SNORT RECORDS〈後編〉

Alles Gute #19 interview

SNORT RECORDS〈後編〉

Contributed by meg

Trip / 2024.07.29

悩み事が尽きない日々をリスタートするため選んだ街は、ドイツ・ケルン。自分でもまだ分からない「何か」を求めて、ときめく音の鳴る方へ進もう。「もうワクワクすることしかしたくない!」と心に決めたmegさんが綴るドイツ留学日記。

今回は番外編としてドイツ・ケルンの職場で出会ったAdrianにインタビュー。楽曲制作やトラック提供、DJとしても活躍する彼に、自身が作る“音楽”とライフスタイルについて聞いてみた。


#19


Interview 後編
-レーベルが自由な表現の場に


友達のDenissとPhilipp。秘密基地でDJを回すのが彼らの最高の遊び。この日は仕事終わりにサクッと。ここで寝て起きて2日DJ回し続けるなんてこともあるみたい。


Meg:インディペンデントなレーベルを始めるにも色んなやり方があると思うんだけど、どういうプロセスでリリースを始めたの?

Adrian:*「Discogs」で自分のサイトを作ってリリースを始めたんだ。運営にお金もとられないし、簡単に始められるから良いプラットフォームだと思って。だからデジタルから始めて、その後レコードでのリリースも始めた感じかな。レコードは曲を作った後、マスタリングスタジオでマスタリングして、レコードのプレス工場に発注して、テストで出来たものを確認した後、ジャケットのデザインをして……っていう流れ。
*Discogs=アメリカ・オレゴン州ポートランドを拠点としているZink Media,Incが運営する世界最大の音楽データベースサイト

Meg:レーベルを始めた時はどんな感じだった?

Adrian:始めた時から自分の音楽を買ってくれる人はいて、何より自分で自由に音楽を表現できる場ができたことが嬉しかった! それにレーベルを作ったことでカルチャーを交流する場ができて、友達のタトゥーアーティストにステッカーやジャケットのデザインをお願いしたりとか、仲間とビデオ作ったりさ。


『Edit For Lovers』のジャケット。


バルセロナを拠点に活動するタトゥーアーティストのRoger Bosqueがアートワークを担当。アルバム中の“Midas Touch Edit“とAdrianから伝えられたミダス王の神話の物語から着想を得たそう。(Instagram:@boske.colors


Meg:色んな才能を持ち寄ってミックスすることで、また新しいものが生まれるってすごく良い場所だね。インディペンデントに活動していくことのメリットってどこにあると思う?

Adrian:全部自分でできるっていうのは良い所でもあり、大変な所でもあるかな。誰に何を言われることもなく自由に好きな音楽を作れるっていうのはやっぱりいいよね。誰かに忖度しなくていいし。でもそれと同時に、音楽以外の事務作業も一緒にこなさなきゃいけないのは大変でもあるかな。


-アーティストだけではない生き方


一緒のシフトの時は毎回皆んなに声をかけて今の調子を聞き、ドリンクを作ってくれて、オーツミルクがいいか聞いてくれる優しいAdrian。


Meg:私たちが知り合ったこのカフェもそうだけど、他でも働いているんだよね?

Adrian:感情を伝えることや社会性に困難を持つ子どもたちの学校で先生としても働いているよ。子供たちがいる場所で働くことは楽しいし、穏やかで忍耐強くて一貫性があると言われる自分自身の性格が、今の仕事にあってると思う。他の学校とは違って、子供たちのことを理解してポジティブに変えることが出来るからやりがいを感じてるよ。

Meg:Adrianの穏やかな人柄は子供たちに安心感を与えそうだね。普段はどんな感じで働いているの?

Adrian:木曜日以外の平日は学校で働いていて、木曜日と週末は時間が合えばカフェで働いたり、誘われたら音楽の仕事も受けてやるって感じかな。外交的なタイプだから、外に出るのも好き。休日は友達と出かけたり、自然に触れたりしながら過ごすかな。それでインスピレーションが降りてきたら音楽を作って、っていう生活。

Meg:素敵! 日本では仕事を掛け持ちするってことがまだまだスタンダートではないんだけど、ドイツではそんなこともないの?

Adrian:ドイツでも一つの仕事で稼ぐことはスタンダードだと思う。あとは仕事がない人も最近は多いね。俺は平日は働いて週末は音楽してって感じでずっと働いてきているけど、この生活は俺にとっては楽しいよ。

Meg:テクノといえば今はベルリンが有名だと思うけど、なんでケルンを拠点に活動しているの?

