“Travel is ENCOUNTERS” (アリゾナ篇) #14

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / apr.22.2019



幌馬車さんとお友達
1枚目State road 86号, Sells近く, Arizona; by T.T.Tanaka 

150年前?、来る日も来る日も幌馬車(covered wagon)たちはお日様と競争しながらこの砂漠を西へ西へと土煙をあげていたことだろう。カリフォルニアの金鉱をめざしてね。

その幌馬車君を四駆のダッシュボードに置いてみた。砂漠の対向車は土煙はあげないけど昼間でもまあるくライトをつけて過ぎてゆく。

今朝から何回もあのおじさんの笑顔が浮かんでいた。このまんま砂漠にさよならできずにブレーキを深く踏んだ。リアゲートを跳ね上げて鞄にしまっておいた幌馬車君をひっぱりだした。幌馬車君は何日か前のヤードセールのキッチン雑貨たちの中に駐車していたのだ。







2-4枚目 Ehrenberg, Arizona; by T.T.Tanaka-

幌馬車君のこの前までのお友達はね、

まずは熊さん。アメリカ大陸最大の哺乳類、インディアンたちの畏敬の生き物。かわいく体をひねっている。眠そうな子熊もいるね。
トナカイちゃん。そう。頭のてっぺんまでクリスマスしている。

あら。これらぜんぶ塩・コショウ入れじゃん。季節とか、気分とかで、入れ物、かえていたのかしら?置物としてもかわいいから奥で寝ていないで明るいところで顔みせていてよね~。食事が美味しくなるもの。

For sale。。
素敵なひとたちのところにもらわれていってね。
本当は僕、全部、ほしいんだけど。。。










“I am a guitar player, too.”
Ehrenberg, Arizona; by T.T.Tanaka

にっこりスマイル。ワンちゃんと一緒に素敵でしょ?
Pastorさん。この人がヤードセールのおじさん。実は、神父さん。
人口1400人余りのEhrenbergという小さな町の教会を彼は何年も一人で見てきたのだ。
今は州をまたいで走るハイウェイ10号が、その前は鉄道が、さらにその前はコロラド川の船がメインの物流手段だったのだ。150年前コロラド川沿いの鉱山の町として栄えたようだがその面影は全くない。
でもPastorおじさんの顔はやさしい。
「宗教宗派は関係ないんだ。人を思いやる気持ちさえあれば、だれでもきて集まってお話しして歌も歌うし演奏もするんだよ。中見ていく?」
案内してくれた質素な建物の中は20人も長椅子に座ればいっぱいのスペースだった。
「僕はギタープレイヤー。あれはCDプレイヤー(へへ。。)。 うーん、ピアノプレイヤーもいるといいんだけどね。。 」
「この 犬、M.J. は人懐っこくてグッドドッグ。地面においてやると、虫見つけるの大好きなんだ。。 」





Near you!
Ehrenberg, Arizona; by T.T.Tanaka

あ、日本からなんだね? この先20kmくらいのところに日本人たちが作ったShrine(神社!)があるよ。
そうそう、よかったら裏でヤードセールやってるからみていかない?」

外にも小屋の中にもあらゆるものがならんでいた。フォーク、ナイフ、スプーンからお皿、ランチョンマットから、秤、目覚まし。。。 そして塩・コショウ入れの動物君たち。
その動物君たちの中で駐車中の幌馬車君がキラリと光っていた。
幌馬車君を手にして10ドル紙幣をお渡しした。

お別れしようとしたら、
「あ、そこにある “NEAR” もっていきな。いいよ。」
「え、いいんですか?」
「うん。持って行って、持って行って。」

一文字ごとにお野菜がささっている。アルファベットと関係ないみたいだけど。
高さもそれぞれに、お野菜が葉っぱ付きでイキイキしていた。

ありがとう~。ほんとうにありがとう~。
お願い。おじさん、元気でいてね。ワンちゃんもね~。
I will be NEAR you! 

