My Favoritr Things #3_2 / gion
穏やかな街と別世界へ誘う喫茶店
Photographer: Junsuke Obi
By / 2022.03.29
「古くてチャーミングなもの」をキーワードに展開中の人気企画“My Favorite Things”。
第三弾はCREOLMEデザイナー兼ディレクター・工藤三咲さんの馴染み深いスポットが集まる「JR中央線沿線の街」がテーマ。第2回目の今回は、普段の彼女と一番関わりがある「阿佐ヶ谷」です!
工藤さんにとって阿佐ヶ谷は住んでいる街からも近く、生活の拠点となっているそう。「並木道があって道が開けているのでお気に入りの場所なんです。街も落ち着いた雰囲気ですし、すごく住みやすい街ですね」。
「阿佐ヶ谷っぽくない佇まいだったのですごく気になって、何度か訪れています」。という、純喫茶「gion」。この街で30年以上もこの店を経営してきた店主の関口宗良さんにお話を聞かせていただきました。
工藤:どれくらい前からお店を始められたんですか?
関口さん(以下敬称略):37〜8年前ですね。大学を卒業してからがむしゃらに働いて、ようやくお金が貯まったのでこの店を始めたんです。
工藤:それはすごい。もともと喫茶店をやりたかったんですか?
関口:そうなんです。本が好きで、昔から本を1日1冊以上読んでいたんです。将来のことを考えた時に、「本を読みながら働ける方法はないかな」と考えて喫茶店経営を思いついたんです。でもなにもかもはじめてで、ゼロの状態からだったから本当に大変でした。
工藤:なるほど。最初からこの内装のイメージがあったんですか?
関口:お店をするって決めた時に特にたくさんの女性に来て欲しいと思ったんです。そんなわけで、それまでは女性雑誌なんか読んだことなかったのに、片っ端から読みあさりました。さらに東京中の喫茶店も300軒くらい回りましたね。そうする内にだんだんイメージがあれこれ出来てきて、頭の中で絡み合ってこんな内装になったって感じです。とにかく女性のお客様にいっぱい来てもらおうと思って必死でした(笑)。
工藤:素敵ですよね。ちゃんと女性が好きな雰囲気になっています。お花もいつもキレイなもの使っていらっしゃるし。
関口:お花大好きです。街中だと緑も少ないじゃないですか。どうしても街感っぽくなるのが嫌で。特にこの店の周りは後ろが高架線だし、前は銀行だし。しょうがないから植木とテントで見えないようにしています(笑)。
工藤:隠してるんだ!
関口:上から覗いてもテントから下に木が吊り下がってるように見えるんです。外から隔離した空間にしたかったので。
工藤:なるほど。その意味わかりますね。
関口:他にも窓を覗くと小鳥が20匹もいたり、音楽隊が隠れていたり。お客様が飽きないように色々工夫しているんです。広い席で飲んでも、狭い席で飲んでもコーヒーって同じ値段じゃないですか。だったら少しでも楽しんでいただきたいって思ったので。
工藤:すごく素敵な話ですね。いろんな席を試してみたくなります。あのブランコもすごい!
関口:あれは昔、ジャズ喫茶に行った時、真ん中に長椅子のブランコがあって。それを見て「お店を始めるなら絶対欲しいな」って思って作ったんです。内装には1ヶ月かかったんですけど、ちょうど大家さんが旅行しているタイミングだったので、とりあえず勝手に取り付けたんです(笑)。ちなみにこの席は600kgまでは耐えられます。
工藤:すごい! それなら誰でも座れる!
工藤:関口さんが思う阿佐ヶ谷の魅力って何ですか?
関口:まずは緑がすごく多いところ。有名な「中杉通りのけやき並木」があるし、南の方に行けば「善福寺川」が流れていて、その近くにも6〜7kmに渡って大きな公園があります。もうひとつは人口構成が良い意味で「普通」なところですね。田舎だとお年寄りが多いとか、逆に高円寺なんかは若い子が多いとかありますが阿佐ヶ谷はバランスがとても良いんです。
工藤:確かに。一駅違うだけで印象全然違いますよね!
関口:東京は一駅一駅ごとに街の雰囲気が全然違う印象です。阿佐ヶ谷はバランスが良いから、落ち着いていて住みやすいですよね。
工藤:私も住んでいてそれは思いますね。ここに来るお客さんはどんな方が多いんですか?
関口:若い人からご年配の方まで来られますが、今はSNSの影響なのか20代から30代の女性が圧倒的に多いですね。特に土日や祝日はたくさんのお客様で混雑しています。平日はまだ比較的空いていますね。私自身は雨の日の「gion」はゆっくりコーヒーが飲めて大好きなんです。
工藤:たしかに雨が似合いそうな雰囲気ですね。今度は雨の日に来ようかな。
【DATA】
gion
住所:東京都杉並区阿佐ヶ谷北1-3-3 川染ビル1F
電話:03-3338-4381
営業時間:9:00~24:00
定休日:無休
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CREOLME
“VINTAGE(過去)×STREET(今)”をコンセプトに、直感や本能でファッションを楽しみ、伝統的なものにユースカルチャーの要素を落とし込んだコンテンポラリーなデザインのアイテムを展開するウィメンズのアパレルブランド。