ホームラン記念日

Contributed by LUKE magazine

Pick-up a day / sep.03.2018

親父が買ってくれたウィルソンのバット。
物置を物色していたら、古ぼけたチェストの陰からひょっこりと顔を出していた。
目にした途端なつかしくさが込み上げてきて、思わず手にとった。
ボールの跡がいくつも残る年季の入ったバットを見ていると野球少年だった頃の思い出が鮮明に蘇ってきた。

あの夏の暑い日の出来事。
9回裏1アウト、スコアは2対2の同点。ランナーはナシ。ホームランを打てば、逆転サヨナラのチャンスだ。こんな機会は滅多に回ってこない。
ここでホームランを打てば、オレはヒーローになれると確信したんだ!

なんて余計なことを考えていたら緊張が増してきた。
顔がこわばっていくのがわかる。膝もわずかだが小刻みに震えているようだ。
深呼吸しながらピッチャーに意識を集中させ、恐る恐る打席に立った。

ピッチャーが振りかぶり、投球モーションに移ると、肩にグッと力が入った。腕を振り下ろし、ボールをリリースした瞬間。
なぜかボールがスローモーションのように止まって見えたんだ。

その瞬間にオレは打てると確信した。思い切りスイングすると
「カキーン」と気持ちの良い金属音が鳴り響き、青空に勢いよくボールが飛んで行った。
あわててバットを放り投げ、全力で走り出した。ボールを目で追っていると、スタンドにボールが吸い込まれていくのが見えた。

まさか! とは思ったが、本当に勝ち越しホームランを打ってしまった。ホームランなんてこれまで打ったことがなかったから、実感が湧くまでしばし時間がかかった。
チームに大歓声で迎えられ、オレは一躍ヒーローの座に輝いた。

一瞬の出来事が一生の思い出になる。
初めてのホームランを打った日は、オレのホームラン記念日だ。
あの日感じた高揚感を心に留めて大切にしていきたいと思ったよ。

More later, my friend.

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9月3日はホームラン記念日

1977年のこの日、後楽園球場で巨人の王貞治選手が通算756号ホームランを打ち、それまでアメリカ大リーグのハンク・アーロンが持っていた世界最高記録を更新した。

2日後の9月5日に、政府は初の国民栄誉賞を贈り、その栄誉を讃えた。王選手は引退までに868本のホームランを打った。

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