ロンドンへ

Gloomy day All day #1

ロンドンへ

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2023.02.03

フォトグラファー/ライターの上野文さんが、過去のイギリス留学の様子を綴ったContainer WEB人気連載『Greenfields I'm in love』。全74回の連載を終え、今回からは2021年の冬に過ごしたロンドンでの2週間をお届けします。大好きなロンドンでの、小さな「きっかけ探し」の旅。

#1

2021年の締めくくり、ロンドンへ行った。たった2週間と少しの旅行だ。でも、本当にいい旅だった。
Containerで新しく連載をさせてもらえることになってとても嬉しい!ロンドン旅行の日々をまた、辿ろうと思う。

コロナが流行り始めて2年近く経った。これまで当たり前だったことが当たり前ではなくなって、また新しい当たり前がいくつもできた。例えば、「海外旅行にいくなんて、クレイジーだ!」みたいな。もし、行くなんて言えば、「え?」と眉を寄せて聞き返される、そんな感じ。

それでも、ちょっと無理してでも今、ロンドンに行きたかった。

大好きな神戸を離れて、上京して1年。東京では、またたくさんの新しい出会いに恵まれた。楽しい人に囲まれて何か見たり言われたりする中で、私はあれこれと思いに耽った。
若いからまだやっておかなくて大丈夫なことなんてないのかもしれない。それから、年を重ねても心がフレッシュでいる人は魅力的だ。環境とか、時代とか、自分じゃない何かを言い訳にしないで、やってみたいことはちゃんと行動して、実現したいなと思った。

話は少し変わるけど、2年前に留学から帰ってきた時、個展をしたいと思ったことがある。コロナが始まってからその夢は自然消滅しかけていたのだけど、ひょんな時にまた蘇って、やっぱりやりたいと思った。
海外旅行なんていけないという当たり前を一度忘れてしまおう。年末年始のお休みと有給を使ったら、十分な時間が取れそうだ。最近、コロナの規制も急に弱まってきた。どきどき、胸が高鳴る。ロンドンに行っちゃおう。たくさん人と出会って、写真を撮って、それで東京で個展を開きたい。
暇つぶしの妄想から、この旅の計画は始まった。

チケットを取った直後に、変異株のオミクロンが著しく流行した。一旦緩んだように見えた規制は、緩むどころか更に厳しくなって、フライトはキャンセルばかり。渡英そのものが怪しいし、オミクロンはヨーロッパを蝕み、諦めたほうがいいような風潮が流れていた。いろいろと悩んだ結果、乗りかかった船だし、もうこうなったらフライトが欠航にさえしなければ行ってしまおうと自分の中で決めた。そこからは毎日厚生労働省と、大使館のサイトと、Twitterを交互ににらめっこだ。

最後までハラハラしながら待っていたけど、どうやらフライトはキャンセルにならず、わたしは出発の日を迎えた。
当日は友達のあんちゃんが空港まで来てくれた。あんちゃんは会社で出会って、それからとっても仲良くなったわたしの大切な親友だ。この一年、いつも一緒にいたあんちゃんは、この計画も自分のことみたいに応援してくれていて、最後は笑いながら涙まで流して見送ってくれた。あんちゃんがいたから、わたしはとっても安心した気持ちで、もうすでに心がぽかぽかだった。

フライトは大好きなエミレーツ。ドバイ経由でロンドンに到着する便だ。スッカスカの座席を予想していたけど、その時ドバイでは万博が開催されていて、飛行機はほぼ満員だった。もちろんみんな当たり前にマスクしているのだけど、よく見たら口元に当てられたそれはアイマスクだったりして、わたしは思わず笑った。


飛行機でMe Before Youをみた。



ドバイで乗り換えた飛行機は、さっきと打って変わって、がらんどう。


ロングフライトの末、雲の間を潜ると、真っ青の空はどんよりした灰色に変わった。街を見下ろすと、そこはわたしの大好きなロンドンだった。気がついたらうるうるしていて、慌てて涙を拭った。たった2週間程度の旅行だけど、私は絶対にこの旅行で人生が変わるような経験がしたい!小さな小さな何かのきっかけは、きっとそこらじゅうに落ちているだろう。あちこち歩き回る、毎日2万歩の旅のはじまりだ。




つづく!


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