Let’s do this!

Couch Surfing Club -Seoul Art Walk編- #2

Let’s do this!

Contributed by Yui Horiuchi

Trip / 2024.08.12

海外へ何度行ったって、旅慣れなんてない。旅で出会う全ての人にフランクに接し、トラブルだって味方につける。着飾らず等身大で、自分のペースで旅を楽しむアーティストYui Horiuchiさんの連載『Couch Surfing Club』。今回からは“Seoul Art Walk編”として、怒涛のスケジュールで巡った韓国・ソウルでのアートトリップの様子をお届け!

#2


翌朝、9時の約束に合わせてホテルを出発。


一日出歩いてることを考えると必然的に荷物が多くなる


ホテル前で待ち合わせをしているヒーチャンと時々通信が途絶えたので、ホテルのWi-Fi環境が通じる範囲でうろうろしていたら、「着いたよ!」と連絡が。携帯のデータ通信に不安があったので落ち合えたことに一先ずホッ。



朝の印刷街は築地かと思うほど忙しく、何度も小さいフォークリフトが道幅ギリギリに往来をしていて、何度も軽く轢かれそうになる。

ヒーチャンはソウル大学を卒業したてのグラフィックデザイナーの卵だ。
知り合ったのは東京で、私が所属しているアーティストエージェントの展覧会のオープニングで話したことがきっかけで仲良くなった。初渡韓の際には連絡して、現地での電車やバスの乗り方、食事のお作法などローカルっ子に案内してもらおうと思っていた。
こちらとしてはラッキーなことに、ちょうど本就職までのギャップ期間中だったので1日存分に付き合ってもらうことにした。



乗り換えから行く先々への最短移動距離、営業時間まで調べてきてくれていた頼もしい背中。本当に24歳か? と疑ってしまう。兵役の任務を終えたばかりだからなのか、性格か。本当にしっかりしているので、厚意に甘えさせてもらうことにした。

朝イチ、乙支路3街の駅前の銀行で現金両替を済ませ、最初の目的地MMCA(国立近代美術館)へ向かうことに。



のちに知ったが明洞の中国大使館近くに立ち並ぶ換金所を利用した場合(赤い斜線のエリア)、一万円換金する際の手数料に1000円程度かかるが、換金所の中ではそこが市内最安のレートのようだ。

VISA/Master/JCB/PLUS/Cirrusのマークのあるクレジットカードを持っている方であれば、海外キャッシングの利用をおすすめする。観光地まで出向かずとも近くにあるグローバルATMを利用して1万円分引き出したら手数料は360円に収まるそうだ。
韓国はカード社会なのでデビットカードやクレジットカードがあれば十分だが、日本同様に電車賃や屋台に現金がいる。わたしは5日間で友人とご飯に行った際の割り勘や次回訪韓の際に使えたらいいやと多めに3万円換金しておいたが、2泊3日程度なら5千円〜1万円程度の予算で現金は足りると思う。


現地のICカード「Tmoney」を買うまでは1回分の乗車券を購入(Tmoneyはコンビニでしか買えないらしい)。乗り換え案内のサインとかは日本のデザインに似ているようで親しみが湧く


余談、最近「WOWPASS」という新しいカードも出たみたいだが、ショッピング枠のチャージはクレジットカードでできるが、交通系のチャージは現金対応のみというカードで、結局Tmoneyと持ち込んだデビットカードがあれば十分では? と判断したので、わたしは今回WOWPASSには手を出さず。
これがクレジットカードの一度のチャージでどちらにも使うことが出来たらとても便利なのだけれど……。

電車の乗り換えを見るだけだったら、直感的に使いやすいアプリKONESTを入れておくといいみたい。
わたしはまだ地下鉄路線図の解像度がかなり低めだったこともあり、とりあえずヒーチャンに頼る。



地上から駅のホームに下る途中、水耕栽培されているレタスを発見。
どうやらそこのレタスをサラダにしたものやスムージーが販売されているようだ。この後無人サービスのお店をちょこちょこと見かけたが、今思えばここもまさに。

わたしたちが使った駅の改札は、ニューヨークの地下鉄で見る3本のバーが進行方向に向かって回転するタイプだった。荷物が多いと引っかかりやすい。このタイプ以外にいくつか他のデザインのものを他の駅でも見かけたが、出入りのたびにチケットをかざすのは一緒だ。

