Couch Surfing Club #33
西海岸ロードトリップ編
8yo
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2023.03.16
#33
今朝は絶対に早起きする理由があった。
いつもなら二度寝する時間に無理矢理ベッドからムクリと抜け出した。
わたしがリビングにきたことを確認すると大きな体を更に伸ばして伸びをする犬。
「お誕生日おめでとう」
今日は友人の愛犬の誕生日なのだ。
最初の出会いはドッグシッターとして2週間友人の留守宅に滞在した時。
2018の秋、まだ当時4歳だった友人の愛犬も今年で8歳。
人間の歳で換算すると55歳らしい。
立派な淑女。
去年はさほど気にならなかったのに1年ぶりの彼女は体力の温存のためかよく寝るようになったと思う。
心なしか白髪も一気に増えてきた。
今でも興奮して嬉しすぎると右⇄左にヘンテコな飛び跳ね方をすることがあるけど、疲れやすくなってるんだろうな、以前よりも甘えん坊に、そして今までなかったおやつやごはんを欲しがったりする仕草が増えてきた。
だけどお行儀の良さは今でも折り紙つきで人間の食べ物を欲しがったり食べかけのものを机の上に放置しておいても決して荒らしたりしないし、吠えることがあっても不審者や変な音を聞き取った時に吠えるだけなので、一ヶ月に一回吠えることがあるくらいだった。
今回も深夜に家の窓の外にいる猫に気づいて一度吠えただけ。
トレーニングをしたことはないけど、ローデーシャンリッジバックはアフリカでライオン狩りをすることで有名な犬、DNAレベルに刻まれた本能で友人を熊から救ったことがあると言っていたくらいなので攻撃してきそうな相手や物音にだけ正確に反応しているのは事実。
最後に唸り声を聞いたのは4年前に歩道でホームレスとすれ違った時以来だろう。
彼女にとってホームレスは歩き方が普通の人と違って見えるらしく、ガードドッグとして正しい反応だし散歩をしているこちらとしては安心だけど、何も悪いことをしていないホームレスからしたら大型犬に睨みをつけられて結構怖かっただろうなと思うと少し申し訳ない気持ちになったりもした。
普段はとんでもなく温厚で心配になるくらい。
庭にトイレに行きたい時やご飯の時間になると部屋までやってきて、ただクーンと少し鼻を鳴らして教えてくれる。
99.99%は控えめにお利口に過ごしている彼女のために今日はご褒美のチキンケーキを作ってあげたいと思っていた。
昨日買ったキャンドルもこの日のため。
圧力鍋でほろほろに煮た鶏もも肉から骨を外して食べやすい大きさにほぐしておく。
アルミホイルで形作ったハートの土台に鶏肉を敷き詰めて残った煮汁を流し込む。
冷蔵庫で少し冷やせば煮汁がゼラチン状になってハートのチキンケーキの出来上がり。
寝起きの友人がコーヒーを作りにキッチンにきた。
「パインクリークにお誕生日ケーキ作ったよ」
「へえ、どんなの?」
「これ、あとでキャンドルさしてお祝いしようよ」
冷蔵庫に入れたお皿を指差して
「多いと思うから余ったらチキンカレーにするね」
「分かった、今日のごはんはご馳走だって!」
そう犬に話しかけながら、わしゃわしゃと今朝はいつもより大げさに犬を撫でながら
「お誕生日おめでとうパインクリーク」
生後10週で友人の元にやってきたパインクリークへの愛情は言葉にする必要がない。
なんだか不思議そうな顔でキャンドルを見てた。
蝋が溶けるのはいい匂いじゃないから食べれないって気づいたみたい。
「こんなに小さかったんだよ」
って友人が見せてくれた赤ちゃんの頃のパインクリーク。
ちっちゃ。。
かんわゆ。。。。
おっきくなったね。。。。。
こんなに小さかったのが信じられないほどに元気に成長して、愛らしさと忠誠心は変わらず、本当に友人はこんなにも尊いお犬様と一緒に生きていけて心底幸せ者だと思う。
まだ座り方がままならない感じで今より半分かさらに小さいベッドにさえ余裕で収まっている。
ちんまりと。
一般的に大型犬の寿命が小型犬より短いと聞いていたので彼女(犬)に会いたくて一年に一回ここを再訪してるようなところも実はあったりもある。
