また家探しの旅?

SEASON 2 #24

また家探しの旅?

Contributed by Yuumi Saigusa

Trip / 2023.05.23

25年越しで「NYに住む!」という夢を果たし、理想と現実の生活に日々苦戦しながらも、今まで感じていたNYCのイメージとは違う、新しいNYCで自分の現在地を探すYuumi Saigusaの旅連載!

#24


2022年末で切れてしまうVisa更新の為に年末は日本に帰っていました。 Visa問題は海外に住んでいる人なら必ず経験しているだろう厄介な問題なのです。私みたいなテンポラリーでしか発行されないO-1(アーティストビザとも呼ばれてる)という種類は3年おきに更新がやってくる。
取れたと思えば“えっ”もう?? と時の速さをそこで改めて感じるわけだ。
3年なんて余裕であっという間。加えてそのプロセスもかなり面倒で殆どの人が弁護士さんに頼み書類を作成してもらう。600ページ以上の自分についての資料と、過去一緒に仕事をしてきた方々からの協力もお願いをしなくてはいけないから時間もかかるし、もちろん弁護士費用もかかる。(anna magazineの須藤編集長にもご協力頂きました。ありがとうございました! )

そんなんで精神的にもくたびれてしまう。

最初の申請時は訳が分からなくて弁護士さんに何度必要書類の説明を受けた事か。
幸い、私がお願いした弁護士さんはとても親切で、心が広く、わからない点があれば何度も説明してくれたからそれでギブアップせずに済んだけれども、殆どの弁護士さんは説明があまりなく自分で調べて言われたものを提出するだけの機械的なスパルタ型なイメージ。というのも、それが当たり前のようでコミュニケーションのキャッチボールも出来ず、投げたまま返信が戻って来ないと嘆いている同じ様な境遇の人から話を良く聞くからだ。そう考えると私がお願いしている弁護士さんは神のレベルかもしれない。もちろん色々な弁護士さんがいるので、人それぞれフィーリングの合う合わないがあるかもだけど。

と前置きが長くなってしまったけれど無事にVisaの更新を終えて戻って来たかと思えば1年おきの家の更新時期。色々な契約形態があるけど日本の2年更新とは違い1年おきがメジャーのようだ。しかも古くなると値が下がるどころか日本とは真逆に容赦なく家賃が上がる事も多々。なので更新2ヶ月前になると更新するか退去するかのお伺いメールとともにもれなく家賃の値上げ数字もくっついてくる。

NYで定められた規定がある所はレントスタビライズアパート(家賃固定アパート)といい上がらないラッキー物件もあるようだけれども私が2年前から借りているここは容赦無くガンガンに上がっている。。というのもコロナ禍にNY外に出て行く人が沢山いて物件の値段が一気に下がってそこに入れたというラッキー期間だった訳で元の値段に戻っただけ。NYが普通になった今はそれ以上かもしれない。んんんんん。。。。。。どうしよう。
一気に1000ドル(13,1000円 4月現在のレート)上がったという話もあちこちから聞くからそれに比べると多少はまだマシなのかな~と錯覚に陥ってしまう。

“#7の家探しの旅”で経験したような思いを、またしなくてはいけないと思うと考えただけでゾッとしてしまう。2年前よりも人気のある物件は確実に競争率が戻ってきているのがわかっているからだ。そして何よりもここの家が居心地が良く気に入っていて動きたくないというのも大きな理由。せっかく異国にいるのだから色々な街にも住んでみたいというのも本音だけれども、なかなか踏み出せない。ブルックリンからマンハッタン、次なる場所は値段的にもクイーンズ州に引越しか? と、とりあえずどんなもんかと時間があればネットで検索してみる事にした。

しかし心に刺さるような物件はなく、ここ良さそう! と思う所は古い情報で現在は募集していなく。。。そんな感じで興味ある物件を片っ端から問い合わせをしてみるも、不動産屋からの返信も一切ない。募集が終了していたとしても、その旨の返信くらいくれても良いのにと早速くじけそうになる。まっ自分もまだ100%本気の命懸けで探していないから、そんなふうになるんだろうけれども。

そんな中、問い合わせをしていた物件先から1件だけ連絡があった。
日系の不動産屋からだ。電話先の相手は女性で息継ぎもせずいきなり一方的にマシンガントークを始め私の質問の余地もない程の喋りっぷり。なんだか慌てているような話し方だ。なんと表現して良いかわからないけれども、ここは個性的な方と言っておこう。で、初めて会うタイプの不動産屋さんって感じ。最後はこれからお客さんを対応するからと挨拶もなく切られ。まっ、NYだから色々な人がいるからねっと心の中で思ういつものパターン。でもとりあえず物件は見せてくれるようでありがたい。
当日、指定された駅に早めに行って近所の様子を偵察。駅にも警官が立っていて人通りも多くおたけびをあげている危険人物的な人はまず居なそうで安心した。駅前にも夜遅くまで営業している大型スーパーもあり、降りた駅から少し歩くと、また違う線も走っている。便は良さそうなのでまずは合格。

