“安い・ウマい・早い”な町中華。

My Favorite Things #3 / 町中華

“安い・ウマい・早い”な町中華。

Photographer: Junsuke Obi
Writer: Aika Matsuzaki

By / 2021.02.10

「古くてチャーミングなもの」をキーワードに、
今回CREOLMEデザイナー兼ディレクター:工藤三咲さんがお話を聞いたのは
「町中華」を偏愛する、たなはしえみりさん。
おじゃましたのは、吉祥寺のハモニカ横丁にある町中華「みんみん」さんです。





「町中華は、唯一無二。ビンテージの洋服を選ぶ感覚と似ています」
と、町中華への偏愛ぶりを語ってくださったごはんのひと・たなはしさん。
町中華。それは、どの町にも一軒はある大衆的な中華屋さん。
今回はそんな町中華の“チャーミングな話”、たっぷりと聞いてきました。



工藤:たなはしさんが町中華にハマったきっかけはなんですか?
もともと大衆居酒屋が好きでした。今はもう閉店してしまったのですが、渋谷のある大衆立ち飲み屋に衝撃を受けて…。細い路地にある入り口から地下へ降りると、中央の厨房を囲むようにカウンター席があり、そこに人人人! おじさん、OL、大学生、性別や年齢問わずぎゅうぎゅうになりながらお酒を飲んでいたんです。渋谷にもこういうところが存在していたのか〜とびっくりしました。それからというもの、その土地土地の大衆系の飲食店が気になるようになってきて、町に根付いている人が気軽に訪れているような店に積極的に行くようになりました。洋食店、喫茶店、飲み屋、中華屋とか色々。その街のリアルな姿を垣間見られる感じがよかったんですよね。なかでも最近は、町中華にハマっています。昔から、餃子が好きなんですよね。

工藤:餃子、おいしいですもんね!
学生時代は、とにかくいろんな飲食店へ行っていました。カフェや、パンケーキ屋、ラーメン屋にハマった時代もあったり(笑)今は、絶賛自分の中で餃子ブームなので中華屋を巡っていますが、行きつくしたら蕎麦屋さんとかほかの分野を極めるのもいいな、と思ってます。自由に食べたいものを食べていけたらいいな、って。

工藤:町中華だけじゃなく、いろいろ行かれるんですね。例えば居酒屋に行ったら「これだけは外せない」的な、いつも頼む鉄板はありますか?
ポテサラがあればポテサラですかね。店主の気持ちが一番こもっている気がするので。あと、居酒屋へ行ったら店員さんにおすすめは聞くようにしています。お店がイチオシしてるメニューがあるはずなのに、逃したらもったいないじゃないですか(笑)あとは、行く前にネットで調べて、「これが食べたい」という目星はつけて行きますね。

工藤:町中華の場合は?
餃子! 絶対食べますね。これはもう、外せないです。



工藤:一人でも行くんですか?
行きます、行きます! 地方に一人で行って、大衆居酒屋行って、ベロベロになって……なんてこともありました(笑)

工藤:居酒屋に行ったらつい気になる、細かい“フェチポイント”は?
うーん、食器ですかね。食器は結構、店の個性が出るから。欲しくなってつい、Amazonで探してしまうことも(笑)。あ、欲しいといえば、入り口のメニューサンプルも欲しくて、今探してます。餃子はすでに持ってますけど(笑)



工藤:「みんみん」さんとの出会いは?
大学の頃なので、だいぶ前です。以前は三鷹に住んでいたので、吉祥寺の横丁にはよく飲みに来ていて。なんとなく散策していたときに「みんみん」さんを見つけました。ディープな飲み屋街に中華屋が混在している…! って興奮したのを今でも覚えています(笑)お店の看板の丸ゴシック(?)なフォントに惹かれました。



工藤:昼?それとも夜ですか?
昼ですね。昼から、中華飲みってやつです(笑)。ここは瓶ビールがYEBISUだし、昼からリッチな気分になれて最高です。

工藤:頼むものって、いつも決まっていますか?
はい、決まってます! 1 に「餃子」、2 に「あさチャー(あさりチャーハン)」、3 に「瓶ビール」。必ずこのセットですね。ほかのメニューは、頼んだことないです(笑)。コーンラーメンとか、気にはなるんですけど……。



工藤:餃子、おいしそう!
すごく皮がもちもちしてるんですよ〜! 他の町中華だと、薄皮な餃子が多いんですけど、ここの皮は厚めで具もたっぷり。1人じゃ食べられないくらいボリューミーだし、本当においしいです。



工藤:他のものを食べたくても、結局それになっちゃうっていう魅力がすごい。
本当にそうなんです(笑)。ここのジャンボ餃子を食べたくて、みんみんに来てるって人は多いと思います。あさりチャーハンも塩加減が絶妙で! なんか優しくて、唯一無二の味なんですよね〜。

工藤:「みんみん」さんでの、お気に入りの過ごし方は?
過ごし方か〜。特に何も考えてないですね(笑)町中華って、何か目的を持って行くというより、日常の続きでふらっと入るじゃないですか。わざわざ意気込まなくてもOKで、なんならパジャマで来ても注目を浴びないし、すっぴんでも平気。ひとりで来たときは、カウンター席でぼ〜っと厨房を眺めたりして過ごしてますね。そういうところも魅力だと思います。



