my milli mile #5
“STAR COUNT ON YOU”
-ほら、星は照らしてくれる。-
Contributed by Yuka Ishiyama
Trip / 2024.10.10
大学生のYuka Ishiyamaさんがフィンランド留学中のあらゆる瞬間を独自の視点で切り取り、出会いのストーリーとして全8回でお届け。
#5
夏のヨーロッパ旅行、第二ラウンドはリトアニアでのレイオーバー(12時間滞在)から始まる。前までは戸惑ってばかりだった空港のあれやこれやに随分と慣れた私は、気づいたらあっという間に目的地に着いていた。
リトアニア、暑い、とても暑い。だが、好きな音楽を再生して気分は上々だ。
前回の旅の反省を生かし、なんとか一つにまとめたパンパンのバックパックを抱え、フラフラと人気のない道を歩いていると、頭から足先まで全身白を纏ったマダムが前からゆっくりと歩いてきた。お互いニコっと挨拶をしたが、2人して避けようとしたもんで何度か通せんぼうしてしまった。それでまた、2人でニコニコ笑いながら通り過ぎる。
“あ、このマダムも私と同じようにこの瞬間を、この夏を楽しんでいる!”
そんな小さな幸せを、言葉を交わさずとも共有できた一瞬が嬉しくて、気分がよくなり両手を広げ、また歩き続ける。
——
8時間、私はなんとか時間を潰せた。
日本とは違う日差しの強さに耐えられず、カフェを3件ハシゴし、やれることは全てやった。
余談にはなるが、私が旅の途中にカフェに行くと、ほぼ毎回することがある。それは、目の前のショーケースにずらーっと並べられた数あるスイーツの中から、1番その国っぽそうなものを頼むこと。
カフェはなんだかんだ、私にとって旅行中の一つの大きな楽しみで、スイーツや店の雰囲気に国の表情が現れるのをひそひそと楽しんだりする。選ぶ時は割と毎回真剣なので、ショーケースの向こう側から見た自分の眼差しには、ちょっとどころか、だいぶビビってしまうだろう。リトアニアでは、スティック上のパイにクリームが挟まったものを選んだんだっけな。今だになんの根拠もない、私の中のその国っぽいスイーツだ。
——
その日の夜は、早朝の出発に備えて空港で寝ることにした。居心地悪めの椅子でひとり横になっていると、親切なおじさんがやってきて2階に休憩スペースがあることを教えてくれた。ひと気のない静かな空港で、寝れずに退屈な夜を過ごす私のもとに舞い降りてきた、優しい光のようだった。
……そんなこんなで、私はついに本目的地、デンマークに到着!!
これから一緒に旅をする、高校の友人モニカに会いに行く。大切な誰かと世界のどこかで再会するあのワクワクと安心感で包み込まれるあの感覚は、今でも説明しがたいが、とにかく最強で最高な気分だ。
デンマークの街は、私の好きが詰まった街だった。都市だと言うのに道がひらけていて空が広く、真ん中を川が流れている。留学先のフィンランドほどゆっくりしてないが、いい具合の刺激と落ち着きが融合されていた。大好きになった。
そんなデンマークの都市、コペンハーゲンでの数日間。雑貨や可愛いものに目がない私は、終始ドキドキワクワクが隠しきれず、とにかく気になるお店には必ず足を運んだ。
“ゆうかといると、いつもは見ないところが見えて、ちがう場所にいるみたい。”
デンマークに一年間いたモニカが言ってくれたその言葉が、なんだかとても嬉しくて今でもよく覚えている。
おそらくコペンハーゲン名物のチュロス。原宿のクレープ的な存在なんだろう
ルンルンと街を散策していると、半地下からカラフルで可愛いお店が顔を出していた。迷わずお店に入ると、そこはまさに私の描く夢のような空間だった。年季の入ったビンテージのレターカードやポスター、ヨーロッパで馴染みのあるキャラクターのマグカップなどが店のあちらこちらを埋め尽くしていた。
何時間あっても見足りなさそうな店内は、360°全てに店主さんの大きな愛の矢印が向いているようで、私のトキメキは止まらずにいた。
思わずあれやこれやと手に取り悩んでいると、レジ前に並ぶアクセサリーが目に入り、モニカと2人して釘付けになった。同じものが一つもなく、こだわりで溢れていたが全て店主さんの手作りだと聞き納得した。2人して手鏡を合わせながら、お互いのお気に入りを見つけ合った時間は、贅沢だったなぁ。
その後、どうしても色々と気になってしまい、店主さんと話し始めた。
