「THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE」出版記念座談会
ACME Furnitureのオリジンに迫る!
Contributed by kimura kei
By / 2018.04.05
座談会メンバー
Two Virgins:後藤 佑介
Two Virgins出版企画担当。「annabooks」をはじめ熱量の高いカルチャー系書籍を多数手がける。
ACME Furniture:田中 健一郎
ACME Furnitureディレクター。ACME Furnitureに出合いアメリカンヴィンテージ家具の世界に引込まれる。
ACME Furniture:勝山 龍一
ACME Furnitureセールスプロモーション。ACME Furnitureの社外コミュニケーション部隊として多くの案件を手掛ける。
Mo-Green:須藤 亮
anna magazine編集長。自社媒体をはじめ、様々なクライアントワークを統括する。ACME Furnitureとは10年来の付き合い。「THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE」全体ディレクションを担当。
Mo-Green:木村 慶
「THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE」編集担当。ACME Furnitureのシーズンカタログ制作も担当する。
眠っていたコンテンツが本に!
木村:「THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE」を制作するきっかけは何だったんですか?
後藤:昨年ACME Furniture渋谷店で写真家の小尾淳介さんの写真展を開催したとき、ディレクターの田中さんとACME Furnitureの本を一緒に作れたらいいですねという話になったことですね。
勝山:今回の書籍のメインコンテンツとなっているL版写真には実は以前から注目していたんです。僕はもともとベイクルーズのアパレル部門から、ACME Furnitureに異動してきたんですが、この写真を初めて見たとき「こんなものが残っているなんてすごい!」と感動しました。それで一度この写真をたくさん並べた雑誌広告を作ってみたら、反応がすごく良くて。それからいろんな編集部の方に会うたび「面白い写真があるんで、何かできないですかね」と声掛けしてました(笑)
須藤:僕が一番最初にこの写真と出合ったのはカタログの打ち合わせで鷹番店に行ったとき。薬棚の中に入っている無数の写真を見せていただいて、それがとても面白かったんです。
田中:あのヴィンテージの薬棚はもともと写真を入れていたのかなと思うくらい写真がぴったり収まるサイズでした。今も同じ状態で保管してますよ。
※事務所でいまだに使われているL版写真の保管棚。
須藤:なにしろ写真が大量なので、ACME Furinitureのスタッフの方々も整理できてなかったみたいですけど、このアーカイブは魅力的なコンテンツにできるはずだって、ずっとみなさん言ってましたよね。
勝山:そうなんですよ。いつか本にしようってずっと話してましたね。
須藤:一度、洋書の「2Kilo」(※1)っていう本を参考にして印刷見積もりを取ってみたら1冊5千円くらいかかりそうで。その価格だとちょっと難しいねって諦めることに。その後も度々話には上がるんだけど何回も頓挫してきた企画でした。その後、annabooksの制作で後藤くんと知り合って。「とにかく本を作りたいので何かネタがあればください」って言っていたので、実はこんな面白い写真をACME Furnitureが持ってるんだけどって相談したらかなり前向きに検討してくれました。それから実現に向けて走り始めた感じですね。
木村:後藤さんはACME FurnitureのL版写真を見てどう思いました?
後藤:写真も魅力的だったし、それを並べた家具のアーカイブ本というアイデアもワクワクしました。ACME Furnitureの世界観も大好きだったのでぜひ本にしたいと。
田中:今回の本を作るためにいままでバラバラになっていた写真を家具ごとにまとめたりしたんですが、すごい大変な作業でした(笑)。僕がACME Futnitureに入社したのが13年くらい前で、それ以前の写真は初めて見るものばかり、世代によってバイヤーの好みが出ていたり、日本のトレンドとアメリカの市場に出回っているものが違うのが面白かったです。
※ACME Furnitureディレクター田中氏
買い付けの歴史を物語るナンバー。
須藤:今回の本に掲載した写真はどんな視点でセレクトしたんですか?
田中:創業当時の目線といまの目線、ACME Furnitureの35年間を満遍なく選びました。まだまだいい写真はたくさんあるので、もう一冊できるんじゃないかなと思っています。それと、今はデジタルカメラで撮影していますが、今回の本ではあえてほぼフィルムの写真のみで構成したんです。
須藤:フィルムの時はどんなカメラで撮ってたんですか。
田中:「写ルンです」のようなインスタントカメラです。2005年頃まではずっとフィルムでしたね。
須藤:この写真はどんなタイミングで撮影されたものですか?
