“Travel is ENCOUNTERS”<br>台湾篇 #53

“Travel is ENCOUNTERS”
台湾篇 #53

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / 2022.08.22

“Life Cute in Southern Most”(最南端のかわいい)


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

あらーっ!
水面に輪がひろがってゆく・・・。
セキレイがプールの縁にとまって羽をパタパタ・・・。
きれいなお水は空からみるとキラキラ光っているものね。
お水が飲みたかったのか、いやいや、あらーっ サブーン・・・。水浴びしたかったのね。
朝、頑張って起きてよかった。
ここは台湾の最南端の海に面した墾丁(Kenting)。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

振り返ると宇宙に飛び立っていくロケットの先端みたいな岩山、大尖(Dajian)山。標高318m。
わ、黒いものが目の前をよぎったと思ったら鳥さんのシルエット。ピーッと高い澄んだ声を残していった。一気に元気になっちゃった。

この一帯は40年ほど前に台湾で一番古く国立公園となった「墾丁国家森林遊楽区」。地表はかつて海底にあった珊瑚石灰岩で覆われている広大な自然保護区。先住民のバイワン族の亀仔角社(Kuraluts)集落があったところ。30km × 10km ほどの大きさで、緯度的にはハワイのカウアイ島と同じ。熱帯なんだよ。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

早く起きたからには朝食をしっかり外で楽しまなきゃね。
ブレックファストメニューは、見ているだけで楽しい。
表紙にはこの自然保護区にすむニホンジカのイラストが素敵に描かれている。
ウキウキするけどチョイスは悩ましい。フレッシュな搾りたてのパッションフルーツジュースはみんないただけるんだけど、以下のものから選ぶのね。
-ホームメイドパンにハニーバターとブルーベリージャムが一緒についてくるもの
-スライスしたパイナップルをはさんだロースト・ハムのオランデーズソース添えのもの
-スクランブルエッグとソーセージとヨーグルトがついたクラシックアメリカンスタイル
-玉子焼きとMilk fish(この辺では定番の白身魚のサバヒー「虱目魚」)のお粥
-Mud shrimpエビと「東港肉粿」(お魚で有名な東港Donggangというところのすり身入りスープ。玄米の一種を数時間蒸してソーセージをのせて海老を入れて作る)
-お魚のすり身の玉子焼き付き
-スパイシーチキンブレストのオランデーズソース添え目玉焼き付き+パイナップルスライス
うーん。悩んだ末に一番最後のを頼んだ。で、やってきたのが上の写真。玉子焼きが大尖山そっくりにこれでもかと高~くそびえていたのだった。バターの香りととろみがあってペッパーが効いていてキュッと美味しい。
僕の食欲で一気に岩山、じゃなくって玉子山は一気に黄色く流れて崩れていったけど・・・


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

パームツリーの葉っぱがゆらりゆらり大きな曲線、小さな曲線を描いている。すれる音が気持ちいい。
大尖山肌はすごくダイナミック。
果たしてこの山登る人はいるんだろうか・・
ふとアメリカ大陸大平原ど真ん中のDevils Towerを思い出した。あれは大地の中のマグマ噴出のあとだったけど、この山は海底のプレートがぶつかってせりあがったもの。どちらも地中から出てきたものだけど、なぜか宇宙につながっていく力を感じてしまう。
いろんないきものたちも人々もそんなパワーをいただいて命をつないできたんだね。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

斜面には松の木。日本で見るのよりすーっと枝が伸びてやさしく揺れている。
ヒヨみたいな鳥さんが明るくさえずって仲間をつくってはまた飛んでゆく。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

地面に目をやるとヒラヒラヒラ~とちょうちょが飛んできて白い花に。
さっそく蜜を吸っていますね。シジミチョウの倍くらいの大きさね。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

そろそろホテルの中に入ろうと思ったら、コトコトという音が・・・。
なんとお猿さん。
小屋の上の木陰にやってきてお座り。
うっすらと赤い顔が見えている。
ここには台湾猿も棲息しているのだ。日本猿そっくりね。
この自然豊かな森の中で海を見ながら育っているお猿さん、日本のお猿さんともし会えたらどんなことをお話しするんだろう・・・。