入る改札によっては日本のように一つのプラットフォームに上下線が通っているところもあったが、ほぼ行き先を確認してから改札に入るようなところが多かった。
気がつかないで乗車した時には反対方面に進んでいることも。


乙支路3街駅のライン3のホームに降り立ち、ここから安国駅まで二駅分の電車移動



ホームは見たところかなり厳重な様子。防衛、防寒色んな役割を果たしているようだ。お国柄テロ対策という面もあるようだ



構内の広告掲示板の柱の部分でスマホの充電ができるようになっていたり、構内、車両共に無料のWi-Fiが飛んでいたので高いレベルのインターネットインフラが充実してるようにも伺えた





下車後はこの券売機に立ち寄り乗車券を入れるとデポジット代として50円分が返金されるシステムだった


地上に出てまず関心したのが、交差点の巨大パラソル!
美容大国として世界的に知られているだけあって、国民の美肌のために国費が動いてると思ったらすごいことだと関心せずにはいられなかった。巨大パラソルは都市部の公共サービスの一環だそうだ。東京でも取り入れてほしいと思う人は多いんじゃないだろうか。



駅から美術館まで歩いている間、ソウル都市建築ビエンナーレ(2年ごと奇数年に開催される建築展)の一環のプロジェクトが開催中だったので、会場になっている公園を通過しがてら鑑賞することに。


✔️ソウル都市建築ビエンナーレ

ソウルは周囲を山に囲まれた典型的な盆地の構造、天気がいい時には周辺の山の尾根まではっきりと見えると聞いていたけど、ここまで壮観なランドスケープを市内から見れるとは思っていなかった。
ダイナミックだな、ソウル!

ただ大気汚染で全く山並みが見えなくなることもあるらしい、PM2.5のことをミセモンジと呼ぶらしく冬場の暖かい日は特に空気が悪くなるのでアレルギー持ちの人はかなり辛そうだ。


各プロジェクトの詳細までは分からなかったが、なんだか市民の憩いの場所になっているようで微笑ましい。



友人たちとこれはどんなコンセプトなんだろう、そんな会話をしながら整備された花壇の様子も楽しんだ。




道中、中洲に取り残された東十字閣の一部だけ拝む。ちょこっと観光気分。
1395年に建設され、日本の統治時代の1920年代に周りの塀などは撤去、この建物だけが道路の中洲に残る形で現存しているらしい。
『当時の日本政府が韓国の歴史的建造物や文化遺産を軽視した影響は大きかったんじゃないか』、そうヒーチャンに尋ねたが『もう過去のことだし、僕たちは今平和に暮らせていたらそれでいいと思ってる』そんな返事が返ってきた。
個人間でこういう会話ができる今があることが嬉しいと思った。



パレスに近づいていくに連れて、古都巡りバスツアーのような観光バスがたくさん停車していた。周囲にはパッケージツアーの観光客であろう東南アジア系の人々が話す言葉が耳に入ってきた。皆思い思いに韓国の伝統衣装チマチョゴリ(貸衣装)に身を包み、訪韓を楽しんでいるようだ。


📍MMCA(国立現代美術館ソウル館)



我々も最初の目的地MMCA(National Museum of Modern and Contemporary Art Seoul/国立現代美術館ソウル館)に到着。



とりあえず朝ごはんがまだだったので美術館のカフェ兼ライブラリーでコーヒーと軽食をいただく。そろそろ自分でも気がつきはじめた、コーヒーのサイズのデフォルトがこれ。サイズ感が随分アメリカンじゃない?(笑)


いざ肝心の展覧会へ


現在開催中の企画展は3つ、全展共通のチケットで約400円だった。とても良心的な価格設定。写真左手奥から下りのエスカレーターで降りた地下の吹き抜けのスペースにも無料で見られる体験型の作品もあったので時間のない方はサクッとそちらだけ見るのも手かもしれない。


✔️BACK TO THE FUTURE展



まず”BACK TO THE FUTURE”展へ、こちらの展示だけは無料でこの展示開催期間が約一年にも及ぶものだった。
最近5年間の間に収集された韓国現代美術の現代性を示すアーティストの作品を多く含む美術館のコレクション展らしい。


