Beginning of my new Life #24
カメラクラブ
Contributed by Asuka Naka
Trip / 2024.05.22
今回からは番外編として高校生の頃に訪れたアメリカでの交換留学の様子をお届け。
アメリカの学校にも部活動がある。しかし日本とは熱量が少し違う。バスケやチア、アメフトなどいわゆるアメリカの定番スポーツ部は試合や大会が本格的にあり、朝練からがっつりあることが多いイメージ。近所に住む一つ上のタイリークはバスケ部に所属していたため、放課後の練習が忙しそうで帰りのスクールバスで見かけることはほぼなかった。
私はこれといってやりたいスポーツがなかったため、芸術系やアメリカでしかできないような部活動を探した。
そのうちの一つがカメラ部。
愛好会のようなもので、週に一回放課後に集まり、それぞれカメラやスマホを持ってテーマに沿って写真を撮るというもの。参加は完全に自由なので入部や退部という概念すらない。私は今まであまり考えたことのなかった写真の世界を知りたいとともに、そこに興味を持つ子に出会ってみたいと考えた。
緊張しながら、初めての写真部に参加する。教室に数名の生徒が座っていて、先生はどうやらMr.マイヤーのよう。彼は校内では中々の有名人で、大柄で声が大きく、面白くて人気な先生だ。次の学期でこのMr.マイヤーの授業を取ることになるとは、当時の私は想像もしていなかった。
教室内でとりあえず座っていると、1人の女の子が話しかけてきた。
「私あなた知ってる!」
このフレーズは登校初日にマリアが話しかけてくれた時と同じだ。しかし私はこの女の子を認識できていなかった。
「二限に数学取ってるでしょ!」
なんと数学の授業が同じクラスであったらしい。私はこの時各クラスで1人は友達を作りたいと思っていたので、やっと数学の授業内で友達になれそうな子を見つけることができてとても嬉しかった。
彼女の名前はエンジェル。名前の通り天使のような優しい性格で、愛嬌があり、スマートだった。この日から私たちは毎日数学の授業で顔を合わせ、お話をして、週に一回のカメラ部も一緒に参加した。彼女のおかげで私の学校生活はより充実したものとなった。
カメラ部でのとある日、秋の落ち葉が綺麗な時期だからとMr.マイヤーと数人の生徒で校内の森林で写真を撮りあうこととなった。アメリカという自分だけ言語もままならない環境で目立つことに抵抗のあった私をどんどん前に出そうとするのがMr.マイヤーであった。「Asuka! 君はモデルね!」と見事にみんなのカメラを向けられながらモデル役に仕立てられた。
元々大勢の人の前に立つことは嫌ではなかったので、恥ずかしながらもどこか嬉しかった。どこかでMr.マイヤーはそれを感じていたのだろうか。彼は私の人生で今まであった中でもトップレベルのコミュ力だ。それはどこの国でも変わらない。何を言語化できるかではなく、どれだけ相手に寄り添えるか、相手を理解できるか、それが私はコミュニケーションだと思う。よく留学帰りの人は、英語はコミュニケーションツールの一部だというが、私もそれは間違いではないと思っている。
しかし言語が通じなければコミュニケーションが取れないわけではない。お互いがコミュニケーションを取ろうという意志を持って初めて成り立つ。実際に日本語であっても、英語であってもこの人とはコミュニケーションを取れないなと感じることもある。逆にお互いが共通の言語を全く喋れない、カタコト同士でも一緒に笑い合えることもある。
言語に自信がなくて内気になっていた私を変えた言葉がある。それはこのアメリカ留学中にホストファザーのアレックスから学んだ“Who cares”というフレーズから得た考え方であった。“誰も気にしないよ“、良くも悪くも他人のことなど言うほど誰も気にしていないのだから、自分の好きにしたらいいじゃないか。やはりアメリカ人の持つ言葉は一味違って、その時の私には響くものが多かった。
そうして少しずつ自信も身体も大きくなっていった私であった。
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Asuka Naka
湘南出身、イギリス在住。アメリカ高校留学を経験し、イギリスの大学に進学。高校生から旅人デビュー。現在はヨーロッパを拠点に旅する真面目大学生。海外生活、旅をトピックにシェア。