ネブラスカノート

ネブラスカノート

Photos, essay by T.T.Tanaka

Local / 2021.03.26



Nebraska(ネブラスカ)州は位置的にはアメリカの大陸の内陸の中西部に位置する。
東は大きなミズーリ川に接して、隣のアイオワ州に、来たはサウスダコタ州、西は以前にコラムでも連載したワイオーミング州とコロラド州に、南はカンザス州に接している。グレートプレイン(大平原)といわれるエリアで、大きな山は西をのぞくと殆どなく起伏はすごく少ない。西のロッキー山脈には一番大きな東の都市、オマハ(Omaha)からは1600kmほども離れている。州の大きさは日本の本州よりやや小さい20万㎢。緯度的には北緯40°~43°なので秋田県北部~北海道札幌ぐらいのところになる。
日本からは西海岸の主要都市か、シカゴなどに着いて、乗り換えればワンストップで最大都市のオマハなどに到着できる。オマハはシカゴとコロラド州デンバーの中間点くらいになる。宿泊に困ることはまずないが、移動はレンタカーが必となる。地形的にも運転がタフなエリアはほとんどないと思う。



ネブラスカとは先住民のひとつの言葉で静かなる水という意味。起伏の少ない大平原を西から東に大きな三つの大河が流れている。ノースプラット(North Platte)川とサウスプラット(South Platte)川が合流するプラット川はその中央を流れ、ナイオブララ(Niobrara)川が北部を、レパブリカン(Republican)川が南部を流れている。これらはミズーリ川に、その先にはミシシッピー河に流れ込み1400㎞離れたニューオリンズでメキシコ湾に到達する。全米でも有数のカナダ鶴など渡り鳥が集まるところ。美しい川が流れている。気候的には厳しく大きな木が育ちづらい。東側は氷河だったところでびっくりするような哺乳類全身の化石が目の前にいっぱい出会えるところもある(Ashfall Fossil Beds)。アメリカ大陸にサイや象やラクダがいたなんて!

人口は全州で180万人ほどで、人口密度も1㎢に9人ほど。一番大きな町のオマハで50万人。1848年に西海岸のゴールドラッシュまではほとんど注目されなかったエリアで、1860年に先住民たちを強制移住させ広大な土地を農地開発のためにヨーロッパ系開拓者に無償で権利を認めていった。こういったところからネブラスカでは全米でもドイツ系、アイルランド系、チェコ系、スウェーデン系などの割合が高い。この頃、有刺鉄線や風車、鉄製鋤が発明されて牛が広大な土地での放牧が盛んになっていった。1860年代にユニオンパシフィック大陸横断鉄道が敷設されてこの動きに拍車がかかっていった。大都市に成長していったオマハには食肉加工、鉄道関係の労働のために南部よりアフリカ系住民が移り住んできた。かつては厳しい気候から不毛の大地といわれたが、自然に打ち勝ち、ネブラスカの中西部はもともと肥沃な土壌であったこともあり、農業も盛ん。牛肉、豚肉、トウモロコシ、大豆などの生産でトップレベルの生産を誇っている。
現在、東海岸ニューヨークから西海岸サンフランシスコまで4600㎞のインターステート高速道路(州間横断道路)80号が東西に横断している。
ただ、ネブラスカは日本同様、都市集中と地方の過疎化が進んでいて、ネブラスカの都市の90%くらいが人口3000人以下。郵便局が閉鎖されたり、学校の統廃合が目に付く。
大学はオマハやリンカーンに集中している。宗教は90%がキリスト教と言われている。

ちなみに、世界最大の投資会社ウォーレン・バフェットが会長を務めるバークシャー・ハサウェイ社はオマハに本社がある。ネブラスカ州出身者の中には、かつての大俳優フレッド・アステアやモンゴメリー・クリフト、ヘンリー・フォンダ、マーロン・ブランド、ジェームス・コバーン、ジェイミー・キング・・・など多くの俳優が・・。サイレント映画のスーパースターだったハロルド・ロイド(ロイド眼鏡の原点ね)も。また、2013年にはオマハ出身の映画監督アレクサンダー・ペインの「Nebraska ふたつの心をつなぐ旅」で主演ブルース・ダーンがカンヌで主演男優賞をとっている。また、1982年にブルース・スプリングスティーンがNebraskaというアルバムを出し全米トップ10となっている。

州の愛称は、Cornhusker State(トウモロコシの皮むき)といわれる一方、Equality before the lawを掲げている。

州の鳥はニシマキバドリ(Sturnella neglecta)、州の木はコットンウッド(Cottonwood)(ヒロハハコヤナギ)。いずれもコラムに登場してきます。

大陸ありての大平原。そこにはアメリカの歴史が詰まっています。そして、あふれる自然の風景といきものたち。日本では味わえない感覚がいっぱい。是非、機会をみつけて訪れてみてくださいね~。

By T. T. Tanaka

イラスト、ロゴデザイン by 瀧口希望


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