気になった作品を抜粋



吊りのプロジェクターの設置がカッコよい



✔️Hyundai Motor Series 2023



お次はHyundai Motor Series 2023、こちらも会期が半年間!長い!
この展覧会が一番MMCAの中では個人的に面白いものだった。
ヒョンデがサポーターとなっている作家育成プログラムとでも言えばいいだろうか。
今年選ばれた作家さんはJung Yeondoo(ヂョン・ヨンドゥ)。


One Hundred Years of Travels / 百年の旅(2023)


「百年の旅」はビデオインスタレーションで、韓国のパンソリ、日本の義太夫文楽、メキシコのマリアッチのを映し出していて、これらのパフォーマンスは、1905年に出発しメキシコに到達した韓国移民の旅路をたどり、ジョン・G・メイヤーズ、メキシコのハシエンダ所有者、および大陸植民会社という日本の移民企業との出会いによる衝突を背景とした物語を示しているそうだ。パンソリ、義太夫文楽、マリアッチの音楽の旋律がリズミカルに呼応し合い、見ているこちらは没入していくき、死と喪失を巡る移住の曲がりくねった旅をも超越してしまうようだった。


Wall of Blades / 刃の壁 (2023)


エルサレムの嘆きの壁からインスパイアされたという壁の形状に配置されたさまざまな農業用具。
実はこれら全て飴で作られている。
壁の構造は破壊の歴史を物語っており、世界中の同様の苦難と旅を象徴しているという。
先に見た「百年の旅」にも通ずるコンセプトだ。



これらの農業ツールがただ植物の栽培に使用される道具である以上に、地主による抑圧に対する労働者の抵抗のシンボルとしても使われている中、砂糖やアガベ生産の権力関係とその甘さが砂糖彫刻の遊び心と結び付き歴史の新しい見方を提示しているようだ。
*作品解説は一部ハンドアウトから引用


美術館全体で言うとメディアセンターもあったり、中庭やロビーにベンチなど利用人数に対してかなり広々とした作りだと思った



ソウルは東京23区に納まってしまうほどの広さだと聞いていたが、なんだこの充実の美術館は




上野は公園の規模で言えば大きいが、美術館1個体でこんなにボリュームがあるとこあったかな、と思ってしまう。もはや美術館というより教育や研究機関のようだ


しかも観覧料のリーズナブルさにやはり感激。
都内の国立美術館の入場料は基本1000円を超えるのだけど、行けても凄まじい人でコンベアーで流れるようにしか作品を鑑賞するしかないこともしばしば。その点においてはギャラリーでの鑑賞体験の方がゆとりを持って楽しむことができるだろうと思う。


ミュージアムショップの様子



MMCAでのハンドアウト(冊子)


建造物としても敷地面積にしても大きいのに対して、建物時代は煉瓦造りの年季が入った作りだったので気になったこともあり、これもヒーチャンに『元々何か別の用途で建てた建物をリノベでもしている?』と聞いたらビンゴ。
なんと、元は大韓民国の国軍機務司令部(Defense Security Command)の建物として使われていたそうだ。
かつて軍事政権時代に韓国軍の政治的な弾圧や監視を行っていた情報機関らしい。

そんなトリビア、行ってみたらぜひ体感してみてほしい。



聞いてみるとこのエリア、三清洞(サンチョムドン)は伝統的な韓屋(韓国の伝統家屋)が多く残るエリアで、これらの韓屋を保護する目的もあり、現代のニーズに合わせてその多くがリノベーションされているのだという。


美術館のあとに立ち寄った、これらのHakgojaeギャラリーやその周辺もその一部だ。



リストにはあげていなかったが、建造物として新旧の融合が美しく気になったので中も見させてもらった。柱や梁の隙間を有効活用して展示空間を演出していた



📍Kukje Gallery


本命ギャラリーその1:Kukje Gallery/クッチェ・ギャラリー



✔️アニッシュ・カプーア 個展


MMCAから1ブロック北上して、アニッシュ・カプーアの個展を鑑賞







併設されたおしゃれなカフェがあって、わあ!レベチ!となったのは言うまでもない。声も、でた(笑)。
価格帯もレベチだったのはお察しください。
お腹を空かせた我々はオーダー以前に店頭にあったメニューを見て選択肢がないことを知ってしまったので大して悩まずスルーした。


銀杏並木を眺めながら飲むのはなんだろう、私だったらオーツミルクのカフェラテくらいしか思いつかない(笑)



