“Travel is ENCOUNTERS”
台湾篇 #56
Photos, essay by T. T. Tanaka
Local / 2022.11.24
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
わー、たまらない 芳しい香り。
オレンジとサクランボとリンゴがワッフルの脇に。そして、アイスクリームトッピング。その上にピョーンと跳ねてる猫ちゃんクッキー! トロッとかかっているのは棕櫚糖(椰子(ヤシ)糖)(Coconut sugar)シロップ。 ワッフルにメープルシロップをかけるのも大好きだけど、これはキャラメルのような味・香りがして、とろけるようなんだけどべとつかず後味もサラっとしているんだ。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
お砂糖はこんなブラウン。コーヒーにも少しいれると甘い香りが一緒にたちのぼって至福の時・・・。
ここは台湾の屏東(Pingtung)。 台湾南西の海岸の大都市、高雄から20kmほど東に入った町。 地元のアート大好きな30代カップルに素敵なエリアがあるから是非来て~と連れてきてもらった。そこで入ったワッフル(鬆餅)が人気のお店。このキャラメルのようなフレーバーの棕櫚糖(椰子糖)(Coconut sugar)は花の根元の切り口から集めた蜜をじっくり煮詰めたもので昔からあるローカルの甘味。旨味が口の中で広がって美味しい。それに低GIで血糖値があがりづらいようで注目されてきている。
実は台湾にはお砂糖の歴史が刻まれているんだ。ここは熱帯。しかも乾期に水が圧倒的になく、土壌も耕すには石ころが多く適さず・・ また以前は収量も低い地元サトウキビだったそうで、砂糖輸出で経済的に発展する希望を叶えることがなかなかできなかったとのこと。それが1900年代にとある日本人のひらめきと地元先住民たちの努力でサトウキビ収穫が劇的に向上し同時に人々の水源確保が実現して生活レベルが上がったというドラマが・・・。(※興味ある人はコラムの最後に補足あるので見てね~)
昔からの椰子(棕櫚)が今でも育つ屏東エリア。若い人たちの間でその椰子から作ったお砂糖が少量なんだけど見直されている。ローカルならではの素敵なスイーツ。お砂糖にくっついてきたクッキー猫ちゃんも元気そうでしょ?
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
有機棕櫚糖・・・とかかれている Organic palm sugar
ゆったりと古い建物が残っているエリア。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
店を出るとこんな感じでヤシの木が・・・ 熱帯なのよね。
風がくると葉っぱが大きく動いてすれる音が響いてくる。ヤシの実が見え隠れして楽しい。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
歩道の壁のこんな絵も目に飛び込んでくる。
え、あ、これ、オレンジだよね?
そういえば、さっきのワッフルに添えられていた・・・
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
道路標識の向こう・・・屋根の上に猫ちゃんが・・・
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屋根の下はバイクも結構往来するんだけど・・・、熟睡・・・。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
あら、ごめん、そろーっと寄ったんだけど、起こしちゃった・・・
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
よろよろ起き抜けに歩き出して・・・
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
あらーーーーー
大あくび・・・
うん? さっきのワッフルのトッピング猫、
まさか君がモデルじゃないよね・・?
