FillIn The Gap #12
ドタバタあめりか縦横断
旅と休符
Contributed by Haruki Takakura
Trip / 2022.11.25
この春ファッションの世界に飛び込んだHaruki Takakuraさんが、世界との距離を正しく知るために、デンマーク・コペンハーゲンで過ごした小さくて特別な「スキマ時間」の回想記。
#12
旅と休符
旅にはあらゆる魅力が詰まっている。その中でも特別、僕の目に魅力的に映るものがある。
それは、予想だにしないトラブルが起こるあのドタバタ感だ。
この旅でも、夜の高速道路で警察に怒声を浴びせられたり、タイヤ2本がパンクするなんていうトラブルが起こった。パンクに至っては修理業者が来なければどうにもならない問題なので、結局フロリダあたりで丸一日待ちぼうけする事態になった。
そんなマイナスに思えるトラブルだが、そういう静寂があるからこそ旅は楽しくなるのではなかろうか。どこか音楽とだって似ている。休符があるからテンションの移り変わりや想像の余白が生まれてくる、と音楽の授業で教わったっけ。
旅にだって急がない日があってもいい。ゲストハウスの周辺をゆっくり歩いたり、行きつけのカフェや屋台を見つけてみたり。そんなひょんなところに、異国のミソは詰まっていたりするものだ。そして、そういう記憶は情報とは違って「当時」「現在」「未来」の時制で少しずつ形を変えながら、心に染み付いて離れない。
僕が今綴っているのはあくまで「現在」の自分がカスタムした当時の記憶の話。それでも、かつてのお気に入りアイテムを箪笥の奥にしまったままにしないことには、意味がある。こうして文章を書くのは、その意味がやっと少しずつわかってきているからでもある。
旅に休符を。
キーウェスト
さーーーーーーて、僕たちアメスク一行の現在地はというとアメリカ東部である。ナショナルパークやニューオーリンズなどを経由したロスからの横断旅を終えると、次はキーウェストからニューヨークへ北上する縦断の旅へと変わる。
それと同時に、「NYに憧れている睡眠魔」が起きている時間も少しずつ長くなる。
人生の余暇に訪れたい場所を見つける。それもひとつ、旅の醍醐味である。アメリカ縦断旅のスタートともなるキーウェストはそんな場所のひとつだった。
アメリカ本土最南端に位置するキーウェストには、豊かな自然に南国感満載の食事やドリンクなどが溢れている。案の定、若干20歳のメンバーの僕たちはお酒は飲めないので、自然と南国の雰囲気を楽しむことに全力を注いだのだが。
ここもまた、いつか帰ってこなくてはいけない場所である。
キーウェストへはフロリダから続く「Seven Miles Bridge」を渡って行くことができる。名前の通り全長7マイルの橋という単調なネーミングであるが、ここから見える海は七色とも言われる虹よりも多様な色遣いのよう。太陽の角度、海の浅深、底の模様。さらには、キューバに近いからか、時々通り過ぎていく旧アメ車なんかもその光景にスパイスを添える。
Seven Miles Bridgeを渡れば、そこには自由な雰囲気がたまらなく溢れる街キーウェストがまっている。今でもキーウェストにある国道一号線の終点で買った、かわいい栓抜きがビール好きな僕にとっては宝物だ。綺麗なエメラルドグリーンの持ち手だけが、今日もザックの中でチャリチャリと音を立てている。
肝心な先端の輪っかは、なぜだか無くなっている。
End.
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Haruki Takakura
1999年大阪生まれ。ロックダウン中に経験したコペンハーゲンでの休学ライフなど、隙間期間に目を向けた「FillIn The Gap」をContainerにて連載中。ビールが好きで好きでたまりません、なのに、お酒に弱い。