ドタバタあめりか縦横断

FillIn The Gap #15

ドタバタあめりか縦横断

最終章

Contributed by Haruki Takakura

Trip / 2023.02.17

「これからどこまで自分の世界を広げられるだろうか」
この春ファッションの世界に飛び込んだHaruki Takakuraさんが、世界との距離を正しく知るために、デンマーク・コペンハーゲンで過ごした小さくて特別な「スキマ時間」の回想記。


#15


さて、ウィリアムズバーグでの夕陽がどうとかカッコつけた話をしていた僕は、「ヒィ、、ヒィ、、」と長い坂をなんとか登り切った。

そしてそのまま、SOHO サイクリングサークルの一行は、集合場所であるタイムズスクエアまで向かった。そこには、マンハッタンを回り終えたチームがすでにいる。



噂に聞いていた記念撮影の押し売りや、アクロバティックを披露する名物人たちをよそ目に、僕たちは最後の晩ごはんを食べた。ここでも、この旅中に何度も我慢した至高のビールに目が惹かれる。

「ビール、、、」

20歳の大多数は、21歳組がゴクゴクと飲むビールをとても羨ましげに眺めることしかできなかった。だがそれでも、この旅で起きたたくさんのトラブルや思い出を話しはじめると、気づけば、ノスタルジーとムードで酔っぱらったような感覚になっていた。

「そういや、楽しいとか印象的な思い出だけじゃなかったよな〜」

とは言いつつも、出てくる話はどれも笑い話に変わっていく。

グランドキャニオンから見た幾千もの山、ザイオンのそりたつ壁、ニューオーリンズの音と酒に酔いしれる人たち、何にもないだだっ広い荒野。

それから、タイヤがパンクした日中。迷い込んだ夜中のシャッター街。高速道路で警察に怒られた夜。ほんのちょっとした事がきっかけだったメンバーの喧嘩。。。

大きめのリュックを背負ったいかにも観光客らしい一行は、にぎやかなタイムズスクエアのど真ん中で笑い散らかしている。すぐ後ろで起きる「Wooooooo!!!」というアクロバティックショーへの大歓声すら聞こえないほどに。

「さあ、そろそろ帰るか」と、席からゆっくりと立ち上がる。

食べ終えたバーガーのゴミさえ捨てるのが惜しくなっている。やはり、長い旅もこれで終わりかと思うと寂しさが込み上げてくる。それでも、メンバーの笑顔と笑い声を聞くと、そんな寂しさは自然とネオンに吸い込まれて消えていった。

駅の方向に向かおうと振り返ると、カラフルなネオンの間から、オレンジからダークブルーへと表情を変えた空が、顔を覗かせている。

そこには、数秒ごとにその色彩を変えるネオンと、時間をかけて少しずつ表情を変えるニューヨークの空があった。

このロードトリップはまだまだ大学生活の序章である。これからの大学生活の中に設けられたスキマ期間をいかに埋めていこうか。そんなことにワクワクした2018年の夏だった。



『野外ライブ』ニューオーリンズにて




『休憩』ヨセミテナショナルパークにて






タイムズスクエア前にて



FIn.


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