ちなみに路面に面している建物がK1、奥にもKukjeのアネックスがK2、K3とあるのでお見逃しなく



Map上では名前が変換されて国際ギャラリーやInternational Galleryと表示されるのでよく位置情報を確認しておくと吉



外にも李禹煥が厳かに鎮座


一度仕事でお茶出しをしたことがあったが、あまりの緊張でお茶請けをカタカタ言わせてしまったことを覚えている。


Kukjeを出てすぐ、お隣にあるBarakat Contemporaryにも立ち寄る



📍Barakat Contemporary



こちら表にデーンとある建物はアポイント制の古美術専門の建物でした



別の入口(一瞬気づかなかった)からコンテンポラリーセクションの展示が見れたのだが、こちらの展示Jewyo Rhii(b.1971)のBarakat Contemporaryでの初個展だという



✔️Jewyo Rhii



国内での展示は10年ぶりにもなるらしい。
展示構成がおもしろく楽しくやりきってるなと感心していたら、オランダ、ドイツ、イギリス、アメリカ、日本で展示された作品を含む2009年から再構成され続けてきたインスタレーションになるそうだ。


思った通り熱量と作意的なインタラクティブ性が伝わってくる。




ハンドアウトの一文に『「Love Your Depot」の形態と使命は進化し続け、現在はコマーシャルギャラリーに到達しています。彼女は以前、こうした空間は作品の最終目的地であると述べ、そうでなかった場合、メンテナンス不足のために作品は捨てられ、保存されない作品が歴史に残ることはまずありません。最初から、アーティストの目標は成長し、作品に常にアクセスし、長い時間が経った後に再び見ることができる〜耐久性のある素材を使って、作品の変化を目の当たりにし、自身の作品を再考する能力は稀な特権です。長い戦いであつと同時に少しの持続と耐久がしっかりとした基盤を提供し、最終的にはより多様な芸術形式やアイデンティティと共存し受け入れる能力を持つかもしれません。』と書かれていた。

『捨てられた作品が歴史に残ることはない』という一文が耳に痛かった。
私自身も保存場所がなかったが故に、幅10m弱の手書きの大作を処分せざるを得なかったことがあったので、課題を感じると同時に寂しさと懐かしさを抱いてしまった。




時刻は13時を過ぎ、一同そろそろお昼にしたい頃合い。友人が餃子的なものを食べたいというリクエストに応えてヒーチャンが近くにいいお店があると行って連れて行ってくれた。



実はここMMCAの真裏。ミシュラン取ってるじゃないか。お昼時少し過ぎていたところだったので少し店先で待ったもののすぐに入店。


お店に入ったらめっちゃマンドゥ包んでた


作りたてが食べられるのは期待値高い。お値段もフレンドリーじゃないか、ヒーチャングッジョブ。


2階のに案内されたらお座敷もあり、居心地良さげ。




わたし達はテラス席に案内され、着席と同時におかずがまず並ぶ、初の外食、もうすでに楽しい。手前のえびはなんだ?と聞くと、オキアミの塩辛だと教えてくれた。これをポッサムと一緒にいただくと美味しいのだそう。


待ってました! マンドゥ! 豆腐入り!


そのままでいただいても、味変してもむちゃくちゃ美味しかったあああ。
(お口に蘇る肉汁。。)


カルクグス、ポッサム。


ポッサムの奥にあるのが水キムチ、初日にガツンと味の濃いものを食べるほど、まだ本調子じゃなかったりしたので、胃腸に滋味染み渡る優しいご飯が初外食で胃も心も大変ほっこりしました。実は1月にも今でもたまに食べたくなる優しい味だった。



食後、ご飯屋さんの隣にこれまた素晴らしい導線でBlue Bottleを発見。
はい、寄ります(笑)。価格帯は日本やアメリカと大差ないように思うけど、どうやらオーツミルクに変更するオプションがまだ有料だったのでその分が加算されていたようだ。友人がBlue Bottle Japanの立ち上げ当初から働いていたこともあり、各国オリジナルブレンドの味が少しずつ違うと聞いていたので、ここは飲み比べてみたい。



ちゃんとオーダーの名前を聞き取ってくれていた、よく間違えられていてよく分からんスペルでレシートが渡されることがあるので嬉しい。1階でオーダーして2階で受け取るスタイルでした、ユニーク。


旧市街を間近で上から眺められた貴重なロケーション。



ゆとりあるテラスでゆっくりしたかったが、そんな時間はないぞ!! はい、次!!!


