MY BEACH TOWN #5

旅はいつでもナマモノ

Byron bay-5

Contributed by Akemi Kan
Photo by Chrystal Dawn

Trip / 2018.07.24

人生は足し算ではなく引き算。
だから時間のある限り、気になるビーチには必ず行きたいと思う。
でも、このままだと世界中のビーチタウンを回りきれない…。
やばい、世界は結構でかいぞ!


オーストラリアの最東端にある小さな街バイロンベイ(この街についてはすでにたっぷりとお話ししているので、気になる人はアーカイブをチェック!)。地図を見てもわかる通り、ちょっと飛び出しちゃってます。でも、最果てには多くの情報が届かない分、昔ながらのカルチャーが息づいていたりするから面白い。



大量生産が主の現代は、世界中のモノが安く簡単に手に入る時代。それでも地消地産を大切にするこの街には、誰かが心を込めて作った野菜や果物がそれ以上に並んでいる。周辺の街を含め、どこかで毎日開催されるファーマーズマーケットには、新鮮な食材がいっぱい。



この辺りでは誰もが知る「FRESH FINGER LIMES」。半分に割ると、なかにはグレープフルーツのように小さな粒々の果実が。でも味はライム。なんだこれ? 日本では見たことがないけれど、口に入れるとすごく美味しい。詳しく聞くと、これはシトラス。おっ、名前は知ってるけど初めて食べた! そんな小さな心の驚きこそ、旅の醍醐味だと思う。



これはその名の通り、角のあるメロン。“ジューシーなキューリ”なんて、素敵なサブタイトルが付いているけど、つまりは瓜科。味は想像通り。でも、見た目がなんかかわいい。同じ土や太陽でも、場所が違えばこんなに個性が出るんだな。海ではなく、ちょっと土の中に潜りたくなる瞬間。どうしたらこうなるんじゃいー! 知らないものには好奇心をくすぐられる。だから多くの人が旅に心を踊らせるのかもしれない。



なんて考えている間に、実は野菜もフルーツもすべて腐ってしまう。本当は日本に持って帰ってお土産にしたいけど、それも叶わぬ願い。旅は、ナマモノ。だから眠い目をこすって、今日もあちこちへ移動する。この一瞬はもう二度と訪れないかもしれない…。そんな気持ちが大きなエネルギーになる。幸運にもいろんな場所へ旅をすることが増え、お土産を買う機会はずいぶん減った。



「OK! かんぱいー!」
ファーマーズマーケットで会った陽気なおじさん。メガネが緑。毎日のようにファーマーズマーケットが行なわれているバイロンベイ周辺は、旅人には位置関係を把握できないので、ここを「緑ファーマーズ」と任命。おじさんの笑顔と途中で見かけた農場をリンクすれば、また次も戻ってこれる。●●産の何かよりも、その町で感じた風や匂いを持って帰りたい。だけどそれは難しい。だったらもう、お土産は嘘なのだ。



そんな訳で、今日も生ビールで乾杯!
クラフトビールが豊富なオーストラリアは、ビールにこだわる人が多いらしく、その味も秀逸。
「STONE&WOOD BREWING」はバイロンベイ生まれの銘柄で、工場に行けば5種類を飲み比べできる。



その場で作られているビールは上手くない訳がない。しかも旅行者が多いバイロンベイは、昼間から大盛況。で、うっかりランチタイムに飲んでしまった生ビールは、まさに自由の味。友達にも味わってほしいけど、持って帰れない。だから帰って言う。「今度一緒に行こうよ!」

見えないお土産と、新しい旅の始まり。


アーカイブはこちら

Tag

Writer