ミュージカルオーディション

Beginning of my new Life #27

ミュージカルオーディション

Contributed by Asuka Naka

Trip / 2024.06.26

『とにかく旅をするのが好き!』高校生の時に初めて訪れたインドがトラベラーへのきっかけだった。多くの国を旅する好奇心旺盛な彼女だからこそ感じる面白さと発見。出会いと出来事を振り返りながら綴るAsuka Nakaさんの旅日記。

番外編として高校生の頃に訪れたアメリカでの交換留学の様子をお届け中。



アメリカにいる間に何かに挑戦したかった私。
常に何かできることはないかと機会を探していた。ある日、授業中に順番に担当カウンセラーに呼ばれ、次のセメスターに向けて取得科目などを相談する時があった。数学の授業中に先生に呼ばれ、カウンセラー室へ向かう。アメリカではホームルームの担任の先生などがいないので、何か困ったことがあればこのカウンセラーと日時を予約して話すことができる。

初めて会う私のカウンセラーは優しそうな女性であり、やはりカウンセラーなだけあって包容力があった。「何か困っていることはある?」「大丈夫です」などと一通りのやり取りをした。ふとカウンセラーが、「去年も交換留学生の1人を担当したのよ。ミュージカルに出演したり、とてもすばらしかったわ!」と言う。最後に「何か質問はある?」と聞いてくれたので、少し勇気を出して私は、「私でもミュージカルに出ることは可能なのかな?」と聞いた。そうすると「当たり前じゃない!」とアメリカらしい返答が返ってきた。

この時からミュージカルについてのアナウンスに注目して日々を過ごしていた。そして毎朝の放送中、ついにミュージカルについての詳細が流れた。当時のリスニング力のベストを尽くして耳を澄ます私。どうやら放課後にミュージカルのオーディションの説明会があるみたいだ。説明会に行くと、そこには数学クラスが一緒のエンジェルと韓国人留学生のスヨンがいた! 3人全員が違う繋がりで知り合いなことに驚きつつも、一緒に頑張れる仲間を見つけられて嬉しかった。オーディションの日程は2日に分かれる。1日目はダンスのオーディションで2日目が歌のオーディションだ。

ダンスのオーディションは学校のない休日に行われた。数十人の生徒が一つの部屋に集まる。先生が一通りのダンスを教え、その後グループに分かれて舞台で数人の先生の前で踊り、選抜される。普段からバレエなどを習っている子達はやはり動きかたが上手で覚えも早い。そして、私はというとダンスの覚えが相当悪い。しかしオーディション本番までには何とか覚えようと試みた。



舞台での発表の時間まで、グループごとに分かれて一緒に練習した。ライバル同士というよりは仲間であった。今まであった事もない、学年の違う生徒同士で、「一緒にミュージカルに出演できるといいね」と励まし合いながら協力した。舞台にいよいよ出る時間が来た。いざそこに立つと、見覚えのある顔が。なんと! 一限で取っているオーケストラバンドの先生がそこにはいた。私は一気に緊張した。しかしこの先生は優しい顔でニコッと微笑んでくれていた。これは全力でやるしかないと自分のできることを身体で表現した。結果はまだ分からない。ここでうまく踊った生徒は、ダンサーがメインの役に抜擢される。バレエを習っているというダンスが上手な姉妹はダンスが重視される狼役であった。

数日後、放課後に歌のオーディションがあった。練習する場もなく、英語の歌詞を初めて暗記するという挑戦に緊張は絶頂であった。何曲かある中から自分で曲を選べるのだが、私は一番覚える歌詞の量が少なそうな、ディズニープリンセス・ベルが歌う一曲にした。待機室で待っていると、自分の名前が呼ばれた。舞台の方へ案内される。その光景はまさに映画『ハイスクールミュージカル』の中で見たミュージカルのオーディションのシーンと全く同じであった。舞台の真ん中に1人立つ自分。数人の先生が観客席に座ってどんな歌を聴けるものかと様子を伺っている。曲が始まる。あとは自分にできることをやるだけ。緊張して全く声は出なかった。
これがきっとこの時の私にできる全力だ。後悔はなかった。ホストファミリーの好きな美女と野獣のミュージカルをできる機会があるから、少しでも彼らを喜ばせたいと試みた挑戦であったが、無理だったのなら仕方ない。

数日後、結果発表の日がやってきた。なんと、良く分からない役の横に私の名前が書いてあった。私はいまだになぜ選ばれたのか理解できない。交換留学生が頑張ろうとしているのを応援してくれたのだろうか。オーケストラの先生が優しさでアスカをチームに入れようとしてくれたのだろうか。真相は何であれ、これとない嬉しさが込み上げた。何とそこには、私がオーディションの過程で友達になった子たちの名前も、スヨンもエンジェルも入っていた。しかし、いざ毎日の練習が始まると、彼女たちはほとんど辞めてしまった。私はホストファミリーのためにと思い、何とか周りについていけるように練習に参加し始めることとなった。





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