ということで、グラブしたコーヒーを片手に、あら、びっくり、なんか少し酸味のあるさっぱりしたカフェラテだわ〜なんて思っていたら、着きました、Art Sonje Center。
想像よりあまりに早く着いてしまったので、おっといけない飲み物持って入るのは気が引ける。



と思っていたら、お向かいにTAMBURINSのフラッグシップストアが。
コーヒーを飲み終えるまで、時間潰ししようなんて思ったが、こちらにも見るものがたくさん。


これ全てアロマキャンドル。遊び心しかない!



店内の什器やアートも目が錯覚を起こして全部キャンドルに見えてきてしまう始末



でも見応えはすごくありました、コーヒーも飲み終えて大満足の小休止




テラスにおっきなジェニがいる〜写真撮って〜なんて言ってたら、BLACK PINKの存在すら知らなかったというヒーチャンにわたしたちがびっくりしてしまったが、かく言う私も漫画やアニメに疎いので人のことは言えないだろう。


📍 Art Sonje Center



Art Sonjeに戻り、チケットを買うとオマケでステッカーをくれました。
こういう小さいアイテムが自分へのお土産になったりするので嬉しいサプライズ。こちらでは「OFF-SITE」というグループ展が開催中。




✔️「OFF-SITE」グループ展



28年前の1995年、Art Sonje Centerは17人の作家が新しい美術館の建設前の敷地の意味を探る「Ssak」という展覧会を開催したそうだ。
その後、Art Sonje Centerは「Ssak」から始まり、展示室以外の場所にも彫刻作品を展示するようになり、「OFF-SITE」展では、ホワイトキューブ以外の環境、例えば機械室や庭、屋上などを使い新しい感覚を探求し続けている。
「Ssak」展では与えられたスペースの論理に応じ、「OFF-SITE」展では場所を取り巻く現象や認識を観察し、博物館の内外を彫刻的に結びつけようと試みているようだ。


中庭に展示があると聞いて先に立ち寄った



こちらに当時の韓屋が残されており、恒久設置であろう作品がいくつかある



館内へ戻ると遊び心がある設えだ


ここも元々韓屋があった敷地に西洋の建物を1995年に構え、Art Sonjeとして設立されたそうだ。


階段の踊り場では友人の作品を発見した


私の写真よりよっぽど分かりやすい写真がインスタに上がっているので覗いてみてほしい。
Jong Oh: https://www.instagram.com/p/CwtJQn8LNx6/?utm_source=ig_web_copy_link

初めて会ったのは2018年の表参道SPIRALでの展示だったと思う、その後もニューヨークで会ったりしていたが、コロナ禍を経てしばらく音沙汰もなかったけど、こうやって作品にバンプできると思いがけず本人に会えたような気分になるので嬉しい。


一階とボイラールームとロッカーはHyun Nahmという作家の作品の一環として使われていた



✔️My Name is Red展




展示室では別企画でSuh YongsunのMy Name is Redという展覧会が開催中だった。
Suhの展示は2つのフェーズ、3部構成になっており、1970年代からの「人々、都市、歴史」をテーマを軸に70点以上が展示されていたようだ。



ギャラリーツアーが定期的に催されており、学芸員であろうスタッフさんについて若者達が真剣に鑑賞している様子が好印象だった。





屋上には引き続き「OFF-SITE」展の延長でChoi Goenの作品が。作品の形状に合わせて床板を調整しているようで展覧会開催側と出展者側の掛け合いがうかがえる。



ハンドアウトのデザインまで遊び心があり、地下から屋上、裏庭まで大充実の展示内容だった




Art Sonjeを後にし、一同サンチョムドンのギャラリー巡りへ。
とにかくたくさんのカフェを通過していく。




街中の様子に目移りしていたら温泉のサインを見つけたり、気になって調べてみたが、温泉マーク(♨)の発祥地は日本らしい。その歴史は1661年平安時代までさかのぼり、実は群馬県安中市の磯部温泉で考案されたとされているようだ、東京から意外と近いじゃないか。


