サーファーの夢

Between the waves #107

サーファーの夢

Contributed by Miki Takatori

Trip / 2024.05.13

ひとつの場所に留まることが苦手で、さまざまな国を転々と旅してきた高取美樹さん。それぞれの場所で、暮らすように旅を続ける彼女が切り取る、何気なく、そして特別な瞬間。

#107


怒涛のようにやってきたeaster long weekend

特に何の予定もなく良いスウェルが来るからサーフィンだけが唯一の予定だったけど、ある人からの1通のメッセージで濃すぎる週末を過ごすことになった。

それは8ヶ月前のバリで出会って恋に落ちた、オーストラリア人のサーファー。(詳しくは「Between the waves #90 ホリデーロマンス」にて)

連絡を取り合いながらもお互いの生活がそれぞれあるからと特に進展することもなく……。だけど心の片隅にはいつも彼を考えている自分がいて、これってヘルシーじゃないって思いながら、乗り越えるのに多分6ヶ月ぐらいかかった。

3年間一緒にいた元彼より、乗り越えるのに時間かかっているじゃん! って周りの友達には笑われた。それには同感。


土曜日、サーフィンから帰ってきてiPhoneをチェックすると、今バリに来ているんだけど、久しぶりにキャッチアップしよー! とメッセージが。本当に宇宙は全てお見通しで、やっと彼のことを考えるのをやめたタイミングでこれ。

ずっと握りしめていたものを手放して1つのドアが閉まった瞬間、新たなドアが開く。
新たなドアかはわからなかったけど、crazyなキャッチアップになるのは簡単に想像できていた。

サンセットを見ながらカクテルを飲んで、美味しい日本食ディナーへ。帰り際に近くのバーに寄ってダーツをしながら追加でマルガリータ。
パーティーに興味がなくて、おしゃれな場所で飲みながらゆっくりしたいのは2人とも変わらない。

そして酔いを覚ますために夜の海に飛び込んで、翌朝のスウェルのために朝5時起きのアラームを設定。







翌日、思った以上に大きいスウェルがバリに到達して、近くの島にサーフミッションに行くか、朝食を食べながら話していた。

彼がオーストラリアに帰るフライトの時間もあるから出来て24時間のストライクミッション。車を借りて、行くか行かないかまだ決まらないままサンセットを迎えた。そしてフェリーの最終時間に間に合うギリギリのタイミングで決行決定。


持っていくもの全てボードバッグに詰め込んで10分で準備して港へ出発。
船が出発する数分前に到着して、船で4〜5時間。ブランケットと枕を持って行ったお陰でベッドより快適に車中泊が出来た。朝5時にバリの隣の島、ロンボク島に到着。

明け方大雨が降ったみたいで、舗装されていない道路は沼状態。
何回も沼にハマってはバックして勢いで突っ切って、レンタルした車は笑えるほど泥だらけになった。



前日に出発して7時間後、目的地のデザートポイントに到着。

スウェルが来ると完璧な波がブレイクすると有名で、バレルを求めて世界中からサーファーが集まる場所(中級〜上級者向けで)。予想通り、6-8ftの波がバンバン割れて、波に乗るサーファーはみんなバレルに入る。

今まで見てきた中で多分1番完璧な波。

大きすぎるし今日は見るだけかな〜なんて思っていると、一緒に来た彼は「じゃ、パドルアウトしよかー!」と満面の笑みで、いかにもなんてことないような様子で準備しはじめた。サーフィンの経験と波のスケールが違いすぎて、こっちは決死の覚悟を決めるほど(笑)。

だけどこのプッシュがなかったら、パドルアウトしていなかったと思う。海の中にはサーファー10人ほどで、少しサイズが落ち着くのを待つサーファーもいたくらい。

多分みんな私が海に行くのを見て「What’s this surfer chick doing?」って思っていたはず。タイミングを逃したら、今まで見た中で一番大きな波が頭の上で割れる。心臓がバクバクしながら、がむしゃらにパドルアウト。

もう沖に出れただけで十分で、みんなが乗る最高な波を真横でボードの上から見学。セット間、私でも乗れそうなサイズの波に1本乗ってこのセッションは終了。


数回建のビルのように大きな波のエネルギーに海の中で触れられたこと、コンフォートゾーンから出て自分のリミットをプッシュしたこと、もう色んな感情が湧き出てきてこれから一生思い出に残るセッションになった。

2日間iPhoneを触る時間は数分だけ、目の前の波を追いかけるだけの日々で、やっぱりこれが好き。他のどんなことを犠牲にしてでもサーフィンだけはやっていたいと思うほど。

多分このスウェルでデザートポイントにいたサーファーはみんなそう思ったはず。


まさにサーファーの夢の地。
焼けるような夕焼けが待っていて、2人ともずっと

「Are we in a dream?」
「I’ve never been this happy in my life」と口を揃えて言った。















こんなアドベンチャーに連れて来てくれた彼には心の底から感謝。深すぎる4日間のキャッチアップ、泣いて笑って、お互いの全てを語ってなんだか前回バイバイした時よりスッキリした。

計画しなくてもまたふら〜っと会えそうで、次のストライクミッションも期待してる!


Miki



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