灯台下暗しばかりでも

To Me, Somewhere in the World #54

灯台下暗しばかりでも

Contributed by Yoko

Trip / 2022.11.23

「世界一周がしたくて、思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#54

久しぶりに、せかせかしない東京滞在。かつて暮らしていた街で、平日の昼間からのんびり散歩をしているのは心底不思議な気持ちだった。今の働き方では、暮らしている街で昼間からのんびり散歩をして、何なら友人に遭遇することも珍しくない。でも東京に居た時は違ったから。何だか少しだけふわついた気持ちになった。


東京・浪花家総本店。


暮らしの近くにある場所に、数年経っても行かない、ということがよくある。理由は不明。ふと思いついて有名なたい焼き屋さんに立ち寄ると、覚悟していた行列はなく、ただ「いらっしゃい、一つからでもお気軽にどうぞ」。言葉通り一つだけ注文して座って待っていると、後から来て隣に腰掛けたマダムが「ここの、美味しいのよねぇ」と声をかけてくれた。そのまた後に来たお姉さんは差し入れ用にと何十個も注文したのち、「一つ、暖かいものを別で」と言う。「せっかくなら食べたいものねぇ」と笑うお姉さん、即席女子会メンバーで一緒に笑った。こんなに近くに暖かい世界線があったなんて、当時は一つも気づけなかった。


@katsuo247


さて、久しぶりに会う友人とお昼ごはんを食べ、別れて一人、表参道へ。大きな交差点の角に、今まで気づくことはなかった静かに漂う本屋さん。そこで好きな写真家さんの展示が開催されていた。写真はもちろん素敵だったのだけれど、初めてお話できたことと、旅の中盤で訪れた奥尻島の今を共有できたことが特に嬉しかった。彼もまた奥尻島を訪れたことがあり、そこでも素敵な写真を撮っている。


長野・善光寺にて。


諸事情で旅程を泣く泣く切り上げて帰ると、今シーズンまだちゃんと見ることができていなかった紅葉がすぐそこに。京都や日光まで行かなくても、名所と呼ばれるところにわざわざ足を伸ばさなくても、切り取りたくなる景色がすぐそばにあった。


北海道・奥尻島にて。


もうすぐ冬。出不精にならざるを得ない寒さが来る長野だけれど、ここにしかない日常と特別をもっと見つけたいと思った。


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