📍 WWNN



話は逸れたが、WWNNという友人おすすめのギャラリーに最初に立ち寄る、タイミングが悪かったのかギャラリーの人は不在のようだった。


✔️Froid展




こじんまりとしているが2フロアからなる大きな窓から自然光を取り入れた素敵なスペース。大小のペインティング作品で構成されたSangのFroid展を開催中だった。

ギャラリーあるあるだが、多少離席する程度だったらエントランスに鍵がかかってないことが多い。
個人経営や人員の少ないスペースだと尚更だ。15分程度の場合はポストイットなどに「すぐ戻ります、急用の方はこちらまで」と携帯の連絡先が書かれていたりする。



人気がないことがほとんどのギャラリーでは入るのが躊躇されることもあるかもしれないが、ウィンドウ越しに気になった展示があったら(照明が点いていたらなど、判断基準はあるが)是非勇気を出して入店してみてはどうだろう。
フロアや壁を隔てて、ささやかな日常に彩りや新しい気づきを授けてくれるような作品に出会えることに一歩足を踏み入れてみてほしい。



WWNNのディレクターを務めるジュヒョン氏のとパートナーでアートカフェNUDAKEのアートディレクターを務めるハ・イェジン氏のウェディングの記事をVOGUE WORLDに見つけたのだが、お二人の人柄がうかがえる暖かいレポートだったので、時間がある人は是非覗いてみてほしい。
https://www.vogue.co.jp/gallery/yezin-ha-wedding


📍 PERES PROJECTS



WWNNを出てすぐPERES PROJECTSというベルリン住まいだったことのある友人がまさにベルリン発祥のギャラリーに気がついた。ソウルとミランにもブランチを構えグローバル展開する大規模ギャラリーのようだ。さらに圧倒的な財力と巨大な展示スペースを備えたギャラリーのことを通称メガギャラリーと呼ぶが、3大メガギャラリーの一つPACEが梨泰院にあるので明日行く予定だ。


✔️ Paolo Salvador



2フロアからなるギャラリーの一階ではリマ生まれでベルリンを拠点とするPaolo Salvadorの個展を開催中。
彼の絵画には、故郷ペルーの影響が色濃く表しており植民地以前の文化と現代思想、自然科学と西洋絵画の伝統を結びつけペルーとヨーロッパの文化的背景を持つ彼自身のアイデンティティを映し出そうとしているようだ。


1階の展示室を抜け2階へとアプローチ


✔️ Kiyan Williams 個展



上階ではニュージャージー出身の作家、Kiyan Williamsの初個展を開催中だ。
照明を抑えた2階の展示室は3部構成になっており、階段を上がって正面にある中心の展示室には空中分散した砂岩と床に敷き詰められた砂。宙を舞う破片は作家の手により完全に鋳造されているそうだ。



左端の展示室には敷き詰められた土。
制作全体で一環してこの土を使い、儚い光と密な土で火山の噴火や星の爆発といった、暴力的な破壊と創造の地質学的および宇宙的過程を連想させようとしているようだ。またブラックヒストリーの象徴的な意味を作品を通して再考し、権力とアイデンティティに関する支配的なナラティブに疑問を投げかけるというのが彼の作品のコンセプト。

一箇所のギャラリーでフロアを隔てて2名の個展を開催できるなんて大きな展示スペースを確保できる故。こちらもリストには入れてなかったギャラリーだったが、とてもいい展示を見ることができた。

一同、景福宮(キョンボックン、パレスのこと)の西側に向かうべく三清洞を後にする。
TAMBURINSの辺りまで戻ったところでコンビニに立ち寄り、ようやくTmoneyをゲットする。ほんとはキャラものが欲しかったんだが、仕方ない。



Art Sonjeの角を曲がり、MMCAの裏通りを歩いて南下していくことに。
ここで行きには気配すら感じなかった史跡が突然現れた。



美術館に相応しいというか、縁のある史跡のようで、朝鮮時代、王朝の公式文書の保管と管理、王室の肖像画などの保管を行なっていた中枢府という建物だった。
MMCAの建設に伴い、2013年に元の位置のここに戻されたようだ。ソウルの有形文化遺産にも登録されているので、興味ある人はMMCAと合わせて見に行ってみてほしい。




肝心の景福宮はというと芝生の植え替えか、イベントの施工か(New Jeansもコリア·オン·ステージの時ここでパフォーマンスしている!)完全に囲われており、しかたないのでフェンスの隙間から写真を撮った。宮殿を囲む塀の周りも普段は芝が植えられているらしいが私たちが通った時には丸ハゲ状態。


