旅はENCOUNTERS (ワイオーミング篇)#19

旅はENCOUNTERS (ワイオーミング篇)#19

Photos, essay by T.T.Tanaka

Local / sep.17.2019



Welcome Bear
Devils Tower, Wyoming; by T.T.Tanaka

あらー。あっという間にホテルの空部屋がなくなっていく。日本を発つ前、スマホ画面を見ながらちょっとあせっていた。Devils Towerから20分くらいの近さだから週末やバケーションは満杯なのかな。。
リストに出てきた “Sawin’ Logs Bed and Breakfast” 。
な、なんだろう。Sawin’って。のこぎりのこと? Logsっていうから丸太小屋かな。
写真にちらっと緑の草原が見えてここにしようって決めたのだった。
Devils Tower(ひとつ前のコラム#18)を出発して大草原のゆるーい起伏を南に向かう。畑と牧場がずーっとつづいている。
あった~。あった~。B&Bの看板。
道路から200mほど奥に入り、ジャリっと四駆を止めた。
あらま、すぐ横につぶらなひとみのクマちゃんが立っている。
国旗もってWelcomeしてくれている。
かわいい。
耳やお鼻ブラックで、口元はキリリと結んでいるね。
鋭い爪は見せていないけど。
あ、そうか~。Sawin’はチェーンソーのことだったのね。
のこぎりで木彫りをつくるチェーンソーアート。





Devils Tower, Wyoming; by T.T.Tanaka 

Great plain、大草原。
開拓時、道なき大地に入り込んだり移動するには馬が貴重な足だった。当時はもちろんブルドーザーや耕運機などないから、先輩たちは人力と、馬や牛の力をかりて来る日も来る日も頑張った。木を伐採し、大きな石をのぞき、整地して牧場や畑にしていったんだね。しかも雪が降り積もる冬は長いから、限られた期間での作業は必死だったんだ。気持ちのいいなだらかな斜面に見入っていると人っ気がないし、つい、人々が流した沢山の汗のことも、それに、ここが標高1000m以上だなんてことも忘れてしまっている。
森の向こうに吹く風の声、近くの草をわたり頬なでる風の音。牧草は元気よくキラリキラリ反射する。ゆるーくカーブした道路をピックアップトラックが一筆描きのようにすすーっと流れてゆく。大草原のみんなが合奏しているみたい。





Devils Tower, Wyoming; by T.T.Tanaka

あ、ごめんごめん。草原に見とれていて君がデッキにいるのに気づかなかったよ。こっちにかけてくる足音と鼻息で今、気が付いた。
ラブラドールちゃん、足元に。車までお迎えに来てくれたんだね。
あ、ありがと、あー・・  べろーっとなめられちゃったよ~。
あらら。入口の看板に描かれてるのはあなたなのね。美人のLady。素敵よ。
湯気が立っているコーヒーのすぐ前にあなたのかわいいお鼻~。
もうほっこりうれしい。



Devils Tower, Wyoming; by T.T.Tanaka

お迎えしてくれたTwilaさん。
「お疲れ様~。よくこんな田舎に来てくれたわ。ありがとー。日本からは初めてよ~。」
もうはじけるような笑顔で迎えてくれて、僕は嬉しいのなんのって。Tシャツも素敵。Bloom baby bloom. ちっちゃいお花を咲かせましょうってことかしらね。



Devils Tower, Wyoming; by T.T.Tanaka

敷地は、のこりぎりワークでいっぱい。ほら。このクマちゃんも。縦書きでwelcomeしてくれてる。これ、結構、大きい木でしょ?
目と口元がかわいい。
ぎゅーっと抱きしめたくなるね。
あ、Bear Hugってそういう意味なんだって~。



Devils Tower, Wyoming; by T.T.Tanaka

あらま、ここにはフクロウちゃん。
黄色目でにらみきかせているよ。
泊っている人を守ってくれているんだね。狛犬みたい。
一瞬ドキっとしたけど、頼もしい。それに、ここにはフクロウくんが普通に住んでいるんだって。いいとこ来たな~。 うれしい。
ぐっすり休める。zzzzzz。。。



Devils Tower, Wyoming; by T.T.Tanaka

目覚めてラウンジに降りてゆく。
パンの焼ける香が朝にうれしい。
キッチンのTwilaさんと世間話。
ご主人のRoyさんと二人でここの住人に。ジュニアはもう独立、B&Bを始めたときご主人がチェーンソーで作品を沢山つくったんだそう。
「最近はね、彼、耕運機とか農機具の商売でいそがしくなっちゃって走り回っているから作っていないのよ。。」
彼女は一人でこのB&Bをエネルギッシュにきりもりしている。
シャキシャキのサラダとホームメイドアップルジャムとローストハムにあったかいトースト。ピーナッツバターもね。
「コーヒー、ブラックだったわね。」
注いでもらったマグからふわーっと芳しい香りが一気に広がった。あ、あの看板にあったコーヒーだ。
「いろいろな動物、こんなにチェーンソーで作れるのすごいですね。かわいいし、楽しいですもん。少しずつでも作り続けてほしいな。。 リタイヤされるときまた創作されるとみんなハッピーですよ~。」
「そうそう。私もそう思うのよ~」