新聞紙でくるまれた幌馬車君とNEAR君たちを鞄の洋服の間にしまってエンジンのスタートボタンを押した。ズザっと砂をはむ音が後ろでした。。

おっと。サンセットまで後一時間だ。
急がなければ。。
後ろ髪引かれるとはこのことなのだろう。。







「みずみずしく育つ」
Poston, Arizona; by T.T.Tanaa

あんなにまぶしかった空が青く深くなっていた。
視界に今まで砂漠で出会わなかったパームツリーが目に飛び込んできた。
古い民家の屋根も見える。急いでいたのにハンドルを切り未舗装の道路に入って止まった。
しっとりした空気が流れてくる。
パームツリー君は太く巨大だった。樹齢50歳にはなっているよね。反対方向を見ると、あららのパームツリーちゃんはスカートはいてすすすっと立っている。
このパームツリーたちは昔、人が植えたんだね。
それに目の前一面に真っ白な点々。
わー!これって綿花、コットン?
裏手には、先祖たちがつくった灌漑用水路がコロラドリバーから砂漠の中、ここまで届いていた。 すごいね。水があると、人々も住めるし、綿花もパームツリー君たちも砂漠の中で元気に育つのだ。



白ーいふわふわがころんころん。。
風が砂漠をわたってくる。
思わず手にとってしまった綿花。
なんとやさしいこと。ふかふか、ふわふわ~。
このまま綿花を体中にまとってふんわりふんわり明日の朝まであたたかーく眠ってしまいたい。。
100年前まで露天掘りの銅産業とともに綿花栽培はアリゾナの二大産業だったらしい。
銅は引き続き掘る場所を変えながら今でも盛んだけど綿花農業はすたれてしまった。
もうこの畑もほとんど収穫していないみたいだった。。 人々の声も足跡もなく、鳥の声が一日の終わりを告げていた。







「タイムマシーン」
 Poston, Arizona; by T.T.Tanaka

砂漠は不思議なタイムマシーン。
転がってきた綿花。灌漑用水路。パームツリー。教会。
街灯で休む鳥たち。
暮れゆく空の渡り鳥。
家路を急ぐヘッドライト。
遠くの山。雲の合間に消えてゆく太陽。。

いろいろな時がこの目の前にめぐっている。
しばし、茫然。。。





おっと・・・・ 日が沈んじゃったよ~~。
いかんよ~・・・・ 今晩とまるとこ、どこどこ・・?
う・・? Space Age Lodgeって書いてあるよ。。。 今晩は宇宙にいっちゃうの?
あ、でも、まず、着いたらコロナビール飲みに行くんだもんね~。
えーっと、そうそう、今晩はフラットブレッド(flat bread)サンドイッチ食べてみるんだもんね~。ふふふ。


砂漠でモフモフ。。

子供の時、パジャマ着がえたばかりなのにベランダで空をみあげて、北斗七星を探していたことを思い出した。
あちこっちみながらごつごつベランダの柱にはぶつかっていたし、急に吹いてくる風は冷たかったけど。。

そうなんだね。そのパジャマには綿花がしっかり入ってやさしく僕を守っていてくれたんだね。
夢をみていたときには綿花のお布団が体を包んでくれていたんだ。

まさかこのソノラン砂漠で綿花に出会うとは思わなかった。
ふわふわ、モフモフ。地面をころころ転がっていた。
この感触にはみんなうっとりしてしまう。
人類が綿花を求めて色々な歴史が展開されたこと。。初めてその理由が、アリゾナの砂漠の中でわかった気がした。。

砂漠の中を掘って掘ってコロラドリバーからつなげた灌漑用水路。日本人二世たちの労力も込められている。
歴史は流れる。綿花を巡る環境も激変した。
地方の人口減少は日本だけじゃない。アメリカも殆どの地方では若者は減り人口減少が激しい。

そういえば、あの教会のおじいちゃん、綿花みたいだったね。
彼の後ろには色々な人生があったと思うけど、まわりにはもう沢山の人たちはいないけど、かわらないやさしさだったと思うのだ。
初めて会った外国人の異宗教の僕にもモフモフだったもの。

これからもやさしい気持ちを強くもって生きていこうっと。モフモフに。

フォト、エッセイ by T.T.Tanaka

イラスト、ロゴデザイン by 瀧口希望

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