“南の海を望んで”


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

まあるい格子の素敵な天井。思わず上を見上げつつホテルの中に入る。
ここは華泰瑞苑(Gloria Manor)。このエリアに来るなら是非にと台湾大好きな友人に教えてもらったのだ。
大尖山を望み、海から少し上った高いところにある建物はかつては林務局の接待場所として使われていた。風水にも優れ、後の1968年、蒋介石総統の最南端の行政施設になっている。彼がとっても気に入って使っていた空間だったとのこと。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

施設として使われなくなって年数が経ちかなり痛んでいたものが、じっくり手をかけてホテルとして生まれ変わった。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

建物の中には30人を超す人数での会議室も再整備されていて、奥には暖炉が見える。暖炉の奥が(見学はできないんだけど)秘密のトンネルになっていて、さっきセキレイ君がいたプールの横の芝生に抜け出るとヘリコプターで脱出できるようになっていたんだって。
かつてはオープンにされていなかったのをインテリア含めて整備し直し、一般の目に見えるようになりホテルとして生まれ変わっている。
暖炉の上の緑の映り込みはプールのあるお庭。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

深呼吸して、ラウンジに戻ると、陽が傾いてもうすぐサンセット。
フィリピンの方向に体を向けると右側ではお日様が沈んでゆく。
インテリアのランプにも陽がともった。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

ずーっとずーっと海。
その上をながれてゆく雲が墨絵のように美しい。眺めているとどんどん形が変わってゆく。
ぼーっとしていたら一気に濃い色に。藍色から紫に・・オレンジ色が深ーく混ざってきてきれい。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

わ、雲間から差し込んだ陽の光が横一線にきらめいた。。


“美味のラッシュアワー”


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

待ちかねていた日没、海岸近くに降りて、墾丁大街夜市の通りにやってきた。

これ、な、何~!!!?
巨大なシャコ・・?
丸ごと揚げてあるんだけど・・。
「轟炸大魷魚」って書いてある。大イカ!の串刺しフライ。わかった! 上下逆なんだ。ゲソ(下足)が上ね。串を持ってゲソからバリバリほうばってそれから甲の部分を攻略して、美味しい剣先が最後ってわけね。台湾の屋台で今人気なんだ。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

ひやー。こちらはタコ焼き(章魚焼)。なんか大きなタコがまるまる入っている感じに見えるけど(そんなわけないか)楽しい。オリジナル味(原味)、海苔味、マスタード味(芥茉)、それにチキンソース味(雞醤味)なんてのもあるね。え、たこ焼きにチキン味・・!


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

こっちの屋台はエリンギ(杏鮑菇)を揚げている。歯ごたえシコシコといいものね。なかなかいい香りがただよっています。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

わ、ちっちゃな三角形の巻貝が山盛りになっている。「燒酒螺」という台湾でポピュラーなお酒のつまみ。お酒、ニンニク、唐辛子、醤油、砂糖などが入った辛いタレに漬け込むのよね。大辛(大辣)、中辛(中辣)、小辛(小辣)、無辛が好みで選べるのね。これが結構おいしくってチュウチュウ吸ってまた一つ、また一つと食べてしまうんだ・・。ミニツブガイみたいな感じかしらね。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

このお店は麺屋さん。お好み麺とお好みスープをエイっと注文したらさっと出てきて食べられるのよね~。注文したいときが食べたいときだもの。「黒白切」とは豚のモツ、「冬粉鴨」とは鴨肉の春雨麺。ここは麺のコシがしっかりの春雨麺(冬粉)が売りなんだね~。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

坊やも楽しく、みんなでおててつないでお食事に。夏の夜はサンダルがきもちいい。
頭のすぐ上はソーセージ(「打洞香腸」)の看板。芳しくちょっぴり甘~い香がしてきた。更にその上にみえる「義式燉飯」はリゾットのことみたい。そういえばイタリア国旗みたいね。あ、さっきは「北海道」の文字も見えていたよ。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

日本の屋台のような香りがグーンと来ると思ったら大判焼き(「紅豆餅」)! にっこり笑って、「美味しい美味しいよ~っ」て言われたんだけど、ごはん前で我慢我慢・・・。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

いかんいかん・・。こっちはソフトクリーム屋さん(軟奶油)。あずき、杏、烏龍茶、ゴマ、ピスタッチオ・・・などなどかなり迷いそう。あ、記念にスマホ撮影しますよね。子供たちも満足の顔で出てきます。
更に我慢してレストランに行くよ~!!