そんなおめでたい今日はわたし達もお祝いに外食をすることにした。
ブルーレイクの一大事業の一つカジノで美味しいお寿司が食べれると聞いていたのだけど、去年はまだコロナで営業していなくて今回行きたいと思っていたお店の一つだ。
恒例の散歩を済ませてから立ち寄ったカジノ。
だいたいセキュリティで年齢確認をされるのだけど、想定している生年月日が2000年台なんだろうな(わたしは高校生くらいに見られるらしい)英表記のみのパスポートのページを指で追ってdate of birthを確認する彼らは80年代生まれの生年月日を見たことがないかのように結構てこづり見つけてもらえないことが多くて、ここだよって80年代生まれの生年月日を指差して教えると絶句&放心させてしまうことがよくあった。
いつもびっくりさせて申し訳ない笑
いざ入店。
カジノって言っても、ベガスのような煌びやかな感じよりはゲーセンっていう方が雰囲気伝わるかも。
しかも年齢層は結構高め。
別室ではビンゴ大会なども開催されていて、おじいちゃんおばあちゃんが老眼鏡を高い鼻の先っちょに乗っけてビンゴに興じていたり、黒服着た人がいたりしないもっと自由気ままに楽しめる空間になっている。
寿司屋にはすぐに案内してもらい、サーモン、ハマチ、ブルーフィンツナを頼んだ。
確かに今まで食べてきた近隣の寿司屋の中では寿司ネタが肉厚で、シャリとのバランスがむしろアンマッチなくらい一切れのネタがボリューミーだった。
友人の中ではここがナンバーワンだというのもうなずける。
ただし、お値段もそれなりにして、そこはカジノプライス。
「ここが行った中で一番の寿司屋だと思うんだけどどう?」
YESと言いたいところだけど、わたしは総合的に鑑みて、家の近くにあるSushi Spotが一番だと答えた。
少し不満そうに
「なんで?」
と聞く友人に
「サービスの総合点とコストパフォーマンスがSushi Spotの方がわたしは好き、居心地も少し違うよね」
Sushi Spotは店内の半分くらいのスペースが全てガラス張りになっている。
そのあたりは自然光が入ってきて自然とゆったり落ち着いた気分にもなるけど、カジノではスロットの機械音と人工的な照明の光であまり落ち着かない。
飲食スペース自体の広さも倍くらい違うのでスタッフさんとの距離が近すぎず遠すぎずちょうどいい。
わたしの見解を伝えると納得いかないような顔をしていたので、美味しくないって言ってるわけじゃないと弁明しておいた。
食後に遊んだスロットマシーン。
一秒で$5すったので即退散。
デザートはオーガニックアイスクリームのお店へ。
絶対ワンフレーバーだけなんて選べっこない。
サンプルを少しもらって決心、パイントカップでチョコミントとメープルシナモンをお願いした。
わたしはパイントを食べ切る自信度が元から低めなので、蓋も頼んでおいた。
お店で焼いてるワッフルコーンも本当は指をくわえて見ていたけどね。
無理だ、と潔くあきらめ、
わたし大人だし、と自分を納得させた。
パイントカップいっぱいに詰まったアイス。
どっしりと重たくて、夢のようだった。
友人はレモンポピーシードとチョコレートのアイスをチョイスしていて、わたしは元から自分のアイスにはあまり手をつけないつもりでちょっとちょうだいって言いながらちゃんと1/3くらい味見という体でしっかり味わった。
どのフレーバーも素材そのものの味がしてしっかりアイスになっているので健康的すぎず、アイス欲を満たしてくれる美味しいデザートタイムを満喫した。
今日の合言葉は
「お誕生日おめでとうパインクリーク!」
彼女のお祝いに便乗してわたし達まで美味しい思いをさせてもらったってことにしておこう。
帰り道アイスを頬張る車中で見かけた新婚さんの車。
おめでたい連鎖だ。
彼らのためにも持ち帰るわたしの分のアイスは帰ったらキャロットケーキに乗っけて美味しく食べることにしよう。
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Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。