ROADSIDE STORIES #2 / LOVABLE USELESS #16
ジャニス・ジョップリンの軌跡を追う旅。
Pick from anna magazine
Contributed by anna magazine
By / 2020.09.16
旅といえばロードトリップ。出発地と目的地だけ決めて、あとは気持ちのおもむくままに、車を走らせる。anna magazineはそんなたくさんしてきました。ROADSIDE STORIESでは、その中から特に印象に残った旅を振り返ります。旅から帰った後に思い出話が止まらないのがいいロードトリップだよね!
『anna magazine』vol.11のロードトリップはアメリカの伝説的女性シンガー、ジャニス・ジョップリンが辿ってきた道を追体験する旅になった。彼女が生まれ育ったアメリカ南東部にあるポート・アーサーという小さな港町が旅の始まり。何十年も前から時が止まったままのような町は少し寂しげで、田舎娘だったジャニスがどんな思いでここから大都会L.A.へ旅立ち、一躍スターとなったのか彼女の人生を思わずにはいられない旅となった。
出発地点なんてどこでもいい。旅の終わりがどこになろうと気にしない。クルマを運転しながら道を進んでいき、そして移動しながら時間を感じたいだけだから。そうやって選んだ出発地点はテキサス州ポートアーサー。どんな町なのかも知らない。知っているのはジャニス・ジョップリンが生まれた町であると言うことだけ。ヒューストンの空港に降り立つ。ロサンゼルスやニューヨークに比べて人の少ないイミグレーション。たしかに、ヒューストンからアメリカに入国する人なんてあまりいなそうだもんね。入国審査官に「どこへ行くの?」と聞かれ「ポートアーサー」と答える。「ポートアーサー? またどうしてそこへ?」と聞き返される。まだ訪れたこともない町だから想像もつかないけれど、とにかくレンタカーを借りてポートアーサーを目指した。寂れた港町を散策してさっそくジャニス・ジョップリンが生まれたとされる生家を見学する。建物も当時から建て直されている。でも家の前に大きく生えたこの草木は当時からあったはず。傾いた陽がキラキラと光る。この光を見ながらジャニスは何を考えていたんだろう? 彼女は1970年10月4日にロサンゼルスのモーテル「ランドマーク・モーター・ホテル」の105号室で亡くなっている。27歳だった。ロサンゼルスまでの27年間を私たちは10日で周ろう。1日を24時間として過ごしたいし、100マイルを100マイルとして感じられたらきっといい旅になるはず。
ポートアーサーから再びヒューストンを通りロサンゼルスを目指す。西テキサスとメキシコの国境にある国立公園ビッグベンドに到着したのはうっかり陽も暮れた夜。次の日の朝、せっかくなので朝陽を見ようということになった。まだ空は真っ暗、公園の何もない真ん中にクルマを停めた。音も何もしない。しばらくすると空が明るくなってくる。あっちが東だったんだね。それから1時間ほど待ってやっと太陽が出てきた。10分経つとその分陽が昇る。何もないところで何もしていない。10分を10分として感じられるのがうれしかった。砂漠の丘の向こうでオオカミの吠える声が聞こえたのでまねして吠えてみる。またそれに返すようにオオカミが吠え返してくる。なんてことないこの時間がいい思い出になる。
ポートアーサーを出発して7日目、ロサンゼルス市内へ入った。フリーウェイの車線も増えて交通量も多くなる。まわりを走るクルマの速度もこれまで以上に早くなる。気分が高まったところで車のラジオからスヌープドッグの「Gin and Juice」が流れてくる。ロサンゼルスも悪くない。窓を開けてラジオのボリュームを上げると気持ちがいい。ハリウッドで、ジャニスがオーバードーズで亡くなったと言われているホテルに宿泊する。チャイニーズシアターの裏側にあるそのモーテルは観光客で満室。静かな港町ポートアーサーで生まれ、このモーテルで亡くなったジャニス。彼女の一生なんて私たちがそうぞうできないくらいいろいろなことがあったと思うけれど、今回旅したたった10日間ですら、しっかりと過ごした実感を味わえたし10日間分の足跡も残せた気がする。
地方都市から大都会へ向けて変わっていく街並み。ロードトリップをしていると田舎から都会へ、都会から田舎へ変わっていくグラデーションを感じられる。アメリカは時代の最先端を行く国というイメージがあるけれど、それはアメリカ東西両端の都市のイメージなんだと思う。普段訪れることのない大半の街は、訪れたポートアーサーのように何十年も姿を変えずにあり続けている。そのことがいいのか悪いのかはわからないけど、ロードトリップはそんな気づきも与えてくれる貴重な時間なんだ。
ROADSIDE STORIESのアーカイブはこちら
