
As I Like It #39
突然のプチトリップ
Contributed by Utano Katayama
Trip / 2025.01.27
#39
今回は、小さな隣町 Lewes(ルイス)へ突然行ってきた日の話。

私はいつも通り学校の準備をして、いつもの時間、いつものバスに乗り込んだ。バスの2階部分に座っていると、見慣れた姿の人が現れて、私の隣の席に座る。仲良い友達の家の前を通るバスに乗っているから、私たちはたまに同じバスに乗り合わせるのだ。
「授業絶対眠いよね」なんて話していると、友達がいきなり「どっか行っちゃう? 隣のLewisとか!」と言い出した。もう授業にも慣れていたから、たまに何か違うことがしたくなる気持ちはすごく分かる。
この日は友達の一言で、「行っちゃえ!」とたまに発動する私のサボりスイッチが入ってしまった。
そうと決まれば話は早くて、途中のブライトン駅に近いバス停で降りて、駅からは電車で30分ほど。話しに夢中になっていると乗り過ごしてしまうくらい、あっという間に着いてしまう。
一回だけ行ったことがあったけど、あまり街をじっくり練り歩いた訳ではなかった。
もう一度来ることができた嬉しさで、少し感じていた罪悪感も吹っ飛んでしまった。クラスのみんなには秘密だけどね(笑)。
駅に到着してぷらぷら街を歩いていると、どこからか美しい旋律の合唱がうっすらと聴こえてきた。声のする方へ向かって歩いていくと、だんだんと透き通った声が大きくなっていく。そして1つの教会にたどり着いた。
もしかするとこの街で1番大きな教会なのかもしれない。歌に惹き寄せられて中に入ると、とても高い天井と美しいステンドグラスにうっとり。中心では絶賛合唱の練習中だったから、そっと後ろの席に腰掛けてしばらく合唱に聴き惚れていた。美しいメロディーと高音がスッと心に馴染んで、頭の中が空っぽになる。意識せずとも瞑想しているような感覚......。ずっと聴いていたい。

合唱がひと段落すると彼女たちは私たちに気づいて、すごくウェルカムににっこりとしてくれた。
そして「もうすぐこの教会で無料コンサートを開くの。良かったら来てね」と、チラシを1枚ずつ手渡してくれた。今回は練習だったみたいだけど、本番はもっと迫力があるんだろうなぁ。なんて想像してみる。もう一度訪れてじっくりと聴き入りたい。
思わぬ美しい音楽との出会いに浸ったあとは、教会を出て街の散策へ。

Lewes城の入り口

Lewesはいい意味でイギリスらしさがたっぷり詰まっていて、この小さな田舎町の風景が本当に好き。まるで絵はがきの中の世界にいるような気持ちになる。私がもし絵が上手だったら、スケッチブックを持ち歩いて色んなところを書き留めたいくらい。
Lewesはアンティークの街としても知られていて、小さな可愛いお店もたくさんある。気になるところぜんぶに1つ1つお邪魔していくのもすごく楽しい。

そのうちの1つのアンティークショップには大きな本棚が置かれていて、可愛いブックカバーたちに惹かれて手に取ってみる。

カバーが凝られているだけではなくて、ページの横や上部にもゴールドやグリーンなどの上品なカラーで色取られている。どの本もハリーポッターに出てくる図書館に並んでいそうだよね(笑)。この本を持って公園で読もうかなぁ。なんて、そんな素敵なことも、この街ならすぐに思い浮かんじゃう。

小腹が空いたから、近くの人気らしきベーカリーに寄り道してみる。
美味しそうなパンやペイストリーに目が眩むけれど、あとでお昼ごはんを食べるからひとつだけに留めておいた。慎重にひとつ選んだのはバナナパウンド。これがとっても美味しい! バナナの香りがしっかりしてバナナ好きには堪らない。

お店を出て、さらに歩いていくと、秋めいたこの街でかわいいパンプキンを見つけた。濃いオレンジ色が大好きな秋を象徴しているみたいで胸が躍る。
この可愛いカボチャたちが食べられるのか気になって調べてみたけれど、これは食用には向いていないみたい。カボチャ自体をあまり食べないイギリス人も多いみたいだけど、日本のカボチャを食べたら絶対好きになるよね? 甘くてホクホクのカボチャや、秋といえばの焼き芋を思い出して日本の秋が少し恋しくなった。

もう少し街を散策して、お昼ごはんを食べたあとブライトンに帰った。突如はじまった私たちのプチトリップだったけれど、秋を感じて、田舎町を満喫して、素敵な音楽にも出会えて、幸せに幕を閉じた。
ブライトンとはまた違う時間の流れ、スピード、空気感にすごく浄化された気がする。たまにはこうして電車で小旅行するのも、イギリスの違った魅力が見つけられる気がして嬉しい。
誘ってくれた友達の自由さと柔軟さに感謝だ。

たまにはまたサボっちゃってもいいかな。
いや、休日にまた出かけよう!
つづく
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Utano Katayama
2000年生まれ、京都在住の大学生。自分探しも兼ねてイギリスのBrightonという海沿いの街に留学中。イギリスのカルチャー、世界観にますます惹き込まれている日々を綴った"As I Like It"をContainerにて連載中。自慢できることは何でも食べられること。食、アクション映画が好き。












































