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

海鮮料理のレストラン。台湾Loveの人たちと合流してやってきました~!!
もう入り口から大きな蛤(ハマグリ)がこれでもかと並んでいます。焼き蛤(「烤大蛤」)にして出してくれるのね。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

そのお隣は大きな生牡蠣焼き(「烤生蚵」)。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

台湾ビール(「台湾啤酒」)の乾杯に間髪入れずに登場したのはまず「炒水蓮」。さっぱり炒めてあってシャキシャキする噛みごたえが素敵な前菜。高雄近くで栽培されているで水蓮菜(タイワンガガブタ)というお野菜なんだ。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

そして「丁香山蘇」(山蘇の炒め物)。山蘇(シャンスー)はシダ科の植物。沖縄でも育つオオタニワタリね。丁香は香辛料のクローブ(丁子)。甘い香りが香ってうまみたっぷり。小魚とショウガもちょっぴり入って体の中に美味しさが一気にまわってゆく。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

ビールが更に美味しくなってしまった、大頭海老の塩焼き「鹽烤活大頭蝦」。ほんと、大きな海老です。高温の油でカリカリっと揚がっていてソルトが効いています。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

ちょっとお肉も加えて、「宮保雞」(鶏肉とピーナッツの唐辛子炒め)。ピーナッツもやや大粒だし、やわらかく芳しい鶏肉にからんでいてにっこり。

おしゃべりの合間に食べ、いえ、食べる間のおしゃべりなんだけど、嬉しいテンポでガンガン食べてしまう。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

そしてこちらが最後の蟹料理、「薑蔥炒活沙母」。ノコギリガザミという旨味たっぷりの蟹の生姜・青ネギ炒め。蟹みそのコクが濃厚でじっくりお腹に・・・。美味しい。
熱いうちに食べたいのでおしゃべりを控えめに・・・。
わー--。お腹いっぱい。
胃袋があと2つくらい欲しいよ~。
最南端のお食事は、なかなか嬉しい。
こういうお店が何軒も腕を競いあっているんだね。
ああもう・・名残惜しい感じだけど・・お箸を置いて立ち上がった。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

満足感にひたりながら店の外に出る。
バイクの音が近づいてきたと思ったら、元気な女性たち。レストラン街に仲間たちとやってくる。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

こちらの女性も二人乗りで到着。後ろに見えている「100均熱炒」(ルーチャオ)は台湾全土にあるレストラン。500円くらいの炒め物がずらーっと並ぶメニューから選べる。居酒屋みたいでお酒も一緒に楽しめるみたい。このストリートは屋台もレストランも沢山で人の声も灯りもあっちこっちでにぎやか。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

小さなショットグラスが目の前に・・! 試飲を薦めるお兄さん。リキュール瓶が何段にも並んでいる!!


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

こちらもカラフルなスタンド。カクテルドリンクね。瓶の形も色も様々だけど、並んでいるドリンクグラスがまた冷たくて大粒の水滴。やっぱり熱帯にいるんだわ。つい手が出そうなんだけど、ここでは我慢してホテルに戻ってからの楽しみに・・・。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

そのまま通りを抜けて近道して帰るにはなんかもったいなくて、Uターンして元来た道をもう一回歩くことにした。あ、ドラッグストアが明るく開いている。お隣のワンちゃんがトコトコご挨拶にやってきた。よしよし。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

こっちはオートバイのお店。夜でも開いてるんだね。
ピカピカに磨いてあるバイクを見ていたら、お店の奥からトイプードルちゃんが表まで出てきてこんな僕の近くまで・・・。毎晩の色んな人の往来はおなじみなのよね。
可愛がってくれる人もいっぱいるし、夜も嬉しい時間で幸せよね~。でも車には気を付けてね~。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

