小さな会社のメディアの作り方 #3
「やりたいこと、伝えたいこと」後編
Contributed by Ryo Sudo
By / 2018.05.09
誰かの伝えたいことを、伝わるべき人々に一番魅力的に伝えることで、
世界中のあらゆる関係性を幸せにする。
僕たちはそのプロセスをビジネスにしている会社です。
けれどその頃の僕はといえば、何かを「伝える」ために存在する会社でありながら、CONTAINERのコンセプトはおろか、自分自身のことをきちんと伝えようとする意思すらありませんでした。
考えに考え抜いて「伝えたいこと」はなんなのか、ということにたどり着くこと。さらにその「伝えたいこと」は、知りたい人が本当にいる内容なのかと自問自答すること。そうしてできあがったコンセプトを、関わってくれる人々に、まっすぐに伝えること。
メディアづくりにおいて最も大切で、最も根源的な作業を、僕はすべて置き去りにしてしまっていたのでした。それからまた自分たちのメディアを作ろうと再始動するまでに、7年以上の時間が必要でした。CONTAINERは、僕にとってそれほど大きな失敗だったのです。
人は自分のことを伝えるのが苦手です。
あれから10年以上経った今も、僕は自分の気持ちを素直に話すことが得意ではありません。
けれど今は、どれだけ時間がなくても、僕がそのメディアにおいてどんなことを実現したいのか。
そしてそれを知ることで、読んでいただける方々にどんなメリットがあるのか。
関わっていただく人々に、そのことをできる限りきちんと話すようにしています。
お客さまのメディア制作の仕事に携わる時も同じです。
そのツールを作る前に、そのお客さまやブランドが伝えたいことの本質はなんなのか。
そしてそれを伝えることで、手に入れた方にはどんないいことがあるのか。
それを深く知るために、制作前に必ずインタビューの時間をいただくようにしています。
「面白いことをしたい、かっこいいことをしたい」。
それは自分がやりたいこと、実現したい欲望であって、
「伝えたいこと・伝えるべきこと」とは違います。
メディアを通して「伝えたいこと」を徹底的に掘り下げること。
そして伝えるべきことをできる限り端的な形にして、関わるすべての人に「伝える努力」をすること。
そうすることで、コンセプトに共感する人々の輪が広がって、ネットワークに属するあらゆる人々が、同じ目的のためにスキルや職能を最大限発揮しようと本気になってくれる。
自分ひとりではなく、関わる人すべてがコンセプトに共感してこそ、誰かの心を動かすメディアができるんだと、CONTAINER以後、たくさんの仕事を通してようやく理解できました。
たくさんの人々がメディア作りに関わっているという事実を常にイメージしながら、そのすべての人に真摯に、何度でもコンセプト「伝える」こと。メディアづくりとはスキルや経験ではなく、結局のところ、情熱、伝達力、共感力、そしてポジティブな行動力、がすべてなのです。
今回は失敗の分析、ということでちょっと後ろ向きな話ばかりになってしまいましたが、今考えるとこの時の失敗があるからこそ、モーグリーンという会社やanna magazineというメディアのあり方をきちんと冷静に考えることができるようになったんだと思っています。
一度自分たちのメディアをつくるという場所から離れた僕たちが、こうしてまたいくつかのメディアを運営している。そこにはまた別の大きな出会いときっかけがあったのですが、それはまた次回以降にお話ししたいと思います。
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Ryo Sudo
anna magazine編集長。制作会社Mo-Greenで数多くの広告制作、企業ブランディングなどに関わる傍ら、"anna magazine"、"sukimono book"などペーパーメディアを中心に独自の視点で日常生活を再編集し続けている。