Big Sur and the End of the Journey

mind of novice on a moment to moment #6

Big Sur and the End of the Journey

Contributed by Mikito Hyakuno

Trip / 2025.03.21

湘南出身のアーティスト、金田大巧と百野幹人によるパブリッシング・プラットフォーム『Bong Sadhu』が訪れた、彼らにとって2度目のロサンゼルス。この地で捉えたかけがえのない瞬間は作品へと昇華され、また同じ場所へ舞い戻ってくる。そんな作品循環の一部始終と旅のこばなしを、写真家・百野幹人が綴る。

#6


Big Surまであと1時間あまり。もう少しのところで、突然タイセイ達から電話が来た。どうやら足止めを喰らったらしく、遅れるとのこと。自分らもすでに時間がかかっていたので遅れると伝えていた。けれども、それよりも遅くなると言われたので先に宿の方に向かうことに。

ハイウェイ1を走り続けてカーメルエリアを抜けると、海が見えはじめた。この場所は空が濃く曇っていたが、海が見えた喜びも相まって、時間もあるので一旦降りて空気を吸うことに。宿まであと40分ほど。

タバコを吸いながら、写真を撮って、海を見渡していた。すると突然遅れているはずの2人が後ろから現れた。道中での再会。不思議なことに、旅の偶然。持ってたカメラで慌てて撮影した。



そして突然あれほど厚くかかっていた雲が突然消え去り、視界が晴れた。
あまりの絶景に叫んでしまった。急遽車を止めて写真を撮る。曇天の空からこの光景に変わった瞬間の、気持ちが湧き上がる感覚は格別だった。



到着した宿はDeetjen's Big Sur Innというところで、タイコウがBRUTUSに掲載されていた野村訓一さんのカリフォルニア旅の記事で見つけたらしく、前から気になっていたらしい。写真は高橋ヨーコさんだったと。
ここはノルウェー移民の夫婦が家族経営していて、この地の木々を伐採して自分らで建てたんだそう。一軒一軒形も違えば鍵もなく、ここは電波も全くない。暖炉と、昔ながらの造りが魅力的な建物だ。





急いで夕日に向かって歩き出した。見えた光景はMacBookにある背景そのものであったが、直視すると案の定凄まじすぎた。

中継地点で一度会っていた話したカメラマンのVincentとAmyとここでも再開した。2人は数日前にサンフランシスコでバッタリ会ってBig Surに一緒に来たんだそう。偶然出会った人とこの地に来ることも、自然が全てを許してくれる。浪漫的な話だ。





タイセイとタイコウも合流して、3人でサンセットを眺めた。Big Surはかなりの急斜面な山だから、海岸から地平線が綺麗に見える。日が完全に落ちるまで1時間程長いようで短い美しい時間だった。





宿に戻り、暖炉の火を起こし、みんなで互いの旅の話をしながらここに来ることができたことを祝い合った。電波もない静かな場所で過ごす時間はとても記憶に残っている。





翌朝昨日の出来事を振り返りながら眺めた川も特別だった。ホテルにあるレストランの朝食も特別に美味しかった。旅では、その場所が気に入れば惜しみなくお金を使うようにしている。この歳だし大した収入も、これっぽっちもないけど、この時間は今しかないから、後に負債を作るくらいまで惜しまないようにする。毎度クレジットの金額見て後悔するけど、その体験を選ばなかった惜しみのほうがでかいはずだから。



この地を後にし、フェイファービーチに訪れた。ホテル沿いのハイウェイ1から抜けて、海岸に向かい車で10分ほど。細道を抜けたクローズドな場所にあった隠れビーチのような場所。フィーを払うプライベートビーチ。岩の構造で風は強かった。ここに多くの人がバカンスで来ていて、この地に流れる独特の時間の流れと空気を感じた。



Bong Sadhuでは2度目のカリフォルニア。
今回は同年代のタイセイとケイシーも含め、4人で旅を共にした。みんな、20代の半ばに迫ってきてこれからのキャリアとかを考えてモヤモヤとする時期に、自然とただ流れる時間と……何もしない贅沢を共有できたことは何よりも大きい。



旅一つとっても、ただ消費をするだけになるのか、その時どこに行くのか。自分はどこにいるのか。
この地をゴールとした僕らはこの先はどこをゴールにするのか。

ゴールは積み重ねるものだ。一度決めたものも、こうした体験を積み重ねることによってまた変わり続け、永続的に続く。有限にするからこそ無限が広がっていくのだ。
「時々の初心」というテーマ名にしたのは、いくつになっても初めての出来事は常に初心者であること、その心を忘れたくないと今の自分に言い聞かせたかったからなのだ。
誰よりも許す心を広く持つ精神性はこの先進んでいく上で必ず大事になると、今回の旅やBig Surがまた一つ教えてくれたことだった。



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