女性がメットを手に帰路につく。
人々の歓声の中で、シャキっと姿勢がよくってカッコいい。
夜も段々更けてくる。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

山の斜面に向かうところには国立公園のgateが照らされ、ほんのり浮かびだされている。
ここを通ってホテルに戻る。


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

あれあれ~。い、色が・・・


墾丁(Kenting), 台湾; by T. T. Tanaka

みるみるうちに門はくっきりブルーに染まってしまった。呆然と立ち尽くす。
そういえば、セキレイ君が踊って水紋を寄せていたあの水はライトブルーだったし、大尖山の前を横切った鳥さんの背景もブルーだった。
そして、ホテルから望む南の海はブルーからオレンジに変わり日が沈んでいった。
夜空の下、照明に照らされて、海からの幸はイキイキとゴールドやオレンジでアピールしていた。

にぎやかな人々の歓声の中、にっこりスマイルがあちこちで湧いては過ぎていった。

最南端の墾丁(Kenting)の町から始まった台湾の旅。
早速のドラマをありがとう。
この旅のこれから。何が待ち受けているんだろう?

あ、早く寝なきゃ。明日はまた移動だし。
お腹が幸せでスヤスヤ寝られそう・・・。


“最南端の幸せ”

あー、美味しかった蟹料理!
アメリカ、最南端、フロリダ州の島Key Westで食べた蟹はStone Crab(石蟹)だったけど、台湾最南端の蟹はノコギリガザミだった。突端でいただくお料理ってどうしてこんなに美味しいのだろう?

そうなんだ。端っこの地って食べ物だけじゃなくって何故か心惹かれて行きたくなってしまうのだ。先端や縁には何か特別なものがギューっと詰まっているんじゃないかと思ってしまう。

ひょんなことで久しぶりに台湾に行く機会があった。スマホで地図のあちこちを拡大して眺めていたら、最南端の墾丁(Kenting)の町が目に飛び込んで来た。そこは島の南部の中でもグーンと更に南に突き出ているところだった。台湾は九州と同じくらいの大きさだけど、墾丁へ行くには北の首都、台北から約400km以上も南に行かねばならない。アクセスは意外に容易なんだけどね。

来てみてビックリ。自然の宝庫みたいなところ。元気いっぱいな鳥があちこちでさえずり、セキレイはかっこよく水紋をつくっているわ、お猿さんはくつろいでいるわ、出会えなかったけど鹿さんもメニューの表紙に描かれていたし、さまざまな哺乳類も棲息しているんだ。
元気よく宇宙に向かって突き出した大尖山(Dajian)は海底のプレート同士のぶつかりでせりあがったもの。はるか昔からの時間の流れが目の前にあった。
先住民たちが住んでいた頃から時は流れ、若者たち(=丁)が開墾して墾丁の名前になり、歴史の重鎮たちも訪れ、建物は生まれ変わり、そして今は海外からの人々も老若男女訪れる。
この素晴らしい自然と私たちが共存する大事な歩み。ストリートにはあふれる人々の笑顔。

端っこにくるとそこから先に行けない。
思わず後ろを振り返ってみる。
でも落ち着くと改めて先端の向こうを見てみる。
なんとかあの先にも行ってみたいという思いが湧いてくる。
はるか先を必死で眺める。
自分の今までの歩みと、これから飛んで行く夢と。

あ、そうそう、あの人とつながってみると先にいけるかもしれない。
そうだ、帰ったら久しぶりに会ってみよう。
あ、あの人にも会ってみよう。
あの笑顔にもしばらく会っていないものね。

ここ、墾丁にきてよかった。


Photos, essay by T. T. Tanaka

※ 2022年より前の取材を元に書いております。現地のナビゲートや色々な情報は大塚典子さん、飯田淳さんにご協力いただきました。


旅はENCOUNTERSアーカイブ↓
フロリダ篇
カリブ篇
アリゾナ篇
ワイオーミング篇
アソーレス篇
グリーンランド篇
ネブラスカ篇
ラトビア-バルト海篇
台湾篇

Tag

Writer