anna magazine presents<br>『All the Streets Are Silent』<br>Special Booklet<br>制作 & 映画公開記念!<br>スペシャルインタビュー vol.1

anna magazine presents
『All the Streets Are Silent』
Special Booklet
制作 & 映画公開記念!
スペシャルインタビュー vol.1

Contributed by anna magazine

Pick-up a day / 2022.11.17



2022年10月21日(金)から公開されている、ドキュメンタリー映画『All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合』。

1980年代後半から90年代にかけて、ニューヨーク州マンハッタンのダウンタウンでは、ヒップホップとスケートボードという2 つのサブカルチャーが出会い、後に巨大なメインカルチャーにまで発展した。NYの人気ナイトクラブ Mars、ヒップホップグループ Wu-tang Clan のデビュー、スケートブランドSupremeやZOO YORKの誕生、ラリー・クラーク 監督映画『KIDS/キッズ』公開。この時代のスケーター、ラッパー、DJなど不良と呼ばれていた若者たちの生き様が今では最も影響力のあるストリートカルチャーを作り上げた。

anna magazine編集部が映画『All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合』のパンフレット制作を手掛け、各上映館にて大好評発売中です!B4サイズの迫力あるビジュアルブックと、ジェレミー・エルキン監督や映画にも登場する伝説のクラブ「CLUB MARS」の元オーナー・Yuki Watanabe氏へのインタビューなどが掲載されたA4サイズのインタビューブックが挟み込まれた豪華仕様。

今回は映画公開を記念して、パンフレットにも掲載されている〈へクティク〉創設メンバーであり〈XLARGE〉デザイナー江川芳文のインタビュー“スケートとヒップホップの自由が重なった瞬間”を公開します!

是非、劇場にお越しの際はパンフレットにも注目してください!
*パンフレットのお取り扱いについては各劇場にお問い合わせください。




プロのスケーターとして活躍、80年代からスケートボード、音楽、アパレルなどにも深く精通し独特な視点を持つ江川さんはこの映画を観てどう思ったのだろうか?
「この映画はスケートボードとヒップホップの話題が中心ですが、当時カリフォルニアのスケーターがニューヨークへ行くと全身ラルフローレンになって帰ってきたんですよね。全身POLO!みたいな。まずその感じを思い出しました。その頃から90年代に入ると、少しブカブカかヒップホップに寄ったファッションになって、スケートシューズのタンがだんだんガンダムみたいに分厚くなった。それは完全にヒップホップ文化から来ているんじゃないかな?映画では87年からの出来事とあるけれど、使われている映像とかって割と後半の年代だと思うんです。だから、それより前のSteven Calesがラルフローレン一色で帰ってきたのが、そのシーンではたぶん一番早かったんじゃないかなと思います。それがMenaceの人たちに伝染した。Stevenはボス的な存在でしたから」。いきなり江川さんならではのパースペクティブで話が進む。「僕はどちらかというとスケート側なので、ちょっと観ている方向が元々違っていて。この映画ってEli Morgan Gesnerが中心に物語ができているんだと思うんです。僕が当時のシーンを語るなら本当は出演していて欲しいなと思う人が、出演していなかったりする。例えば当時のニューヨークってFUTURAとかSTASHたちがすごく活躍していたし。このストーリーの周りには必ずグラフィティライターたちが居たはずなんですけれど、でもそのことについて触れていない。Eliのストーリーではまた違った視点なのかもしれないなと。Vinny Ponteが出演していて、彼はSTASHとすごい仲良かったですしね。だから本当はいろいろな広がり方もできたんじゃないかなって思っちゃって」。江川さんならではの視点が忖度なくとても面白い。



