こんにちはベルリン

Flohmarkt am Wochenende!! #1

こんにちはベルリン

Contributed by Kyogo Hidaka

Trip / 2023.02.27

日本から飛び出したくて2週間後に行くと決めたドイツ・ベルリンの街。肌で感じた現地の“mood”、そこには自分が知らずに求めていた“余白と自由”があった。フォトグラファー・Kyogo Hidakaさんが今でも大切に持ち続けている、あの頃の色褪せない記憶たち。

#1





先端の細い棒のようなもので肩を突かれて目が覚めた。目の前は線路で、どうやら駅のホームで眠ってしまっていたみたいだ。
顔を上げて周りを見渡したら険しい顔のドイツ警察8人に囲まれていた。よく見るとうち2人は映画でしか見たことがないような長い銃を持っていて、たぶんアサルトライフル??
一瞬、何が起きたのか全くわからなくて焦る。とりあえず僕の肩を突いたのはきっとこの長い銃だと思った。
警察の1人が僕に「こんな所で昼間から何で寝ているんだ」と聞いてきた。その時僕はまだベルリンに来て1ヶ月も経ってない頃でドイツ語も全くわからなかったが、たぶんこんなニュアンスだったと思う。
なるべく冷静に心を落ち着かせて、自分が今なんでこんな場所に居るのかを思い出してみる。





その日はいつものように朝から語学学校へ行き、ほぼ何を言っているのかわからない授業を受けながら、とりあえずクラスメイトには笑顔を絶やさず振りまき、無事終了のチャイムが流れた。帰り際に先生からイベント告知のチラシが配られ、それはドイツビールフェアの案内だった。陽気な先生は「ドイツと言えばビール!」と言って、クラスの仲間と打ち解けるのにも良い機会だからこの後みんなで行っておいでと教えてくれたのだ。
僕はクラスメイトのチリ人2人と一緒にそのイベントに行くことになった。
行きの道中、ベルリンに来てここ数週間生活に慣れるのに必死で全くアルコールを体に入れていなかったことをふと思い出した。そして僕は元々お酒が強い方ではなかった。







ドイツビールフェアの会場は、想像していたものよりかなりローカルな感じで野外の空き地みたいな場所で行われており、雑なテーブルとイスがそこら中に置かれていて、みんな好き勝手に飲んでいる。
僕らもとりあえずビールとソーセージを頼んで待つことにした。ビール1杯5€。日本の居酒屋くらいだなと思っていたら、出てきたビールは日本でよく見るジョッキの4倍もあるサイズに驚いた。はじめは最高な雰囲気にテンションも上がってみんなで楽しく飲んでいたのだけど、2杯目を飲む頃にはしっかり酔ってしまい、あまり話すこともできず開始数時間でビールも残して退場することに。
帰りの電車で外の空気が吸いたくなり、途中下車をしたら急激に眠くなってそのまま座り込んでいたみたいだ。





ここまでの経緯を拙い言葉で説明していたら、それまで険しい顔だったはずの警察達が皆不思議そうな顔をしている。これは全く伝わっていないのかと思ったら、「何を飲んだって?」と聞き返された。もう一度伝えると本当にビールでそうなったのかと驚かれ、そんな奴は今まで見たことがないと大笑いされた。非常に恥ずかしかったが、それ以降警察から威圧感はなくなり、手厚く介抱されながらベンチに移動して軽い世間話をしたのを覚えている。


僕にとっても、ドイツ警官にとっても初めての経験をしたこの出来事が、僕のベルリンでの生活の始まりとなった。







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