
“Travel is ENCOUNTERS” (アソーレス篇) #29
Photos, essay by T. T. Tanaka
Local / 2020.07.22

“Stranger in paradise”
あれーーー
蟻さん。
極楽鳥花のイエローと紫のガクの中に。
小さなシルエット。
あー。迷わないでね~。
落ちないでね~。
食べられたりもしないでね~。
Paradiseの中に迷い込んじゃったのかしら。
あ、僕が大西洋のど真ん中のアソーレス諸島にいるのもこんな感じか。。
でも大丈夫。
お日さまは当たっているし、海の音もしっかり聞こえているもの。
そう。そしてよそ者って感じが全然しないもの。

逆三角形の松は日本にはないけど、火山から一気に大海への斜面は伊豆を思い出す。
そうなの。どこにいるか時々わからなくなっちゃう。
緊張感がない不思議なところなんだ。

わからなくなるから方角標識があるんじゃないだろうけど、まさか、ここに東京(TOQUIO)表示があるとは。。ここから11,725km。この裏っ側には、パリまで2,530km,ロンドン3,400km,そして首都ポルトガル リスボンまでは1,500kmと書かれている。
こんなに日本から離れていて日本人はほとんど来ないのにここの人達のマインドには日本のことが存在している。そうそう、ここに咲いてるアジサイも、森の杉も江戸時代の日本からやってきたんだもの。

色んな国の観光客は。一面に広がる海に森にびっくり。スマホのアプリを開いてここの場所を確認して、母国の方角確認してにぎやか、にぎやか。
なんか、どこかの国の観光地みたいでしょ。。? 売店はないんだけど。

空気もゆっくりすいたくてのんびりしていたら皆がいなくなっちゃった。
と、今度は鳥さんもやってきてこの通り。首をかしげて僕の方を覗いています。ちょっと僕の長い望遠レンズが気になるみたい。きれいな緑がまじる羽根ね。ヒヨドリさんみたいだけどわからないの。。 これ以上近づきたくないし。。。

すごい角度の斜面。
このままどーんと緑が海になだれ込んでいってしまうみたい。
でも緑たちはしっかり耐えて海風に吹かれて育っている。
すぐそこまでくるクジラさんの潮吹きも、人々の乗った遠洋航海船も眺めながら。


海岸沿いのあっちこっちの絶景ポイントには展望できる公園があるんだ。
そしてネコちゃんがすんでいたりする。
わ、目があっちゃった。じーっと。
はいはい。きれいな毛並みね。
きっとここのみんなやさしいのね。
逃げなくてよってきちゃったもの。

あらら。仔猫ちゃんも。
お母さんといっしょにお昼寝ね。
目が細くて無いよ~。
海の音聴きながら安心しきっています。
そうね。君たちもStranger in paradiseなのね。
でもよそものじゃないよ。
元気にね。
※“Stranger in paradise” は同タイトルのヒットソングvocalがあります。検索してみてください。


“たどり着いたらいつも雨降り”
今日はAzoresの旅の最終日。
海岸線をぐるーっと通って、港町、Ponta Delgadaに戻ってきたんだ。
な、なのに、
ど、どうして、雨降るの?
傘なんか持ってないし、いい景色を求めてホテルから坂道をあがってきたのに。。
一気に降り出して。。 あ、向こうは霞んじゃっているよ。。

銅像を見上げるとバタバタと鳥がシルエットになって急いで飛んでゆく。
雲も一気に掻き曇り。。

おじさん;(家から顔出して)「おー。雨来たかい。」
私;「この時期よく降るの?」
おじさん;「夏来ると降るんだ。突然来やがんだ。。でもまだこの時期はすぐあがるぜ。」

ほんの数分で道路がもう一気に濡れて光っている。
このおじさんも雨よけて、軒下の方にホイっ。でも傘もってないし。やっぱりすