anna magazine vol.11 "Back to Beach" editor's note
「タランティーノがいるところ」
anna magazine編集長の取材日記
Contributed by Ryo Sudo
Trip / 2018.05.11
「タランティーノがいるところ」
3/21。
朝の目覚めはいい。
僕たちはHotel san joseに宿泊していた。
おしゃれ過ぎて勝手に苦手だなと思っていたけど、やはりサービスが行き届いていて気持ちいい。
朝ごはんはmagnolia cafeへ。
ここも昨日の日記に出てきた映画「6才の僕が大人になるまで」のロケ地だ。
ウエイターに「あの映画はここで撮影したんでしょう?」と聞いたら、つれなく「僕は知らないよ」と言われる。
誰かにとって特別なことでも、他の誰かにとってはほとんどどうでもいいことでもあると理解する。
パンケーキを食べる。
アメリカのパンケーキはやっぱりおいしい。店内の雰囲気も最高だった。
色がたくさん使われていて、脈絡もなくカラフルなのに落ち着くのはなぜだろう。
その後、念願の人口サーフィン施設、“N-LAND”へ。
オースティン空港の近くまで走ると、突然でかい建物が現れる。
なんだか貯水池のような雰囲気で、水も茶色っぽい。
自分のレベルに合わせて、ショアブレイクとリーフブレイクが選べる。
リーフは90$/1h。高い。が、せっかくなのでもちろんGO。
…乗りづらい!!!
「とにかく人工池の真ん中のピア沿いギリギリでテイクオフ」というのが、慣れるまではとても怖い。
あとは波のパワーゾーンがほんとにピンポイントなので、勝手が分からず最初の一時間はほぼ乗れずじまい。
見かねたカメラマンが「もう1ラウンド行こうよ」と。
けど、2ラウンド目もなかなか乗れずにいて、残り5分。最後のレギュラーの波に、必死で食らいついた。
ロングライドできた! とてもうれしい。
N-LANDのスタッフも一緒に喜んでくれて、妙な一体感が生まれる。
こういうところがアメリカのいいところだと、あらためて思う。
施設内にはブルワリーもあったりして、夏はかなり楽しめそうだ。
だけど、値段が高いしマシンウェイブってきっとすぐ飽きるんだろうなと思う。
やっぱり海で波に乗るのとは別物なんだね。
どんなに便利な世の中になっても、不安定さやアナログさ、それに人のにおいがあるから日々は楽しいんだ。
ちょっと長くステイしすぎたので、その後の行程が急ぎ足に。
ライターがオススメだというビデオショップ“I LOVE VIDEO”へ向かう。
ロゴも外観も、80年代の映画に出てくるような店。
中からタランティーノが出てきそうだ。店内は広く、“ビッグ”やら“ティーンウルフ”やら、思い出が甘酸っぱくフラッシュバックする作品がたくさん。
やっぱりビデオみたいに、プロダクトとして“所有”できるっていいなと感じた。
その次はまたまた「6才」ロケ地シリーズ。
普通のボーリング場、Dart Bowl。
映画の中ではキーポイントになる場所だ。
平日のレギュラー陣は、年配の人々。みんな楽しそうにプレイ中。
オースティンの人たちは古いものを大事に、しかもセンス良くとっておくのが上手だ。そもそもオースティンは街全体がカラフル。
看板とか、ネオンがとても特徴的だ。
オールドスクールなアメリカのイメージが色濃く残るテキサスという場所にあって、この洗練された雰囲気がどんな風にして生まれるんだろうか。
古いフォトブースがあったので撮影してみる。モノクロがいい感じ。
ちなみにモダンな機械のような利便性、やり直しがきく選択権などは当然ながら全くなし。
一度選んだら二度と引きかえせない、そんな選択のタイミングが昔はたくさんあったんだ。
インディペンデント系本屋としてはアメリカでも最大級のBOOK PEOPLEへ。
リーディングイベントなどもたくさん開催されていて、俳優のショーン・ペンなどもそのリストに入っている。うらやましい。
しかし、巨大な売り場対して、雑誌コーナーの小ささといったら。
雑誌を作っている人間としてはさみしい。
けれど、逆に書籍には今もニーズがあるということなのかもしれない。
ジャニスも通い、ウェス・アンダーソンやリチャード・リンクレイターも卒業したというテキサス大学オースティン校は、全大学ランキング27番目という名門大学だ。
全体的に古い建造物で、図書館とか教室とか天井のデザインとか、とにかくかっこいい。
そうした古いものを、特別に保護することもなく、あたりまえに使い続けているというのがすごい。
いつものように、大学オリジナルのノートを数冊購入する。
夜は、若きジャニスも通いつめていたというレストランバーTHREADGLILL’Sへ。
今日もアメリカンディナー。メインはチキンBBQ。
赤いチェックのクロスがとてもキュートだ。
ブルーグラスの生演奏に合わせて、妙齢のカップルが踊り出す。クールだね。
ジャニスはロックというよりも、カントリーミュージックが本来のルーツなのかもと思う。
その後は、夜のハイウェイをひたすら走って、サンアントニオに向かう。
有名なアラモの砦の隣にある、MengerHotelに泊まる。1859年に作られた、アメリカのヒストリカルホテルのひとつ。たまにはこんなクラシックなホテルもいい。
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Ryo Sudo
anna magazine編集長。制作会社Mo-Greenで数多くの広告制作、企業ブランディングなどに関わる傍ら、"anna magazine"、"sukimono book"などペーパーメディアを中心に独自の視点で日常生活を再編集し続けている。