工藤:「みんみん」さんの一番の魅力は?
まず、看板! 黄暗い路地に煌々輝いている姿が堂々としていて私的にはツボです。あと、町中華では珍しい、中が覗きやすい入り口もいいですよね。
外から中華鍋を振る音もダイレクトに聞こえてくるし、香ばしい匂いに誘われます。あとは、店内が清潔感があって古びていないところ。レトロブルーのカウンター、赤・白のタイルの厨房、食器の色もかわいくて……。レトロなんですけど、逆に最先端な感じ。中華屋って小汚いところも多くて、それも味なんですけど、みんみんさんのレトロフューチャーな雰囲気が好きです。







工藤:町中華のそういった魅力を伝えたくて、発信されている?
そうですね。あるとき、「町中華探検隊」という町中華を記録している団体の存在を知って。そこに入団してから、町中華を若者に発信していこうと思いました。「町中華」という言葉を作ったのもこの団体で、全国各地の町中華の情報を共有する集団なんですけど、関わっていく中で、「町中華」=「消えゆく昭和の食文化」だってことに気づかせてもらったんです。昔からある飲食店がどんどん閉店している…そのことに目を背けてはいけないなと。町中華だけではないんですけど、古くからみんなに愛されているお店にはどうにかして継続してほしいと思うんです。だから、チェーン店に入るより、町の純喫茶に入ったり、町中華へ行ったり。私が発信することによって、若い人が店に行きやすくなって、店も繁盛して…残り続けてくれたらと思います。



工藤:最後に……「古くてチャーミングなもの」の魅力を教えてください。
もとももと私は“レトロな感じ”が、好きなんだと思います。好きだから、かわいいと思うのかなぁ。なんか、80年代とか90年代の色や雰囲気の方がしっくりくるんです。かわいいと思うというか、自分との相性がいいなぁ〜、と思うものなんですよね。



「町中華は、都会の街に存在するオアシスみたい。ほっとするし、店自体がかわいくてチャーミング」と、町中華のチャーミングさについて、熱く語ってくださったたなはしさん。今回訪れたみんみんさんは、レトロな魅力だけでなく、なんてったって、ごはんがおいしい! 昔から愛されているお店を大切にしたいとあらためて思いました。

ごはんのひと/「三度の飯も酒も好き」をキャッチコピーに、編集ライターの仕事をしながら酒飲みOL生活を営む。「餃子倶楽部」「カレー倶楽部」「飲酒倶楽部」など、いろいろなジャンルでの偏愛ぶりを掲げて活動を重ね、SNSなどで、いままで訪れた幅広いジャンルのお店の魅力を発信。メシをテーマにオリジナルグッズの販売も。
IG:@log___log___log
TW:@onakahettanalog

みんみん
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-9
TEL:0422-22-5015
営業時間:金~水 11:00~21:00
定休日:木曜




OTHER RECOMMEND.


他にもこのお店!



1. 珉亭(下北沢)
「下北沢の憩いの場『珉亭』。赤い看板に、世界で三番目に旨いとかかれた暖簾、ドアの隙間から聞こえる中華鍋を振る音…。下北沢といえば?と聞かれたら、誰もがこの店を挙げるくらいの名店。下北沢のドンだぞ、と言わんばかりの門構えがとにかく好き。2階へ上がれば、皆肩を寄せ合って飯を食っている。工事現場のおじちゃん、上京したての大学生らしき金髪のにいちゃん、井戸端会議しているおばあちゃん。いろんな人が当たり前にその場にいすぎて、天国ってきっとこんな感じなんだろうな~とよく思う。おすすめは、やはり、ラーチャン。赤い炒飯がたまらなくうまい」(たなはしさん)



珉亭
住所:東京都世田谷区北沢2-8-8
TEL:03-3466-7355
営業時間:11:30~23:30(※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、営業時間が記載と変更となる可能性がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。)
定休日:月曜(祝日の場合翌日)定休

2. 中華徳大(荻窪)
「わたしがチャーハンにどっぷりハマるきっかけになったお店、荻窪の『徳大』。全国さまざまなチャーハンがあるが、ここのチャーハンは特別。何が特別って、ここのチャーハンは『炒飯』ではなく『焼飯』(メニューも全部焼飯と表記)だから。口では表現しきれないので、ぜひ食べてほしいのだが炒飯ではない別の何かなのである。ほんと、飛び上がるほどうまい(笑)店内は狭く、席に座ると厨房が眺めることができるのだが、ご主人の中華鍋をじっくり観察すればその理由が分かる。中華鍋に具材、調味料、じゃじゃっとかき混ぜて、ご飯を投入…じゅっと焼かれ、宙にはじけ、パラパラ&しっとりに仕上がっていく。ちなみに焼飯には、“らんらん”という名の半熟炒り卵を+200円でのせられるのだが、これがまたうまい。焼飯を注文するならぜひ一緒に堪能してほしい」(たなはしさん)



中華徳大
住所:東京都杉並区荻窪5-13-6
TEL:03-3393-2082
営業時間:11:30~13:30/17:30~20:00(土17:00~)
定休日:土曜(ランチ)日曜・祝日


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