Travel is ENCOUNTERS(アソーレス篇)#28

Travel is ENCOUNTERS(アソーレス篇)#28

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / jun.22.2020



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




“I want to hold your hand”
Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


キャベツ;「はーい。わたし、あなたの手に抱かれたいの~。」
通りかかった女性;「おいで~。ほら~。ここよ~。ここ~」
キャベツ(男性に);「はやく、はやく、連れて行って~。ゆすらないでね。ほら、あの上の道の車のとこよ~」

キャベツ;女性の手におさまってうっとり。日に当たって元気にまあるくピカリピカリ。
大きな大きなキャベツ。
大西洋のど真ん中のアソーレス諸島。ここはそのサンミゲル島(ポルトガル)の北海岸。
絶壁にも広がる畑。夏の風が斜面を流れてゆく。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


ジャガイモが元気にいっぱい育っている。紫ががったお花がキラリキラリ、夏の色。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

こっちはすくすく育った大麦。つやつや光っている。
うーん。麦飯がほしくなったよ~。。お、ビールも欲しくなった。。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


写真をとっていると地元のトラックが。。 子供も中からにっこり。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


海岸通りはいろんな作物に出会えて楽しい。草花も元気。青い花は日本の園芸で人気のアガパンサス。
「あ、お兄さん、こんちは (Ola!)~!!」
「Ola~!!」
スマホから目を離してこっちににっこり。
元気な歩みだよね~。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

あらら。顔を出したのはヤギさんたち。ひょっこり、かわいい。
この地区は500年くらい前から入植がはじまり今では1000人くらいの人口。牧畜用の作物を主に作ってきたところなんだ。
日に当たってヤギさんいい感じでしょ?
歩みの異なる旅人は珍しいよね。気になっちゃったかな?
君のスマイル、素敵よ~。





“少年時代”


Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

チヒヒヒヒヒ・・・って大きななき声がするとおもったら、なんとちっちゃい鳥さん。
畑の柵の上にとまって鳴いてます。
スズメに近いEuropean Robin(コマドリ/駒鳥)の子供みたい。
まあ、元気いっぱい思いっきり口あけて鳴いてるね~。
その調子、海の向こうまで届け~~!!
夏~!!



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


「おい、すず~ おまえさー最近放課後つきあわねえじゃんか~ よ~よ~」



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


「健太、何言ってんの。課題授業、やっつけなきゃ。。 だって、バレンタインデー、一緒に****ランドいくでしょ?」
「お・・・。。 バ、バレンタイン・・・♡♡」



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


「そういえば、健太さあ、今度のクラス替え、よかったわ~。 だってあのイケメン坂口君、すぐ横の席になったのよ~」
「(!!)・・・す、すず・・」



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


・・(羽根を意識して)バタバタバタ・・・
「す、すず~  お、おれ、この羽根、大きいだろー。ほら。この前、素敵っていったじゃん、この羽根さ~。みろよ~」
「・・(無言)・・」



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


「いえーい。おいら生まれながらの、いや、生き返りのサーファーだぜ~。
あの世にいってもやっぱ、サーファーやりたくってさ~。毎年生き返ってくるってわけよ。
サーフィンのハイシーズンはここはよ、秋からじゃん。んだからさ、夏の間に、生き返ってしっかり棺の蓋製ボードみがくんだからな。」
赤いマフラーなびかせ、ハンドル片手にぶいーん。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


「わたしゃ、フルーツフライ(fruit fly)。みんなに嫌われ者のコバエでやんす。
みんないいよな~海でサーフィンできてさあ。。。
おいらなんか陸だけだぜ。
でも、ほれ、おいらの大好物のフルーツとかワインはさ、アソーレスにはいっぱい。
しめしめ、ボトルに残ったワイン、しっかりなめるんだ。
なめた後は、ほろ酔いで、ボトルに、波乗りみたいにのって楽しむんだぜ。
うまいもんだろ。な、かっこいいだろ?
ちょいまぶた、下がってきた。。。」
夢と妄想と挫折がいっぱいの、少年時代。
夏が過ぎ風あざみ。
目が覚めて夢のあと。。。





“Home”

Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

「おい。みんな集まったな。行くぜ、カフェ。」
「おー!」
6月の日差しがまぶしい。
角を曲がると濃い香がカフェからただよってきた。
スマイル。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


路地にはアイスクリームバーの看板。フードストア店先。
夏のあまーいプロモーションが石畳に鎮座する。
我が町で食べるスイートが一番。
Home sweet home.



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


海岸通りはアップダウン。
教会近くのお店でお買い物。
日差しが顔にかかったり影になったり。
遥か向こうは島の山々。
青い緑が夏本場。
素敵なhometownね。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


大西洋に囲まれた大陸から遠く離れたこの島でも昔から疫病に何回か襲われている。古くは西暦500年頃。そしてそこから救われた伝説や民話も残っている。古くから信心深い人たち。おうちにはそれぞれ趣向を凝らした素敵なタイル。これは多分1813年に建てなおされたおうちなんだね。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


大きなユッカの木と木の合間。
レンガの屋根をトコトコ鳩がゆく。
自分のお庭だものね。



Fenais Da Ajuda , Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


「なあに~? カメラ持ってお散歩しているの~? むにゃむにゃ・・・」
見上げるお顔の目がもうないんですけど。。
日差し、暑くないのかしら。
壁のヨコ。安心しきってお昼寝です。
Home sweet home.





Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




“It’s only a leaf moon”
Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


あ、白馬。
B&Bの窓をあけると、
広がるグリーンとブルーの空間にちらりちらり。
その斜面はずーっと牧場。火山はカーブを描いて大西洋に落ちていっている。
ここはLomba da Fazenda(うねった農場という意味)。人口800人余りの小村。島の最北東端の町Nordesteに属している。
このアソーレス諸島のサンミゲル島は東西70㎞×南北10㎞ぐらい。東西には数個の火山や元火山がつながっている。高いところは1000mくらいある。
ここもすぐその火山の渓谷に入っていけるんだ。



Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


牧場脇の若い杉林を下りていくと突然変わる景色。山の方まで広がる大渓谷。巨大な溶岩がごろごろ。そして誰一人いない。



Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


西暦1500年頃以降、人々が入植して定住し始めると大陸や外国からの草木や動物が入りこんであっという間に原生林は減っていったんだね。高さ1100mを超えるPico da vara(杖山)からの何本かの渓谷にはわずかだけど大昔からの月桂樹林がそのままで原生態系が生き続けている。
何百年か前に転がってきた火山の大きな石。その上にびっしり苔が元気に育っている。美しい緑のグラデーション。しっとりゆっくり空気がまわっている。
あ。ピッヒョローーという口笛のような鳥の鳴き声。あれがアソーレス固有の「ウソ(bullfinch)なのかしら。。



Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


あ、お月さん~~!
巨岩の苔にひっかかってふわり。
弦のように反って三日月みたい。
ふと流れてきた山の上からの風。
はらはらとその月は落ちていった。。
何百年もの時間の流れ。
月桂樹のleaf。
It’s only a leaf moon.





“The summer knows (思い出の夏)”
Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


夏休み。親友とおしゃべりが楽しい。
いつものストリートも素足でウキウキ。



Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


子供の手を振り切って喜び勇んで走ってきたワンちゃん。
振り返って、ちゃんと飼い主を待っています。
夕方のごはんの前のお散歩ね。
夏はお散歩も楽しい。



Lomba da Fazenta, Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


もうさっきからいい匂いがただよっていて。。。  B&Bのママ、おすすめレストラン、“Cardos--Casa de pasto” (アザミ---牧草の家) に来たの。
オーナーが選んでくれたアソーレス諸島、ピコ島の赤ワイン。にっこり笑って栓を開ける音がもう素晴らしい。Arinto dos Azores 。Arintoとはブドウの種類。酸味がきいて重くなくすっきりして桃の香がする。。 美味しい水はポルトガルのCASTELLO.
大好きな太刀魚のフライに、お肉はパイナップルをはさんだ黒プディング(Morcela = Portuguese Black Pudding) 。これはポルトガルならではのお料理なの。玉ねぎ、ナツメグ、オートミールに真っ赤なカインペッパーと豚のbloodを加えてつくるソーセージ。鉄分豊富でスパイシー。女性に大人気なんだって。ポークフライも添えてある。新鮮なバターでいためたポテトもしっかりくずれず美味しい。。 なんとぜーんぶローカル食材。 夏の思い出は遠くだけど嬉しい。 夏がくるたび思い出すだろうから。。。



Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


そして、Nordesteの町の中心部。
海岸通りにある教会と石のモザイクの広場。
大きな海の音がひびいている。
バイクエンジンの音が混ざったと思ったら、南から北へ下りていった。
日曜の夏の朝。



Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka




Nordeste, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka


アソーレス諸島で初めて建てられた灯台は1876年からずっと現役。50㎝もある大きなレンズで35km先の船まで知らせることができる。キラキラつづいてゆく大西洋がまぶしい。
真下には波が一気に押し寄せる。火山のかけらの真っ黒いまあるい石たちにぶつかってくだけてゆく。
寄せる波がつくるパターンは毎回全部違う。夏の波。見とれてしまってあっという間に時間が流れゆく。
カップルたちが何組かきて僕ににっこり。一瞬の波と自分たちを一緒にスマホにおさめてゆく。
夏は思い出をつくり、そして服を脱いで秋になってゆく。
アソーレスの思い出をありがとう。



“It’s only a leaf moon”

大西洋のど真ん中のアソーレス。
あちこちにあるちっちゃいけど素敵な古い町や村にびっくり。
キャペツ君が、ヤギ君が、白馬が、コマドリ君もスズメ君も鳩君も、コバエ君も、ネコちゃんもワンちゃんも。そして老若男女の人達も。日常のあちこちの舞台で輝いてイキイキ。
そして忘れていた原生林の存在。火山由来の渓谷。
そこで出会った「月」。
そ。ただの葉っぱの「月」なんです。
びっくりしました。
月桂樹の反った枯れ葉が苔石に一瞬のっかって三日月に。
1900年頃アメリカで舞台の演出によく使われた段ボール製のお月さま。
ミュージカルなどでかわされたセリフ;あなたの愛があって私を信じてくれるならただのpaper moonも見せかけの月じゃないのよ。本当の月になれるわ・・
リアルのものを体験したことのある私達は、それがたとえリアルでなくても、信じる力があれば本当の体験ができるんだ。
It’s only a leaf moon.


※こちらの記事は2019年の取材を元に書いています。


イラスト by 瀧口希望




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