Devils Tower, Wyoming; by T.T.Tanaka

「おはよう~。Mr. Tanaka。Devils Towerの前のあの彫刻は日本人作家なんだって?
おれたち、あの彫刻のことは知ってたんだけど、うっかりしてたよ。」
日に焼けたツヤツヤ顔にハーレーT-シャツ。ひょっこり現れたご主人。チェーンソー作品と一緒で愛嬌たっぷり。
「Royさんのかわいい作品が沢山あって嬉しいです~。お二人一緒に撮らせてもらってもいいです? 読者に是非紹介したいんだけど。。」
「そ、そうなのかい。。。 いや、でも、おいら、ちょいはずかしいぜ。」
あら、でも奥様といっしょに素敵に決まりました、その笑顔。ありがとう。
今度お邪魔するときには生きものたち、増えててね~。
ありがとう。出発するよ。







Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

10マイル(16㎞ほど)北にいくとHulettというかわいい町があった。Devils Tower近くの街道沿い。突然現れた町は映画のロケセットみたい。人口は400人ぐらいしかいない。
これという名所旧跡ってのはないみたいだけど、のーんびり歩いているといろいろなアンティークショップやカフェに遭遇できる。看板を眺めているだけでタイムスリップできてうきうき楽しいんだ。



Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

わー。真っ赤な壁。手前にはかつて実際馬にひかせた鉄製の荷車たち。
コントラストが素敵。歩道に博物館が隣接しているみたいだよね。



Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

歯車? いや、カウボーイのブーツにつける拍車のイメージにも見える。。 ウォームカラーのウッド壁全体が人の顔に見えて楽しい。



Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

目に飛び込んできた荒馬に乗るカウボーイ。
強ーい縦書きロゴに、Buffalo(野牛)の角。
カウボーイはまさにBuffaloを追って狩をして、いろいろなものも運んできた。日々ドラマがあり、歴史的なドラマも沢山あったんだよね。だからアメリカの生活に深く入り込んでいる。その技を競うロデオ大会は昔から盛んで今やスポーツ競技としても人気なんだ。中西部では、鞍、ジャンパー、ハット、ブーツ、宝飾など新旧さまざまの職人技やゆたかなデザインをあちこちの町で目にすることができて楽しい。





Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

アンティークポスターもいろいろ。 今キャッシュレスの大合唱だけど、これは60年ぐらい前にもあったキャッシュレス促進のものかしらん。クレジットカード開始の頃なんだね。朝鮮戦争後1950年代。
“今、(キャッシュはいらない)クレジットカードで買おう。支払いはあとだ。”  クレジットカードでビールを飲むの、かっこいいぜ~ってとこかな。



Hulette, Wyoming; by T.T.Tanaka

こっちのポスターは、
“自由のために。戦争債権を買おう。”
ひえー。戦争応援かな。みんなで債権を買って(お金で)国を応援しようってことなのか。。。 愛国心に訴えてお金を庶民からも調達してきたんだね。。 戦争に勝つと利子がつくのかしら。。 逆に紙くずになることもあったのかしらね。





Huett, Wyoming; by T.T.Tanaka

向かいのお店から気になる視線が・・・と思ったら、女性が手を振っているじゃん。よくみるとバルコニーに鉄板切り抜きのシルエット。彼にバイバイって手をふっているのかしら。。

昔はカウボーイのシルエットに、女性のシルエットに、若い人たちはあこがれていていろいろなところにドッきりがあったのかもしれない。

シルエットにドキってあるじゃん。

でも、みるとよくできているバルコニー「風」。 ふふふ。





Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

あら、こんどはあっちから別の女性視線が。大分陽に当たって色あせたポスター。うーん。昔のセリフが頭の中に流れてきた。。

“ロッキーにようこそ。バイク乗りのかっこいい君。素敵な彼女に巡り合えるかも知れないぜ。バイカーにはなんといってもこのビール。だってロッキー生まれでクールだぜ。(バイクの後ろにロッキー山脈) ”

でも違うメッセージになった方が好きだよ。

“ロッキーにようこそ。彼女や彼氏がいてもいなくてもどうでもいいぜ。バイカーのあなたは素敵だ。このビールはロッキーみたいにいつもクールであるみたいに。”

Wyomingは全米で一番最初に女性の参政権が認められた州でEqual stateといわれているんだ。



Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

お、あのエンジン音、ポテトポテトポテト。。。 Harleyだ。

真っ赤なライダースーツの女性ライダーがやってくる。

現代の馬にはEqualityのパワーがある。かっこいい。これからロッキー山脈に向かうのね。応援。

 







Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

Buffaloの骨の下から店を出るとかわいい教会。
昼下がり。大きなmaple treeの木陰が芝生の上にできている。





Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

芝生を歩いていると、あらあら。。。
猫ちゃん。すぐ近くまで来ましたね。
あら、止まらないでいっちゃうの?
後姿が、またしっぽが、かっこいいじゃん。
ちょいまってよ~





Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

立ち止まって僕をちらりと。あら、待ってくれたのね。。
と思ったらそこでそれする?ゴロンゴロン。。 いや、気持ちいいと思うけどさ~。僕も悪い人じゃないと思うけどさ~。





Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

あちゃー。さらに道の上でゴロン。
仕草が最高にかわいい。
ああ、人懐っこい。。 きっと、ここに住んでいる人たちってやさしいんだね。
君、警戒感ゼロだもの。
ここは君のcat streetね。
ありがとー。また会えないと思うけど元気に育ってね~。
うっかり通りにでちゃったりしちゃだめよ~。車に気をつけるんだよ~。





Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

猫ちゃんにバイバイしたら、耳にチュンチュン。
おっと。かわいいスズメちゃん。ネコと遊んでいる僕をみていたんだね。
はいはい。ちゃんと撮りましょう。嘴がツヤツヤブラック。三色の羽、きれいね。ぷっくり体形もかわいい。



Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

今度は背景にリズミカルなキーコキーコの音。 左右に豪快にswing。
元気なブランコ。風を切って、きっとロッキーが高~く高~く見えてたのしいよね。
Swingなければ意味がないっていうし。
あら、でも歩きスマホじゃないブランコスマホ。。。気を付けて。。



Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

Maple(カエデ)とPine(松)のシルエットが四駆のボディーに濃く映ってきた。
陽が傾いてきたね。



Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

日没が間近だ。まぶしい光が思いっきり斜めにさしてくる。
空のブルーも大人っぽいブルーに、そしてパープルに染まってゆく。
段々静かになってきた。鳥の声だけが過ぎてゆく。



Hulett, Wyoming; by T.T.Tanaka

ぽっと点灯された店のランプ。
そうか。もうすぐDinner time。
家に帰った人たちが、宿にチェックインした人たちがまたやってくるんだ。
今晩はバーボンソースのステーキ食べるんだもんね。ふふふ。
いいお肉の香りがしてきたよ~。
行こう。行こう。お腹すいたよ~。
あれ、そ、その指先、え? ATM指してるの?
あ、やば、キ、キャッシュ、おろすの忘れてたよ~。
ひえー。
いや、大丈夫。大丈夫。キャッシュレスだもん。
うん? いや、クレジットカードだもん。。

「人口密度2人」

ワイオミングは全米で人口最少の州。面積は10位で本州と四国を足してあまりあるくらい大きい。そこに60万人弱、ちょうど鹿児島市一つ分ぐらいの人が住んでいる。人口密度は1km×1kmあたりたったの2人! アラスカに次いで少ない方から2番目。日本だと都道府県で一番少ない北海道でも約70人だからその35分の1。めちゃくちゃ少ない。
人は少ないけど、哺乳類を含めさまざまな生き物たちが私たちの間近なところにたーくさん住んでいる。野生に加えて飼われている生きものたちもいるから出会うのは人間以外の生きものの方が圧倒的に多い。逆にいうと、人間に会う方がすごく少ない。 都会にいるとちょっとした動物に遭遇するだけで大騒ぎでニュースになるけど、ここでは逆。自然の中で人に会う方が久しぶりだからそれだけでとっても嬉しくはしゃぎたくなる。自然に笑顔が崩れちゃう。人懐っこくてうれしい顔。 気のせいか、ここの人たちがいろいろ描く動物たちの表情も人っぽく感情豊かなものに感じるんだ。
人と生きものとの距離感。ここではそれがすごーく近い。それに上下感というか壁がないように思う。
小さな町で会った野良猫ちゃんたちは僕との壁が全然なかった。野良猫はコミュニティーの鏡なのかもしれない。そこに住む人たちの接し方がにじみ出ている。
人口や人口密度の大小と社会の素敵とは本当に別物よね。
ここでは色々な風に触れることができるし、いろいろな風の音も鳥の声も動物の鳴き声も聞こえるし、草木花のにおいも次々に感じることができる。体中のあらゆる感覚がアクティブで頭全体がイキイキしているように思う。一日、二日と身を置いていると様々なものに敏感になってきてそれが普通になってくる。生きものとしての自分が目を覚まして自然のさまざまなものを感じ、つながっていっているのかもしれない。
そうそう、そういえば、アンティーク密度は高かった。昔の人達の歩みを捨ててしまわずに大切にしているんだよ。だから過去の人達も生き続けているみたいだ。うん。過去の人々にも人懐っこい。
人だけじゃなくって色々な命を、そして今だけの命じゃなくて過去の命も大切にしているように感じる。 Heart-warming。心があたたかくなる。ワイオミング、素敵だ。


イラスト by 瀧口希望




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