ROADSIDE STORIES #3 / LOVABLE USELESS #68
ハワイアンとエスキモー
Pick from anna magazine
Contributed by anna magazine
By / 2020.12.09
旅といえばロードトリップ。出発地と目的地だけ決めて、あとは気持ちのおもむくままに、車を走らせる。anna magazineはそんなたくさんしてきました。ROADSIDE STORIESでは、その中から特に印象に残った旅を振り返ります。旅から帰った後に思い出話が止まらないのがいいロードトリップだよね!
『anna magazine』vol.12の旅はハワイからアラスカという常夏から極北へとむかう旅になった。
数十年前、ハワイの空港に初めて降り立った時、南国の花がふわっと身体を纏う心地よさを知った。締め付けられた感 情を開放する暖かな空気と、どこか優しいアロハの言葉。それから、育ちの良さを感じさせる空港の佇まいが気に入っ て、それから何度も足を運んだ。搭乗口に立ち、ホノルル行きというアナウンスを聞くたび、気持ちはどんどん高ぶって、あの香りにもう触れた気にすらなる。大きな海に飛び込むように、無邪気な心で目指すハワイは、いつだって最高の楽園なのだ。そして、いつものようにハワイを目指す今回の旅。スーツケースには、たくさんの防寒着が入っている。今までより断然身軽じゃない。でも今まで以上にワクワクしていた。気心知れたハワイと、何にも知らないアラスカ。暑さと寒さ。ハワイアンとエスキモー。相反するこの旅先の距離は遠いけれど、どっちもアメリカだ。
小さな島国で育った私には想像できないスケールのデカさに、感動が今にも胸 から飛び出しそうだった。ハワイへ来たらまずはワイキキビーチ。それは王道だけど、古きよきハワイのビーチカルチャーを感じるには一番いい場所だと思っている。何年経っても変わらない波を見れば、昨日のようにサーフィンを楽しむ王様の姿が目に浮かぶ。その日サーフィンをしたけれど、久しぶりの水着と優しいロコの姿が嬉しくて、うっかり日焼け止めを忘れた。懐の大きなハワイ。頬を真っ赤にしたまま向かった空港で、アラスカ行きの飛行機を待つ。尾翼に大きなエスキモーの姿を纏ったアラスカ航空。親しみの湧く彼らの笑顔が次の旅の主軸になる。6時間ほど飛行機に乗り、アラスカのアンカレッジという街に降り立つ。 思ったより広くて都会的な空港には、クマの置物があった。初めて出会うその景色は意外にもフレンドリーだったけれ ど、その後訪れた街で見るツンドラの大地と、どこまでも続 く1本の道に翻弄され続けた。優しい香りに癒されたハワイは遠にどこかへ消えて、尖った生命力だけが残る。このまま走り続ければ北極海へ行く......。
一歩間違えれば、一生出られないような巨大な森と、大きな山々。見上げる空はあまりにも広くて、宇宙に手が届きそうな気がした。アラスカもたくさんの虹が出る場所だったけれど、地球の端から端をまたぐようなスケールのデカさは、ハワイの和やかな虹とは違う。冬はマイナス40°Cにもなるアラスカの想像もできない寒さ。そして、そこで生き抜く多くの動物たち。この一瞬を謳歌するように在るアラスカは、虹にも強いエネルギーがあった。オーロラも見れたらいいな。旅の途中、何度もそう思ったけど、最後に訪れた街フェアバンクスは、ずっと曇りだった。深夜便で日本へ発つ最終日の朝、空は雲ひとつない晴天。今晩はきっと見える気がする。後ろ髪を引かれるように飛び立つ飛行機の窓から見る主翼には、大きなアメリカ国旗があった。空を何度舞っても旅の欲望は留まることを知らない。
数え切れないほどアメリカを訪れても、感情を揺さぶられ続けるのは何故だろう。空港で足早に去る人々の背中に多くの物語を垣間見ながら、遠いアラスカのオーロラとハワイの虹を思い出していた。
