
To Me, Somewhere in the World #70
ホーチミンのバイタクおじちゃんの背中
Contributed by Yoko
Trip / 2023.03.15
未知なモノすべて知らないことを知りたい、自分に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。
#70
10日間ほど滞在したバンコクから日本への帰り道、せっかくなのでホーチミンに寄った。バンコクに比べると、ホーチミンの都会度は少し下がる。とはいえ、近代的なビルもあり、一般的な人がアジアのくくりでイメージしている世界とはかなり違うと思う。

タカシマヤ。
バンコクでは移動でタクシーしか使わなかったけれど、ホーチミンでは時折バックパックを背負いながらもバイクタクシーに乗ってみた。知らないバイクに二人乗り。朝、リバーサイドのホテルから街中の観光スポットまでゆっくり歩いて、ホテルまでの帰りに乗ったのが数年ぶりのバイタク。思わずいつも通りぎゅっと裾をつかんで乗る朝のホーチミンの大通りは、たった数分の道のりだったけれど何だかリアルで面白かった。

朝のバイタク風景。

タンディン教会。
ホーチミンの昼は暑い。ゆえに、朝観光して昼は室内で仕事をして夜は街歩きをしてマッサージなどを楽しむサイクルに。その移動でバイタクを何度か使った。7kgのバックパックを抱えて乗るのはなかなか難儀かと思ったけれど、案外そうでもなかった。空港までの30分弱の道のりにも耐えられるくらい。その空港までのバイタクでのやりとりが、心に残った。

みんなバイク。

よかったマッサージ。
バンコクと比べると、ホーチミンの方が簡単な英語でも通じない場面が多かった。どこから来たの、予約したの、など英語が苦手とされる日本人でも意思疎通ができそうな場面でも伝わらない。観光地の一部でもそうだったので、少しびっくりした。そして最後に空港まで利用したバイタクのおじちゃんも。途中で何回か話しかけてくれたのだが、全く理解できなくて、そのまま愛想笑いで終わりそうな雰囲気だった。いつも通りに。でもこのおじちゃんは違った。まずスマホで道を確認してから、バイクが信号に引っかかるたびに、Google翻訳でいろんな質問をしてくれた。
「どこから来たの?」
「どのくらいいたの?」
「日本人可愛いよね」
その一つひとつに笑いと(聞いてくれて)ありがとうの気持ちを添えて、背中越しに回答していった。ぐんぐんバイクは進むけれども、やりとりをするたびに、目的地に近づくごとに、嬉しい気持ちが募っていった。立ち寄らなくてもよかった、と思っていたホーチミンだったけれど。言葉が通じないから「通じないね、ハハ」の愛想笑いで終わりではなくて、つたない英語で何とかしようとするわけでもなくて、日本語でわかるようにと翻訳機能を使って歩み寄ってくれたのが嬉しかった。たとえそれが彼らにとって当たり前の行動だったのだとしても。

空港までの帰り道。
バイタクはしがみついて乗るものじゃないと気づいたのは、余裕が出てきた最後くらいだったが(笑)、落ちるのが怖くてしがみついていたからこそ、彼の首周りのつぎはぎに気づいた。大切に着ているGrabのウェア。それを見てほんの少し切なくなりつつも、人の純粋な優しさに触れて、またベトナムに来たくなった。誰かにとっては「こんなことで」と思うかもしれないけれど、人の気持ちは簡単なことで動く。おじちゃん、またね。

タンソンニャット国際空港。人がいっぱい。
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Yoko
長野在住、北海道出身。世界一周予定が新型コロナウイルスの影響で中止に。東京から葉山、長野へと拠点を移しつつ、国内外を自由に旅している。レバンガ北海道(#11)とアイスが好き。フリーランスのWebライター・編集者。









































































































