LOVABLE USELESSのアーカイブはこちら
ジャニス・ジョップリンの軌跡を追って。
『anna magazine』vol.11のロードトリップはアメリカの伝説的女性シンガー、ジャニス・ジョップリンが辿ってきた道を追体験する旅になった。彼女が生まれ育ったアメリカ南東部にあるポート・アーサーという小さな港町が旅の始まり。何十年も前から時が止まったままのような町は少し寂しげで、田舎娘だったジャニスがどんな思いでここから大都会L.A.へ旅立ち、一躍スターとなったのか彼女の人生を思わずにはいられない旅となった。
南部の田舎町から大都会L.A.へ。
出発地点なんてどこでもいい。旅の終わりがどこになろうと気にしない。クルマを運転しながら道を進んでいき、そして移動しながら時間を感じたいだけだから。そうやって選んだ出発地点はテキサス州ポートアーサー。どんな町なのかも知らない。知っているのはジャニス・ジョップリンが生まれた町であると言うことだけ。ヒューストンの空港に降り立つ。ロサンゼルスやニューヨークに比べて人の少ないイミグレーション。たしかに、ヒューストンからアメリカに入国する人なんてあまりいなそうだもんね。入国審査官に「どこへ行くの?」と聞かれ「ポートアーサー」と答える。「ポートアーサー? またどうしてそこへ?」と聞き返される。まだ訪れたこともない町だから想像もつかないけれど、とにかくレンタカーを借りてポートアーサーを目指した。寂れた港町を散策してさっそくジャニス・ジョップリンが生まれたとされる生家を見学する。建物も当時から建て直されている。でも家の前に大きく生えたこの草木は当時からあったはず。傾いた陽がキラキラと光る。この光を見ながらジャニスは何を考えていたんだろう? 彼女は1970年10月4日にロサンゼルスのモーテル「ランドマーク・モーター・ホテル」の105号室で亡くなっている。27歳だった。ロサンゼルスまでの27年間を私たちは10日で周ろう。1日を24時間として過ごしたいし、100マイルを100マイルとして感じられたらきっといい旅になるはず。
アメリカの大自然の中迎えた朝焼け
ポートアーサーから再びヒューストンを通りロサンゼルスを目指す。西テキサスとメキシコの国境にある国立公園ビッグベンドに到着したのはうっかり陽も暮れた夜。次の日の朝、せっかくなので朝陽を見ようということになった。まだ空は真っ暗、公園の何もない真ん中にクルマを停めた。音も何もしない。しばらくすると空が明るくなってくる。あっちが東だったんだね。それから1時間ほど待ってやっと太陽が出てきた。10分経つとその分陽が昇る。何もないところで何もしていない。10分を10分として感じられるのがうれしかった。砂漠の丘の向こうでオオカミの吠える声が聞こえたのでまねして吠えてみる。またそれに返すようにオオカミが吠え返してくる。なんてことないこの時間がいい思い出になる。
ポートアーサーを出発して7日目、ロサンゼルス市内へ入った。フリーウェイの車線も増えて交通量も多くなる。まわりを走るクルマの速度もこれまで以上に早くなる。気分が高まったところで車のラジオからスヌープドッグの「Gin and Juice」が流れてくる。ロサンゼルスも悪くない。窓を開けてラジオのボリュームを上げると気持ちがいい。ハリウッドで、ジャニスがオーバードーズで亡くなったと言われているホテルに宿泊する。チャイニーズシアターの裏側にあるそのモーテルは観光客で満室。静かな港町ポートアーサーで生まれ、このモーテルで亡くなったジャニス。彼女の一生なんて私たちがそうぞうできないくらいいろいろなことがあったと思うけれど、今回旅したたった10日間ですら、しっかりと過ごした実感を味わえたし10日間分の足跡も残せた気がする。
街から街へロードトリップをして思うこと。
地方都市から大都会へ向けて変わっていく街並み。ロードトリップをしていると田舎から都会へ、都会から田舎へ変わっていくグラデーションを感じられる。アメリカは時代の最先端を行く国というイメージがあるけれど、それはアメリカ東西両端の都市のイメージなんだと思う。普段訪れることのない大半の街は、訪れたポートアーサーのように何十年も姿を変えずにあり続けている。そのことがいいのか悪いのかはわからないけど、ロードトリップはそんな気づきも与えてくれる貴重な時間なんだ。
ROADSIDE STORIESのアーカイブはこちら
LOVABLE USELESSのアーカイブはこちら
Tag
Writer
-
anna magazine
「anna magazine」は、ファッションからライフスタイルまで、ビーチを愛する女の子のためのカルチャーマガジン。そして、「anna magazine」はいつでも旅をしています。見知らぬ場所へ行く本当の面白さを、驚きや感動を求めるたくさんの女の子たちに伝えるために。