門の前には狛犬様が。韓国ではヘテというらしい。宮殿を守っているんだろう




景福宮の南西に位置する横断歩道を渡っ他時に見た光景。横断歩道のデザインが面白くて写真を撮ったのだが、並木道がロイヤル感をさらに醸し出している。


📍 BOAN1942



BOAN1942というヒーチャンおすすめのコンプレックスで小休憩。
1942年から2005年まで旅館として運営されており2007年からはアートスペースとしてリノベされたようだ。



景福宮をぐるっと迂回してきたので、まずは一階のカフェで少し休憩。 
頼んだラドラーが美味しかった、レモンとジンジャーの香りがするビール。



ヒーチャンのスマホのバッテリーが切れそうだと言うので、カフェのカウンターで充電をお願いする。
トイレに席を離れた際に見た光景がこれ。韓国では普通だと言う、どこの飲食店でも携帯の充電を快く受け入れてくれるらしいので、ポータブルバッテリーもアダプターがあれば可能◎
(この後チェーンのCoffee Bean & Tea Leafというとこではコンセントの変換アダプターがないのでできないと一度だけ断られたが、たまたま自分が持ち歩いていたのでスマホとセットで渡すと受け取ってくれました)



どうやらカフェのある方は新設のようで、隣の建物が古い旅館をそのまま残したスペースとなっているらしい。カフェ、アートスペース、宿泊施設、本屋などが入っていて2棟を連結する渡り廊下があった。


廊下から見たカフェの延長(中庭)も素敵



アートスペースで今はグループショーを開催中


トイレに立ち寄ったついでにチラ見した程度なので、後でゆっくり見に来よう。


カフェに戻り、マイボトラーな目線で気がついたこのセットアップ


お湯ももらえるじゃないか!ちょっと感激した。冬場は確かに水よりサーモスにお湯をもらいたいところ。


カフェの2階へ上がり、本屋へ


この2階のスペースでカフェでオーダーした飲み物をいただくこともできるらしい。
パソコンを持ち込んで窓の外を行き交う人を眺めながら仕事ができたら超理想なんて想像してみたり。



そしてこの本屋の看板犬ヨンドゥ君も挨拶に来てくれました。
夢詰め込まれすぎてる!



店内には本のほかにもポスターやトートバッグなどのグッズも販売されていて、お土産を買うのにも良さそう。


ヨンドゥ君に連れられアートスペースへ



✔️The Choice We Make展


こちらの建物は想像よりかなり古かった(笑)


階段も床も軋む軋む!! 壁もボロボロだし、夜来るのは少し怖いかも。


当時客室だったと思われる間仕切りを取っ払って、柱剥き出しの展示空間




松の木から切り出された炊飯器はYeonsu Baekのもの。
作品はもちろんだが、部屋の狭さも気になった。
当時の宿、狭くないか?湯治場か学生寮のような狭さ。


キャプションがなかったので、多分作品じゃないけど作品に見えちゃった意味深なスプーン




建物の一階には当時の旅館の面影が残る。
ここにも温泉マークが、韓国では、「温泉マーク」=「温泉」に限らないそうだ。
浴場はもちろんだが、旅館、モーテル、またラブホにすら温泉マークを掲げているそうだ。
1950年代頃から日本でも男女同伴の客を当て込んだ旅館、いわゆる「連れ込み旅館」が享楽の場のイメージアップを狙い積極的に宣伝に利用し、温泉マークは性的な意味を帯びるようになってしまったとか。
国内では、イメージの悪くなった温泉マークを広告から外す動きが出てきて、1955年(昭和30年)には、連れ込み旅館による温泉マークの使用を禁止したそうだが、韓国では現在も旅館を表す記号として使用されているそうだ。



表にあった展覧会の案内も当時の面影を残しているんだろうか。ボロボロながら哀愁が漂っていてなんだか愛おしい。


新館の地下の展示スペースも見に行く



階段の踊り場にも作品が、2011年に設置されたようだ



地下にはChang Hannaの作品、大きな岩だと思った手前の作品


搬入大変そう、なんて思ってキャプションを見たら素材がプラスチックだった、納得。


文字をグラフィックに融合させたデザインワークがダイナミックで力強いハンドアウト


スペースカラーと最高に良くマッチしている。


Seoul Art walk#2の話は一旦ここまで!
#2~#3でめぐった場所はMAPをご参照ください。

次回も怒涛の情報量です、お楽しみに⭐︎





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