あの子は元気そうだったし。
あ、そんなに大きく口あけなくてもいいと思うんだけど・・・
“日本家屋が残る青島街(Qingdao)”
この屏東は、屏東県の唯一の市。半屏山の東にあるところからの名前で20万人ほどの人口。 先住民たちが住むエリアに漢人たちが入植。日本統治時代(1895-1945)の1920年には日本陸軍屏東飛行場が建設された。その軍人の宿舎群があったのがここ青島街(Quingdao)。和式、和洋折衷などあちこちに残っている。今、このエリアはちょっとした人気のアートエリアとなっているんだ。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
ヤシの木のそばのこの屋根、懐かしい感じ。日本では昭和の古い建物は結構少なくなってきたけどここでは明るい日差しをあびながらしっかり残っている。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
綺麗に修復された家屋。
青空の下、直線と曲線が混ざって美しい。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
古い当時の建物のいくつかは、これから修復されて新しい役割としてよみがえるのか、整地して再開発されるのか・・・ 先祖たちがかつて住んで活動していた歴史を想うと複雑な気持ちになる。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
(今、この建物が残っているかどうかわからないんだけど) 玄関のアプローチや縦長の窓など美しい。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
この窓の白とグリーンの枠。
中の細い白と赤の横線は、多分、回転式で窓を室内で閉めると、右のように白と赤の帯になるんだと思う。なんて素敵なデザインなんでしょう。
ヤシの木の葉っぱの間にこの窓がみえるだけでついにっこりしてしまいそう。
青春時代の思い出に残るひとたちもいるでしょうね。
“心にPeaceを”
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
交差点。
あら、これ、貼り紙。
えーーっと・・
あ、迷い犬を保護しているのね。リーシュの特徴も写真にしてある。
預かっている人が手作りでポスター作って呼びかけているんだね。
早く見つかって飼い主さんのところに戻ってね~
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
と、交差点脇の公園を横目に見て過ぎようと思ったら、トコトコトコとワンちゃんが・・
あらー。駆け寄ってきて私のところまできてクンクンとすり寄り。
後ろにある遊戯具でおじさんが体操しているんだわ。手を振ったらあわててごめんなさい~っと来てくれた。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
こちらの交差点でも、また、ワンちゃんに遭遇。夕方になってきてお散歩タイムね。ジャックラッセルちゃん、おじさんを引っ張る引っ張る。その短パンおじさんとご挨拶。你好(ニーハオ)日本から来たの ぐらいしか話せなかったんだけど、カメラを持っている僕を見て、にっこり。あっちあっち撮るといいよ~(ってことかなと思った)って示してくれた。何があるんだろう?
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
あ、あれかな。
ヤシの木の間に見えてきた細長い建物。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
まあるい細長いドームみたいな上に尖がった塔。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
あ、鐘が下がってる。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
広い空、雲の下、教会があらわれた。
ブーンと走ってゆくバイクが往来。
ちょっと歩いているだけでかわいい教会にも結構出会えるんだ。
そろそろ駅に戻らなくっちゃ・・・
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
急ぎ足で学校の横を歩いていたら、えっ!
シルエットにびっくり。
ロ、ロボット?
思わず前にまわってみたら・・・
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
あらー。なんと。
にっこり笑顔のロボット。鉄製かしらね?
手に持っているのはクローバーかしらん・・?
左後ろに見えているのは広告のアドバルーン。
夕方が近くって、ほんのり反射する光が赤っぽい。
ゆるーい口元。みんなをにっこり見守ってくれている気がする。
この子に出会えただけでも幸せ~ 穏やかな気持ちになれたよ。Peaceをありがとう。
“祈り”
空にしっかりシルエット。
龍ですね。髭も見事。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
駅のすぐ近くにある慈鳳宮。道教の女神、媽祖(天上聖母)を祀る大きな廟で1780年に建てられた。お祈りに来る人が絶えない。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
入口でしっかり守る魔除けの「狛犬」。
大きな存在感よね。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
女神の傍らで何か大切なものを運ぶ力強い足の鹿。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
ずらーっと下から上まで貼られた金箔。お祈りの空間の中、まぶしい金色と赤い色が目に飛び込んでくる。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
これは100kgに達する筆の先端。学問の神様、文昌帝君の御利益があるとされる天下第一筆。筆をなでると福をもらえるとシーズンには多くの学生たちが長い列を作るらしい。日本にもそういうところがあるよね。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
木魚は陰を象徴するとのことだけど、この木魚は大きかった。
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
屏東(Pingtung),台湾;by T. T. Tanaka
きらきらの光の中、御線香のかおりがただよう。
めいめいがひざをつき頭を下げて、それぞれの祈りを真剣に捧げてゆく。
そしてすっと姿勢を正して街へもどってゆく・・・
“Sweet Heart Taiwan”
スイーツは笑顔を作り、幸せな気分にしてくれる。やっぱり甘味を味わいたいというのは本能的なもののような気がする。人が生まれて最初に覚える味覚で、逆に死ぬとき最後に感じることのできる味覚と聞いたことがある。誰にとっても大切な存在だ。だからこそ甘味をめぐって様々な歴史やドラマが展開されてきたのかもしれない。新大陸やカリブでのサトウキビ(Sugar cane)プランテーションのことが頭をよぎったけど、ここには全く違うドラマがあった・・。
台湾に棕櫚糖(椰子糖)(Palm sugar)というのがあるとは知らなかった。熱帯ならではのお砂糖。キャラメルみたいに芳しくさらっと旨味があってワッフルと相性よく美味しいとは・・・。自然に頬がゆるんでしまった。それに若者たちが昔からの食材を大切にしているのが嬉しかった。
そして町には祈りの場があちこちにあった。
歩くと次々遭遇する寺院や教会・・。
御線香の香りの中で、すっと真剣な姿勢でお祈りをささげる姿があった。
朝早く、また、夕暮れ時や夜訪れる姿もあった。
祈りを終えて出てゆく人たちは入ってきたときよりも姿勢が美しく見えた。
生きてゆくための静かなる力。
心に宿るPeaceがあってこそ日々の色んな感情を味わうことができるのね・・。
そんな大切な心のPeaceというものをSweet timeとともに教えてくれた屏東。
かわいいクッキーの猫ちゃん、大あくびの屋根上の野良猫ちゃん、公園で走ってきたワンちゃん、おじさんをひっぱっていたジャックラッセルちゃん。
ありがとう。
えーっと、もちろん、ワッフルのお店にまたいかなくっちゃね。今度はパンケーキにしてみようかな~
Photos, essay by T. T. Tanaka
※ 2022年より前の取材を元に書いております。現地のナビゲートや色々な情報は大塚典子さん、飯田淳さんにご協力いただきました。
※)台湾のお砂糖と日本;日本による台湾統治時代の1901年に新渡戸稲造が同じ岩手県出身の後藤新平を台湾の総督府技師として招聘。後藤は農業が国造りの根幹でそれは台湾においても同様と思っていた。特に台湾ではサトウキビをベースとした製糖業を発展させることが極めて重要だと考えた。当時、お茶と製糖と樟脳が台湾の3大輸出産業。しかし、台湾のサトウキビは茎が細く低収量でそれを改良した品種に。それに屏東エリアは小石まじりの固い土壌で雨期には水に漬かり、乾期には飲み水にも枯渇する水不足の干ばつ地域。そこに農業土木に詳しい鳥居信平氏が1914年に赴任。落差が激しいこの地域の山や谷を2年にわたって歩き続け調査を行った。絶望の中、ふとしたことで湧いている伏流水に気づく。乾期で地上がカラカラで水の流れが見えなくても川床下の伏流水が海抜15mでも湧いていた。故郷袋井と同じであったことから伏流水をためることで水確保ができると思いついた。生態系に影響が少なく動力も不要で地元住民の狩場や漁場の清流もそのままでエコで工費も維持管理も抑えられることがわかった。2000ヘクタールの農地開墾でサトウキビが大規模で栽培できるようになった。先住民たちへの安定的した灌漑用水供給も初めて可能となり生活向上に大きく寄与できたとのこと。100年経った今でもサステナブルに乾期でも農業用水を供給し続けている。この伏流水を貯めるダム「二峰圳」は今でも地元で大きな存在であり続けている。「水の奇跡を呼んだ男」(平野久美子書, 産経新聞社刊)
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T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。