「0から1を創り出す」言葉の重さ

To Me, Somewhere in the World #67

「0から1を創り出す」言葉の重さ

Contributed by Yoko

Trip / 2023.02.22

『“今”の心地よさを一番大切に』
未知なモノすべて知らないことを知りたい、自分に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#67


いつか訪れよう、と思っていた福島。でもその「いつか」が来るまでに、12年も経ってしまった。当事者としてしっかり体感したあの日、3月11日は千葉にいた。ちょうど次の日に初めての海外渡航(留学・長期滞在)をひかえていた私にとって、誰にとっても忘れられない一日は、さらに忘れられない一日だったはずなのに、もうあれから12年。


東日本大震災・原子力災害伝承館。



B級グルメ・なみえ焼きそば。


気持ちを奮い立たせるように、ようやく岩手と宮城にまたがる三陸へ向かったのは去年のこと。親友の出身地でもある岩手の海沿いの町は、訪れる前から思い出深い場所。実際に訪れてみれば、「これが」と見て体感する・知るものばかりだった。何も知らなければ、山あいの田舎道に比べて、整備された海岸線は不自然なほど新しい景色。車内から海沿いを眺めながら、新しいものがそこにある意味は、知らなければ想像し得ないと思った。


請戸小学校。海まで約300m。


そんな学びからまた1年。今年、福島の海岸沿いを訪れる機会を得た。行きたいと言いながら、イベントでも理由にしなければ、なかなか行けなかったように思う。福島から見る3.11は、三陸とはまた違ったものだった。原子力が街にもたらした確かな希望。2011年のその時から変わってしまった街。見えない脅威にさらされて、避難所を転々とする生活によって削られた命。遅ればせながら時間の流れを追いかけて知る、今の現実。やはり「知っていること」と「知ること」は、天と地ほどの差があると思わされた。私は何も知らなかった。


小高パイオニアビレッジ。コワーキング&宿泊施設など。



言わずもがなハンモックから動かない(ハンモック好き)。



新たな取り組み。


そして見えてきた、福島の新しい街の形。宿泊した小高では、地域のハブとなる新たな場所と人々に出会った。(帰宅困難な時期を経て)ようやく自由に暮らせるようになって、「0から1を創り出すこと」がこの街ならできる、と移住者が増えているらしい。


鈴木屋のおいしいランチ。



ブックカフェ・フルハウス。


確かに真新しいカフェやショップがいくつもあって、地方特有の静けさはあれど、希望と挑戦にあふれている気がした。「この場所だからこそ取り組みたい」と新たな想いを持ってやってきた人たちと、地域に根ざして地域への想いを持った人たちが一緒に暮らしているようだ。


Horse Valueでうまさんぽ。相馬野馬追が行われる地域ならでは。



地域のおいしいお寿司屋さんでランチ。浦島鮨。



小高マルシェ。野菜や地元のものがたっぷり。


0から1を創り出す。
ビジネスの世界で言われる意味よりも、ここで言う意味は重たくて、だからこそ人々の意思と強さを感じた。まだまだこれから、という言葉に果てしなさを感じてしまうのは外野だけで、そこで生きている人たちは、前を向いていたように思う。もちろん過去と現実に、一人ひとりが折り合いをつけながら。面白い場所。また行きたい。


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