Adrian:んんー。ベルリンは確かに最高な街だし、大好きだけど16歳からケルンに引っ越してきて友達もいるし、住み慣れていて居心地もいいからかな。そんな感じでケルンで活動してる。そもそもテクノはアメリカのデトロイトから来たものだから、ベルリンじゃなくてもいいかなって。


-ダンスフロアは誰からもジャッジされない開かれた場所


Denissのお兄さんのお家兼仲間の秘密基地。ほぼ自分たちで作ったっていうからそのDIY精神には驚かされた。


Meg:ドイツのクラブって若い人の遊び場というか、なんかカジュアルな感じがあってそれは驚いたことの1つかも。クラブをどんな場所として考えてる?

Adrian:テクノパーティーは、誰に対しても開かれていて安心・安全。そして全てから解放されて楽しめる場所であるべきだと思ってる。抱えている悩みを全て忘れる時間が人には必要で、その意味でダンスフロアっていうのは一種のヒーリングのような場所。誰からもジャッジを受けることのない場所なんだ。

Meg:ローカルの人が知るケルンのおすすめ音楽スポットとかある? 遊びに行ってみたくて!

Adrian:遊びに行く時は、プライベートパーティーが多いからなぁ……。強いていうなら「Gewölbe」っていう昔からあるクラブかな。あと今は少なくなっているみたいだけど、外で開催されるオフロケーションのイベントも10年前はもっといっぱいあったからよく行ってたな。これはケルンの文化だね。


-自分の心から湧き出る音楽を
Meg:これからどんな活動をしていきたい?

Adrian:んー。今のカタチに満足しているから、目標とかはないけどゆっくり長くやっていければいいかな。来年は楽曲制作するつもりだけど、レコードはプレスとか何かとお金かかるし、デジタルでお金を少し稼ぎたいかな。

Meg:今年はリリースの予定とかあるの?

Adrian:あるよ! 自分のレーベルからデジタルEPのリリースと、友達のレーベルの“Body Parts Records“から出るアルバムにリミックスとオリジナルの楽曲を提供してるよ!(※リリース情報は最後に!)

Meg:おお! 盛りだくさんだね。楽しみ! 最後に、これから音楽レーベルを立ち上げたいと思っている人にいいヒントがあったら教えて!

Adrian:そうだね。大衆にむけたものじゃなくて「自分の心から湧き上がる音楽を、自分で作る」っていうことを大事にしてほしいな。売るための音楽じゃなくてね。

Meg:今日は素敵な話をありがとう!

Adrian:気になることがあったらまた何でも!




Adrianは音楽を通じて世界と繋がっていた。何かを掴むために日本からドイツに出てきた私には生活の延長線上で音楽を作り、外の世界と繋がる彼の姿があまりにも新鮮だった。何かをやるのに場所は関係ない。どこにいても世界と繋がり、遊び、そして大事なものは自分自身で分かっておけばそれでいい。アーティストとしてではなく、一人の人間として人生を楽しむ姿勢が彼の魅力であり、彼の作り出す音楽の豊かさにも繋がっていた。


前編はこちらから




📍Villa Kalka
Kalk Müllheimer Str.58 51103 Köln, Deutschland
ケルン市内にある私たちが働くカフェ。日本食やカフェブランチのほか、シェフ手作りの季節ごとのケーキと、バリスタこだわりの美味しいコーヒーが楽しめる。


✴︎Release Info✴︎
“Body Parts Records”のBP100からFaris Hashashが Tommy Vicari, Jnr, Lines Of Love, Martin Mercer, Marc Hetheyによるリミックス曲が収録されたデジタルEP『Observe,Love,Create EP』を近日リリース予定! Lines Of Loveは、オリジナルソング「Underwater」とリミックス曲「Ridying With A Ghost Mix」で参加。
https://www.discogs.com/label/451598

『Edits For Lovers』Lines Of Love
“Snort Records”より2023年リリースの第1弾に引き続き、第2弾の『Edits For Lovers』デジタルEPが他のアーティストとのタッグにより完成! 第1弾に引き続きアートワークはRoger Bosqueが担当。近日リリース予定。
https://snortrecords.bandcamp.com/

『Terminus』Lines Of Love
“Helix Discs”からのデジタルリリースEP。ドイツのケルンを拠点とするこのハードウェアの魔術師は、幻想的なサウンドを音楽のディスコグラフィーに組み込むという点では並外れた人物であり、このEPも例外ではありません。地下室で午前4時に作られたザラザラとしたディープなサウンドと並んで、無駄を省きながらもグルーヴに満ちたカットのミックスを期待してください。この5つのトラックは、大きなサウンドシステムに合わせて調整され、あらゆる人に対応できるよう慎重に厳選されています。(bandcampより)
2024年1月25日リリース。
https://helixdiscs.bandcamp.com/music

『Street Magic』 Lines Of Love
“Lines Of Love”からは初のレコード盤
https://www.discogs.com/label/3255861-Snort-Records-2

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