Couch Surfing Club #28
西海岸ロードトリップ編
Super Low Tide
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2023.02.09
#28
「今日はSuper Low Tideだね」
友人が波打ち際を指さしてそう言った。
確かに引き潮マックス、水が引いて硬く引き締まった砂浜がものすごく広大に感じられた。
海も山も好きだけど、とにかく外にいるのが好きだ。
特段アウトドアなわけでもないけど、季節を問わず歩くのが一番好きなアクティビティだろう。
日が出ていると尚良い。
東京のコンクリートジャングルを靴底を擦り減らしながら歩くより、天候と気分次第で散歩のロケーションを変え雲の動きや風に揺れる草木を眺めながら自然と目線を上げて歩いていると無心になれた。
こんなにもあっけらかんと自然に放り出されると自分がとても小さく、もはや個体であることを感じなくすらさせられる。
行きに見ていた霧もどんどんと流されて自分の心までもクリアに晴れ渡っていくようだった。
砂浜での散歩の道半、ちょうど良さそうなログを見つけ少し休憩することにした。
友人と腰掛けて遊ぶ犬を眺めていたら、おもむろに靴と靴下を脱ぎ始める友人。
波がなくてとても静かな海がなにかを訴えかけていたかのようにスッと立ち上がり、海へと歩き始めた。
そのままジャブジャブ、、ジャブ
短パンのまま入水。
水辺に目がない友人、水を見るとほんとにすぐに入っていってしまう。
遠浅でまだ膝が見えてる海の中から手を振っている。
「めっちゃきもちいいよー!!」
言われなくても顔が全てを語っていた。
前世は魚かな。
びしょびしょの足で靴を履くのは断念したらしく、海から上がって裸足のまま散歩を続けることにした。
わたしも体調が万全だったら足くらい海に浸かりたいところだったけど、それはまた今度。
ビーチウォークも終盤に差し掛かり、乾いた砂浜では打ち付けられたアザラシのように横たわる男性や親元から離れ一人砂まみれになって遊んでいる子供がいた。
どちらともあまり状況が飲み込めなかったけど、自由の国アメリカ、みんな好き好きに楽しみを見つけている、まさにそんな感じだった。
砂浜からはがらっと雰囲気を変えて、クラムビーチの駐車場へと戻る道へと向かう。
この道が原風景を生かしたデザインになっていて最高の癒しスポットの一つだ。
駐車場に戻り、おおむね想像はしていたけどとてもそのまま車に乗車できるような足元ではなかった。
助手席に放り投げておいたサンダルに履き替えて、靴下についた砂が今日1日のアクティビティを物語っている。
砂埃じゃなくてしっかり砂を蓄えた靴をひっくり返す。
しばらくはたいても生地に入り込んで取れない。
このまま砂も一緒に旅の道連れとしよう。
アーカイブはこちら
Tag
Writer
-
Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。