目線を上げて、久しぶりに車窓を見た – 道東

To Me, Somewhere in the World #78

目線を上げて、久しぶりに車窓を見た – 道東

Contributed by Yoko

Trip / 2023.05.10

『“今”の心地よさを一番大切に』
未知なモノすべて知らないことを知りたい、自分に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#78


「移動時間=仕事時間」の式ができたのはコロナになってから。バス、電車、飛行機と、どんなに長時間の移動でもそれほど苦にならなくなったのは、その時間にやることができたからである。運転をする時以外は。今まで、そういう時間は本を読むなどしていた。つまり何かはしていた。でも何だかそういう全部をいったん置いてみたくなって、久しぶりに何もせずに外を見ながら移動をしてみた。


北見駅。



遠軽駅。


釧路をあとにして、久しぶりに道東のなかでも北方面へ。朝一番の電車にのって網走まで。網走で1泊してから電車で小一時間の北見まで。北見で1泊してから、今度は電車とバスを乗りついで紋別へ。途中下車して、湧別にも寄った。紋別に着いてからは、バスで滝上までを往復した。公共交通機関を渡り歩く旅。


紋別。



滝上。芝ざくら。


街から町へ。集落から農村部へ。北海道らしさ全開の景色は続くものの、ずっと何もない景色が続くことはなく、一定の距離を経たら人の暮らしが見えるのが面白い。どこも、今自分が学生だったなら、「本当に何もない」とすぐにでも外へ飛び出したくなるような景色だったような気もするが、今、どこにでも行ける多方面の自由がある大人としては、ここで暮らしたらどんな毎日なんだろう……と前向きに想像できそうな気がする。子供が作り出す世界も素晴らしいけれど、大人になると物理的な世界は広がる。


滝上。ハーブガーデン。


今や先の不安が追いかけて来る日は、考えることを延期することもある。延期することで自分を守る。時間を消費するやり方を知ったのは大人になってからだ。そんなやり方は知らなくてもよかったと思うけれど、そういう過ごし方をしたい日もあると知って、ある意味では寛容になれた。寛容になることが良いのかどうかは別として。窓越しに流れていく景色を見て、見ているつもりで消費して。考えて。息をするように視線を流した。


かみゆうべつチューリップ公園。


季節外れの暖かさによって出会えた思いがけない景色。天気の良い日を狙って巡りあえたこと。印象的な景色を巡れた日々を忘れずに、今日は久しぶりに家へ帰ろう。


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  • Yoko

    長野在住、北海道出身。世界一周予定が新型コロナウイルスの影響で中止に。東京から葉山、長野へと拠点を移しつつ、国内外を自由に旅している。レバンガ北海道(#11)とアイスが好き。フリーランスのWebライター・編集者。