田中:買い付けのためのアメリカ出張の期間中、ひたすらトラックで各地を回って、トラックがいっぱいになったら倉庫に家具を降ろします。その倉庫に溜まった家具がある程度の点数になったら一点一点撮影していくんです。
勝山:写真は、シッピングなどの手続きとして必要ということもあるんですが、帰国後ホームページに写真を掲載して、顧客様にオーダーしてもらうという目的もあります。家具は船便で到着するまで数週間かかりますが、写真はスタッフと一緒に飛行機で帰ってくるので、先に掲載しておくんです。
須藤:家具の前に置かれている番号の意味は?
田中:アルファベットは家具のジャンルを表す頭文字になっていて、番号は買い付け当初からの通し番号です。
勝山:その番号にも衝撃を受けましたね。昔からいるスタッフはその凄さに気づいてなかったんですけど、なにしろアメリカから7000台以上もドレッサーを持ってきてるわけですからね(笑)
※ACME Furnitureセールスプロモーション勝山氏
本棚に置いておきたくなるものにしたかった。
須藤:それにしても、実際に本の制作までたどりついたというのは素晴らしいですよね。魅力的なコンテンツがあったら、本にできれば面白いだろうなとは誰もが思うけど、なんだかんだ制約があって頓挫しちゃうことの方が多いじゃないですか。
勝山:たしかにこの素材自体を面白いねって言ってくれる人はたくさんいましたね。
須藤:以前弊社の代表の森(※2)が「My Freedamn!」ってアーカイブブックをプロデュースしてたんですけど、この「THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE」もそれと同じようにとてもシンプルな作り。こういった本は制作者の視点で見ると「企画が足りないな」ってどうしても思ってしまって、もっとインタビューだったりコラムみたいなものだったり詰め込みたくなると思うんです。そうしないと本の深みがないと思ってしまいがち。こういう風に形になれば誰でもその本質的な価値がわかると思うんだけど、出版社としては勇気のいる決断だったんじゃないですか。
後藤:なによりACME Furnitureと仕事をしたかったので。僕たちがそんなに大きな会社じゃなかったことも、出版にこぎつけた理由のひとつかもしれないですね。社内でも僕らのチームは特にマイノリティだし(笑)。けど、今回は弊社の他のスタッフも「可愛い」って言ってくれました。
須藤:一緒に働いてる人たちが認めてくれるのは嬉しいですよね。本って実際こうやって形になるまで価値がわからないもの。だから、面白いと思うものはどんどん作ればいい。この本だってすぐには火がつかなくても10年くらいかけて売れてくような気がします。
田中:僕も当初はすごく不安でした。素人が撮影した写真ですし、まさか後に本になると思って撮影はしてませんでしたから。このL版の写真だけで本当に成立するのかなと。
須藤:今回こういった体裁にしたのはどうしてだったんですか。
後藤:こういうクロス張りのしっかりした本の形にしたのは、本棚にずっと残しておきたい本にしてもらいたかったからですね。それと、クロスや紙の手触りを楽しんでもらいたかったので。ACME Furnitureのソファの上に置いた時にマッチするような感じにしたかったんです。仕上がりは満足できました。
※Two Virgins後藤氏
<前編>はここまで。3社の対談はまだまだ続きます。<後編>は、今後の展開や「THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE」に盛り込めなかった裏話などをお送りします。
※1
ユニークなビジュアルや広告をまとめた洋書。2kiloというタイトル通り書籍の重量も2キログラムとなっている。
※2
Mo-Green代表。雑誌制作に携わってきた経験を生かし、アーカイブ本「My Freedamn!」をプロデュースする。制作業務を見守りつつも、テレビ番組の制作プロデュースを行っている。
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kimura kei
LUKE magazine編集長。 制作会社Mo-Greenで広告制作などの仕事に精を出す傍ら、“anna magazine”編集としてアメリカ国内を取材。いまは男性向け情報誌“LUKE magazine”創刊へ向けて、企画作業の日々。