ニューヨークのスケートスタイルについても聞いてみた。「今でこそ西、東のスケートスタイルってわかりにくくなってしまっていますが、どこでも滑っちゃうという感じ、その環境に合わせてスケートボードでどうクリエーションしながら滑るのか、ウォールウォークとかグラインドしてつなげてテールで、みたいな感じはニューヨークとか東の人の方が早かったんじゃないかなって思います。スケートボードのスタイルを街中で構築していくことをニューヨークの人たちが見せてくれた。93年くらいにシーンがSteven Calesを通じて東から西へ流れていったんですよ。それで東と西が仲良くなったって僕は思っています。裏ボスの中の裏ボスは彼ですから間違いなく」
『ZOO YORK』が登場したときは江川さんはどう感じたのだろうか。
「わっ、ニューヨークメイドだ!って感じでしたね。『Supreme』もそうでしたけれど、ニューヨークへ行かないと手に入れられない物でしたし。『ZOO YORK』のTシャツも『Supreme』で買っていましたから。『MIXTAPE』ってやっぱり異質でしたよね。ラッパーをスケートビデオに出すってことが。あの頃はスケーターがそれぞれ自分のパートだけを滑っていて。トリックなんかもすごくて、アイツのルーティーンがすごかったなんて話題になるのが普通なのに。『MIXTAPE』で僕が衝撃を受けたのはラッパーのMethod Manが楽しそうにラップをしている姿だったんですよ!スケートビデオなのに。もちろんDanny Supaも好きですし、Harold Hunterも頑張っているな!って感じだったんですが、みんなで楽しそうにラップしている彼の姿に一番鳥肌が立ちました。さらにそこにBusta Rhymesが入ってきてまた楽しそうにラップしている。ノリノリだったじゃないですか。本当に自由なんですよね。僕たちはMTV世代なので完成された物しか見ていなかったんですよ。だけどあんなに楽しそうにやるヒップホップを生で見られるなんて本当に衝撃だったんです。フリースタイルの即興であれだけのメロディーが作れて本当すごいって。ニューヨークってこれだなって思いました。音とスケートボードが入ってくる街。ヒップホップの自由とスケーターの自由が重なって同じライフスタイルだった、というところが上手く描写されていたのがこの映画を観て嬉しかったところですね。なんだか答え合わせのようでした。僕たちが日本でやっていたのと同じなんですよ。バックパック背負ってスケボー持って汗だらだら垂らしながら、渋谷のCaveに行ってたみたいなのが。House Of Painとかも聴いていましたしね。Jefferson PangはHouse Of Painの仲間でしたから。アイリッシュ系の。僕的にはEliよりもJeffersonの方が当時のシーンのキーパーソンだと思っているんです。そして何度も言いますがSteven Calesが裏ボスですね。しかもあまり表に出てこなくて、みんなにもあまり知られていないし。みんながグリルスを付け始めたのも彼のまねですから。あくまでも日本人の僕の意見をいろいろ語ってしまいましたが、逆にニューヨークの人たちがこの映画を見てどう感じたのかとっても気になりますね」


Text Taku Takemura

《PROFILE》
江川芳文
『Hombre Niño』ディレクター、『XLARGE』デザイナー。15歳よりプロスケーターとして活躍しながら、裏原ストリートカルチャーを牽引。『HECTIC』、『CARNIVAL』を経て、現在に至る。老舗チーム“T19”に所属。



information
無法地帯と呼ばれていた1987年のNYダウンタウン。そこには自分たちの遊び場所を求めて、ストリートにたむろするスケーターの不良少年たちが居た。彼らは88年、クラブ・マーズの開設により、それまで距離のあったヒップホップの連中とも積極的に関わっていく。この多種多様な交流の場をきっかけに、人気スケートブランドのズーヨークやシュプリームも立ち上がった。やがて95年、地元スケートキッズのリアルな生態を捉えた映画『KIDS/キッズ』が社会現象級の大ヒット。こうしてNY流儀のストリートカルチャーは一気に世界へと拡大するのだが……。

10月21日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー。
『All the Streets Are Silent』公式サイト
https://atsas.jp/



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