To Me, Somewhere in the World #77
余白だらけの時間で見つけるもの – 奥尻島
Contributed by Yoko
Trip / 2023.05.03
未知なモノすべて知らないことを知りたい、自分に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。
#77
春を迎えたばかりの奥尻へ。半年ぶり4回目。
視界不良DAY. うっすら見える島が奥尻。
奥尻の玄関口、函館まではあふれんばかりの観光客がいた。空港の搭乗口の手前まで外国人観光客がいたけれど、いざ搭乗がはじまると、それなりの混み具合。いつも通り。JGC修行の方々がいたようで、すぐに引き返すらしい方々をのぞくと、半分にも満たない上陸率だった。奥尻空港は比喩なしで「本当に何もない」ので、その先にある世界を見せられないのがちょっと残念。豊かな島なのだけれど。ここを見ただけでは印象が違うのもわかる。
奥尻空港。
さて、いつも通り接続の相性がよくないバス（笑）を大人しく小一時間待ってから、奥尻島の秘境も秘境・神威脇のゲストハウスへ。車がなければコンビニにもスーパーにも行けないので、函館で買ってきた食材たっぷりの袋を携えて。前回は卵を持ってきたのだが、今回は見送った。しかし今回こそ卵を保安検査で通過させるべきだったらしい。島でも卵は手に入りにくいと言う。
堤防の端でごろん、が好き。
着いて早々、子どもたちと大人たちと再会。新しい出会いも。いつも通りにたっぷり遊んでもらい、今回は毎日一緒に温泉にも入った。宿からすぐの神威脇温泉に。神威脇には数件の家と、ワイナリーと、温泉と、SUPや釣りができる海しかない。「しかない」と言ってみるが、十分すぎるくらい「ある」と思うようになるから不思議。来てみたら本当にびっくりするくらいの余白だらけのエリアであることを保証できるが、時間が経つと、「なんでもある」と思わせる場所。魅力的な自然と環境があり、人も集まってくるエリア。
朝、もらった炊き込みご飯を食らう図。
おやつの時間にも賑やかにお祝いしてもらった。
今回は日程の都合上、たまたま自分の誕生日に宿につく形だった。そんな理由を使い、いつもごはんを作りに来てくれていたお友達（と言いたい）に、わざわざ来てもらって美味しいごはんを作ってもらった（笑）。魚もたくさん釣ってもらって。ラインナップでたくさん準備してくれていたのがわかって心底ありがたかったし、いろんな人と一緒にごはんを食べる時間を過ごせたのが何より嬉しかった。誰かとごはんを食べることって、大人になると、家族形態によってはとっても貴重。特に大勢で食卓を囲むことは。
いつもなぜか調理しながらビールを飲みながら、そのまま流れでごはんを食べてばかりなので、食卓ではなくキッチンを立ったまま囲んでいるのだけれど。ふと冷静になると、みんな立っているのも面白い。
※前回の訪問は料理の写真をちゃんと撮っていたのでこちらからどうぞ。
https://container-web.jp/trip/49812.html
春のわずかな時間にしか見られないもの。
緑づく自然。
ごはんを食べて、入れ替わり立ち替わり出会う人たちと話をして、ブナ林ツアーに参加して、海を見て、定位置のソファ（各地に定位置を作りがちだ）でのんびり。ごろんと横になって、でも手持ち無沙汰になったころに、子どもたちが「よーこちゃん！！遊ぼう！！」と呼びに来てくれる。これも今だけ、と思うと、まぶしすぎる笑顔を覚えておかなければと感じる。変わるものはたくさんあるけれど、人は本当に変わっていくから。
ここにいると、人と話せることも、天気がよいことも、ごはんを食べることも、手をつないでお風呂（温泉）に入りに行くことも、全部が幸せ。思わず声に出してしまうくらいに（全くもってそんな柄ではないことを申し添える）。でも、そういう子どものころに当然あった日々の断片は、大人になると出会うのが難しい。家族を持たない限りは。
でも神威脇は、都会の便利さがない代わりに自然があって、魅力的な人たちがいて、まるごと一緒になれる。根本的な、シンプルな幸せがある。溶け込んだら、全力で「ありがとう」「ただいま」「おかえり」「いってきます」「いってらっしゃい」を言いたくなる場所だ。
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Yoko
長野在住、北海道出身。世界一周予定が新型コロナウイルスの影響で中止に。東京から葉山、長野へと拠点を移しつつ、国内外を自由に旅している。レバンガ北海道（#11）とアイスが好き。フリーランスのWebライター・編集者。