不動産屋から10分遅れるとの連絡が入る。
日本では不動産屋が遅れるという事は滅多にないとついつい比べてしまう私の悪い癖がでてしまう。以前の不動産屋も遅れると連絡があったけな。

「サイグサさんですか?」と私の目の前に現れたのは帽子を被った巣鴨とかを歩いていそうな普通のおばちゃん。今日は落ち着いている様子で軽く挨拶をした後に早速現場へ。
たわいのない話をしながらおばちゃんの歩く方面について行く、広告では駅から3分が大々的な売りのはずなのに10分以上歩いているのになかなか現場につかない。

「あれっ? 駅から3分とおっしゃっていませんでしたっけ?」
「あと向こうのブロックをちょっと行った所です」
その向こうのブロックが怪しい。何ブロックかを宣言しないところ。その時点で駅前とは違う街の雰囲気に変化しているし、すでに期待度は半減していました。
それから3分くらい歩いた所に物件はあった。
「ここの建物、1階にコーヒー屋が入っていたんだけれどもローストする機械が火事を起こして上の住人の方にも一旦退去して貰ったんですよ。なので綺麗にフルリノベされています。」

半減していた私の期待度、リノベの言葉が突き刺さり期待度が少し上がった!
「でも残念です。コーヒー屋が下にあったら毎朝コーヒーのかおりで起きれて気分が上がったのに」と言いながら2階へ。ワンルームと1ベットルームの部屋の2つの扉があった。
「先ずはワンルームをお見せしますね」と扉を開けてくれたが、かなり年季のはいった部屋。ビンテージとも違う。衛生的でないというか。。。

「あれっ? リノベされているんですよね?」
「はい、壁は塗り替えてあります」って壁を塗り替えられているのは普通な事なのでフルリノベされている感じでさっき言われたけど。。。
取りあえずそこは「そうなんですね」と返答し、奥まで行くと床がおもいっきり斜めの事にきずく。ビー玉を転がさなくてもわかるくらい床が斜めだった。ニューヨークのアパートではあるある話なのだけれどもそれにしても斜めすぎ。物件を探しに行く時はビー玉を持って行くという話も聞くことがあるくらい。完全に三半規管がやられてしまいそう。
「かなり床が斜めですね」というと「でもワンルームにしては広いでしょ」これまた違う返答。。水回りもあんまりだったし。。。。

気を取り直して1ベットルームの別の物件へ。
入った感じ光が差し込んでいて、カウンターキッチンもあって何か良さそう! と思ったのも 束の間、一瞬レンガだと思った壁がレンガの壁紙を貼ったものだった。しかもその貼り方も微妙に斜め。やっぱり床が斜めだからか。もちろんこちらもリノベされているわけもなく、壁のみ塗り替えられている感じ。一応案内してくれた手前、色々部屋の中を探る素振りをしたけれど、また後日連絡する旨を伝えて駅に向かった。

古い建物が多く室内に洗濯機がないNYのアパートの殆どがコインランドリーを使う。
最先端な所のはずなのにたまにちょこちょこ矛盾を感じてしまうポイントの一つでもある。で一番近いランドリーはどこですか? とお決まりのように聞いてみると
「すぐそこにありますよ!」との返答。怪しい。「駅から来る途中にあったでしょ?」 と言われてもいつ辿り着くのだろうな疑問で頭がいっぱいだった私にはコインランドリーの事はすっかりノーマークだったから帰りに教えてもらう事に。
また他愛のない話をしているといくつかの共通点で変な親近感すら芽生えてしまっていた。

「はい、ここがランドリーですよ」ほぼ駅の近く。しかも営業は15時までですでに閉まっていた。「あれ?ここもう閉まっちゃっているんですね、大体夜遅くか24時間とかやっているはずですが」というと「そうそうこの辺は早めに洗濯を終える人が多くて、週末はもっと長くやっているはずです」的な返答。当たり前の質問が、意地悪な質問をする性格の悪い人かと自己嫌悪に陥ってしまっていた。が、そんな質問を跳ね返す返答は、ここまで来ると感心してしまう。

駅に到着して又連絡しますねと別れたけれども、最後は家よりも案内してくれた不動産屋さんの記憶しか残っていなかった。
どうやら気持ちが落ち着くまでもう少し時間がかかる家探しの旅に出ることになりそう。。。

※結局あまり心に刺さる物件に出会えずそのまま今の家を更新しました。


物件の画像は撮れなかったけれども代わりにセントラルパークの桜を



ソメイヨシノ。日本のような濃いピンクではないけれども異国で見れるのは嬉しい。



帰り道。



そうそう今日はイースター。ライトアップの色で気付かされるイベント事、ここからの眺めはやっぱりやめられない。


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