Couch Surfing Club -西海岸ロードトリップ編- #45
Mrs. Pepper & Mr. Salt
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2023.06.08
#45
いよいよ、ようやく、やっとの想いでポートランド(以下pdx)まで北上する日の朝が来た。
朝ごはんでしっかり精をつけるために前日に買ってきたモッツァレラと庭で採れたトマトとバジルを使ってカプレーゼをさっとこさえる。
付け合わせがサワードウブレッド。
あくまでカプレーゼが主役。
友人に朝ごはんをテラスで食べたいと伝える。
賛成の模様。
ここで食べたらなんだって美味しくなってしまいそうだ。
テラス用だと思われる、Ms. PepperとMr. Saltのボートが写真の画角に収まるように背景にそっと入れ込んでくる友人。
ガラスのテーブルに雲一つない青空が映り込んで大海原のようだった。
今日のミッションはpdxに行くことと、実はもう一つある。
Tigardというpdxに行く途中にある地域で鼎泰豊の台湾料理を食べること。
友人がグルメなのでアジア料理にも精通していてくれて、ありがたいことにオーセンティックな日本食や中華には困らなかった。
むしろわたしがアメリカンチャイニーズや、北カリフォルニア名物のクラムチャウダーが食べたいとか言うと怪訝な顔をされる。
日本だと屋台飯や適当なラーメン屋に行きたいって言われるような感じだろうか。笑
味の好みの大半はリンクしつつも、食のカルチャー的側面ではわたしのほうが幅広くなんでも食べたいという傾向にあるようだ。
友人の実家からpdxまでは車で1時間半、Tigardへの寄り道を考えると移動時間は約2時間。
もともと5週間の滞在予定で4パターンの着替えしか持ってきていなかったので3泊4日のpdxでは洗濯できない前提で全着替えをパッキングしておいた。
着替えとは言えどロードトリップ中にキャンプやトレイルハイクなど、わたしの場合旅行(trip)というより旅(journey)を想定していたこともあり、いわゆる軽装備だけど実用性の高いスポーツウェアがメインのワードローブしか持ってこなかった。
高機能でありながらスイッチが一個しかない、アメリカンな荒っぽい巨大乾燥機にかけても絶対に縮まない屈強な生地で、吸湿速乾保温という旅のお供には優秀すぎるウェアたちは、ほぼ他のアウトドア&スポーツウェアと喧嘩することもなかったので何を合わせてもまあまあ様になるので助かった。
友人にはよく
「ところでそのトレイルベスト車に置いてかないでいいの?」
と聞かれたりしていたけど、貴重品をバッグに入れているより身に纏っているという安心があったし、ハイキングの帰りだというフリをしてたら分かんないだろうという体でスーパーに行ったりしていた。
案の定エコバッグを忘れたりしていてベストに買ったものを突っ込んだりして役に立つこともしばしば。
少し仕事を済ましてから車での長距離移動を控えている犬のための散歩を済ませておいた。
午後3時頃、玄関に用意しておいた荷物を全て車に運び入れ一度家に戻り玄関を内側から施錠したことを確認してガレージに向かう。
犬のリードを任され、
「先に車乗ってて」
と言われガレージを先に出た。
犬がトラックの荷台に飛び乗るように
「hop hop hop hop」
と足場を叩きながら合図を送る。
最後、ガレージと家のキッチンをつなぐドアに鍵をかけ終えて、シャッターの閉まるボタンを押しダッシュでお父さんのレクサスの脇を海老反りの体勢で出てくる友人。
ぽっこりお腹がTシャツからのぞいていたことに気づいて片手でTシャツの裾を下に引っ張って運転席に乗り込んできた。
「準備はいい?」
「もちろん!」
キーを差し込んでエンジンの振動に胸を弾ませながら一路pdxへ(鼎泰豊へも)出発した。
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Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。