クリスマスにはシュペッツレを

Gloomy day All day #10

クリスマスにはシュペッツレを

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2023.07.28

フォトグラファー/ライターの上野文さんが、過去のイギリス留学の様子を綴ったContainer WEB人気連載『Greenfields I'm in love』。全74回の連載を終え、今回からは2021年の冬に過ごしたロンドンでの2週間をお届けします。大好きなロンドンでの、小さな「きっかけ探し」の旅。

#10


犬のジョージの散歩から帰って程なくして、クリスマスイヴのディナーが始まる。私が以前ステイしていた部屋から、みさちゃんという女の子が出てきた。以前はいつもわたしの他に3人くらいの留学生が住んでいたけど、いまはみさちゃんだけらしい。
みさちゃんは、ラスホリ(ワーキングホリデーに応募できる最後のタイミングで来ていること)で少し前にこっちに来た日本人だった。とっても綺麗で、優しくて謙虚な方。海外に住んだことはなく、英語もまだそんなに話せなかったけど、とにかくジェスチャーや翻訳機、あらゆるものを駆使してたくさん話していた。心のこもったみさちゃんの英語は、あったかくてちゃんと相手に伝わる。

ともかく、ディナーが始まった。ラ・フランスにジャムを塗ったアペタイザーから。こっちのラ・フランスは甘すぎず瑞々しいしいから、甘酸っぱいジャムとよく合った。



メインディナーは、シュペッツレというドイツの伝統料理。お昼すぎからウィルとカトリンが2人で協力して作っていたものだ。小麦粉と卵と塩しか使わないパスタで、縮れた柔らかい麺。これにビーフのワイン煮をたっぷりかける。
サイドにはお馴染みのボイルドポテトとブロッコリー。このおうちでは、小さなポテトや芽キャベツがいつもあった。いかにもドイツの家庭って感じだ。




とっても美味しくてお代わりした。


夜はみんなでサンタさんのスナックを用意した。ミンスパイとミルク、トナカイ用に、にんじん。お皿の端に、オーツ麦。何でオーツ? とウィルに聞けば、雨が降っている時はオーツ麦を添えるんだと言った。これを書くのを機に調べてみたけど、そんな記事はどこにも上がっていない。どこの文化なのか、このお家だけなのか、謎はあるけどなんだか可愛い。



この家では、クリスマスイヴに家族から、そしてクリスマス当日は親戚とサンタからプレゼントがもらえる。今年、クリスマスイヴにリリーとポーリーはついに、ウィルたちのお古の携帯をもらった。さっきからうんざりするほど、早く欲しいと言っていたのはそれだった。携帯は、wifiを入れないと使えないsimが入ったものだけど、やっと手にした携帯を2人は大切そうに握り、すぐに二階へ行って友達とチャットしたり、Snapchatを送り合ったり、お電話したり。リリーの部屋でその電話をずっと聞いていたら、かったるそうに、しょうもない愚痴を話している。あまりにもどうでもいい内容なのが返って笑えちゃって、多分わたしはずっとニヤニヤしてた。
夜は長く、大人はいつまでもお酒を飲みながらおしゃべり。わたしは1時くらいに退散したが、みさちゃんはもっと長い間ウィルとおしゃべりしていた。

明日はついにクリスマス! たのしみだ。




つづく!



アーカイブはこちら
過去の記事もあわせてチェック

Tag

Writer