すると、彼女は退職後に始めたこの店の全ての商品を、自分がヨーロッパ中から実際に買い付けてきたのだと言う。そんな店主さんの愛と思い出で溢れた空間が名残惜しく、私達は随分と長くそこにいた。帰り際、お気に入りのピアスを購入してしばし喜んでいると、店主さんが突然私の手を取り、何かを渡してきた。それは、ピアスを見つける前にわたしが手に取っていたビンテージカードの束だった。
ピアスに釘付けだったもんで、近くに置いていたのをつい、忘れてしまっていた。
“これは全部あなたのものよ。”
多くを言わずに、彼女は優しい笑顔でそれをわたしのカバンにしまわせた。私はなんと言っていいか分からず、この感情をありがとうでしか表現できないもどかしさに、胸がきゅーっとなった。また必ず戻ってくる、それだけ誓って店を出た。
将来はあの店主さんのようになりたいと、私が今でも切実に思う理由はそこにあるんだろう。
出逢いはいつも唐突で、不思議で、尊い。
——
寒くなってきたコペンハーゲン。コーヒー一杯も700円なコペンハーゲン。
ひとつに選びきれない魅力と値段の葛藤で、最終的に“じゃあ2人でシェアしよっか!”って2つの種類を分け合って、2人で少しずつ多くを楽しむのが、いつの間に私たちの定番となっていた。
あの時シェアしたマックのティーさえも、今では思い出だね。
ここで突然の、✴︎旅のおきて✴︎
最後まで諦めないこと。結局は人対人だから、やれるだけやってみる。最後まで粘って、潔く諦めたら全てポジティブに前を向いて、旅を続けよう!
そう、コペンハーゲンで旅初めのワクワクに包まれていた私達だったが、なんと最終的に次の目的地、ドイツ行きのバスを乗り過ごすことになる。
その後の2時間、寒い外のバス停で、ちょっとの希望と不安と焦り、ショックを残しながら、最後のチャンスに身を委ねたりもした。旅にハプニングは付きもの。でも、あの時だって、2人だからなんでも前向きに楽しめるような気がしていた。
感情がジェットコースターのようで、色んな場面に巡り合った1日の終わり、広い夜空に広がる星を眺めて、世界は広いね、と2人で語り合った。星は月のように強く光って輝いていた。こんなに星が大きく見えるなんて。
“あの星まで飛んでいきたいね。”
“でもさ、星まで飛んで行ってみたらガッカリしちゃうのかな。”
“もし星の形じゃなかったらなぁ、なんてね。”
“夢のままで幸せなこともあるね。遠くから見ているだけで贅沢で幸せなこともあるかも。”
“夢見て描いて、そこに浸って生きているのも結構いいよね。というか、そんな時間がいつまでもあったって素敵じゃん?♡”
理由もなく、単純で大切にしたいカタチを2人で共有した、家までの帰り道。バスを逃さなかったら出会えなかった瞬間がそこにはあって、全てが特別で、今でもずっと大切にしていたい。思い返せば、バス停でのあの2時間も、ソワソワしていたとはいえ、素敵な瞬間で溢れていた。そんな出逢いを思い返す度に、目の前の小さな一瞬が、私の一生だな〜と改めて思う。
そんなこんなで、翌朝、無事にドイツ行きのバスに乗ることができた私達。そして、そこから2週間にわたる夏のヨーロッパ旅行を再スタートさせた! ありがとう。
最後に、私たちのプチ旅ルーティンでも添えておこう。
✴︎毎朝のヨガとオートミール&コーヒー✴︎
というより、共に旅をしたモニカのルーティンに私が参加していた、と言えば良いだろうか。
朝起きてから目覚めのヨガを20分、それから2人でナッツとベリー、バナナが入ったオートミールと、ブラックホットコーヒーを用意する。その日の予定を立てながら、違う土地での朝の空気を楽しむのが、私達のマストになった。
シンプルにみえて、とても深く大切な時間。今はなき2人でのそのルーティーンが、今でも私にあの旅の日々を蘇らせる。
風景、匂い、音、空気。
呼吸を整えた瞬間にふわっとやってくる、今はそんな朝が心地よくも、ほろ苦い。
だから、ミルクを多めにしてみて、満たすんだ。
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Yuka Ishiyama
東京生まれ育ち、ひとり時間もパーティもコーヒーもビールも大好きな欲張り大学生。ヨーロッパ留学と旅を経て世界の広さと同時にその近さを実感し、誰もが持つ個々のストーリーをエンパワーし、表現したいと活動している。現在は日本のホステルで働きながら、世界と自分との出会いの旅を続けている。