ」。カボチャを想起させる色ばかりをずっと見ていた道中、着いてもカボチャかと笑いつつ、しっかりいただいた。もう寒いので、暖かいものが身に染みる。




テイクアウトしたシードル。長野にもゆかりがあってびっくり。


平日の日中、立地も相まって他にお客さんはいない。足寄に移住してこのカフェに勤めているというスタッフのお姉さんと話しながら、景色が素敵だ、という話をただただする。冬の厳しさ、それでも来てくれるお客さんと過ごす時間の濃さ、人里離れたところで営む暮らし。何にも無くていいな素敵だな、だからお客さんが来るんだろう、と思う。反面、それは対比する環境での暮らしを経験しているからこそ思えることで、灯台下暗しって本当だよな。


帰りに立ち寄ったオンネトー。


自分は北海道出身であるが、地元が本当に好きだと思えたのは一度本州へ出てからだ。何にも無い、いや何にも無いわけじゃないけれど何か足りない……その「何か」を求めて憧れの都会に出て、「何にも無い」が良いと思う未来が来るなんて意外だった。

結局何事も無い物ねだりなのだと思うことが増えた今日この頃。環境も人も、住む場所も。今あるものを愛おしみつつ、新たな出会いを楽しみたい。


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