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常夏から極北へ
『anna magazine』vol.12の旅はハワイからアラスカという常夏から極北へとむかう旅になった。
数十年前、ハワイの空港に初めて降り立った時、南国の花がふわっと身体を纏う心地よさを知った。締め付けられた感 情を開放する暖かな空気と、どこか優しいアロハの言葉。それから、育ちの良さを感じさせる空港の佇まいが気に入っ て、それから何度も足を運んだ。搭乗口に立ち、ホノルル行きというアナウンスを聞くたび、気持ちはどんどん高ぶって、あの香りにもう触れた気にすらなる。大きな海に飛び込むように、無邪気な心で目指すハワイは、いつだって最高の楽園なのだ。そして、いつものようにハワイを目指す今回の旅。スーツケースには、たくさんの防寒着が入っている。今までより断然身軽じゃない。でも今まで以上にワクワクしていた。気心知れたハワイと、何にも知らないアラスカ。暑さと寒さ。ハワイアンとエスキモー。相反するこの旅先の距離は遠いけれど、どっちもアメリカだ。
小さな島国で育った私には想像できないスケールのデカさに、感動が今にも胸 から飛び出しそうだった。ハワイへ来たらまずはワイキキビーチ。それは王道だけど、古きよきハワイのビーチカルチャーを感じるには一番いい場所だと思っている。何年経っても変わらない波を見れば、昨日のようにサーフィンを楽しむ王様の姿が目に浮かぶ。その日サーフィンをしたけれど、久しぶりの水着と優しいロコの姿が嬉しくて、うっかり日焼け止めを忘れた。懐の大きなハワイ。頬を真っ赤にしたまま向かった空港で、アラスカ行きの飛行機を待つ。尾翼に大きなエスキモーの姿を纏ったアラスカ航空。親しみの湧く彼らの笑顔が次の旅の主軸になる。6時間ほど飛行機に乗り、アラスカのアンカレッジという街に降り立つ。 思ったより広くて都会的な空港には、クマの置物があった。初めて出会うその景色は意外にもフレンドリーだったけれ ど、その後訪れた街で見るツンドラの大地と、どこまでも続 く1本の道に翻弄され続けた。優しい香りに癒されたハワイは遠にどこかへ消えて、尖った生命力だけが残る。このまま走り続ければ北極海へ行く......。
一歩間違えれば、一生出られないような巨大な森と、大きな山々。見上げる空はあまりにも広くて、宇宙に手が届きそうな気がした。アラスカもたくさんの虹が出る場所だったけれど、地球の端から端をまたぐようなスケールのデカさは、ハワイの和やかな虹とは違う。冬はマイナス40°Cにもなるアラスカの想像もできない寒さ。そして、そこで生き抜く多くの動物たち。この一瞬を謳歌するように在るアラスカは、虹にも強いエネルギーがあった。オーロラも見れたらいいな。旅の途中、何度もそう思ったけど、最後に訪れた街フェアバンクスは、ずっと曇りだった。深夜便で日本へ発つ最終日の朝、空は雲ひとつない晴天。今晩はきっと見える気がする。後ろ髪を引かれるように飛び立つ飛行機の窓から見る主翼には、大きなアメリカ国旗があった。空を何度舞っても旅の欲望は留まることを知らない。
数え切れないほどアメリカを訪れても、感情を揺さぶられ続けるのは何故だろう。空港で足早に去る人々の背中に多くの物語を垣間見ながら、遠いアラスカのオーロラとハワイの虹を思い出していた。
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anna magazine
「anna magazine」は、ファッションからライフスタイルまで、ビーチを愛する女の子のためのカルチャーマガジン。そして、「anna magazine」はいつでも旅をしています。見知らぬ場所へ行く本当の面白さを、驚きや感動を求めるたくさんの女の子たちに伝えるために。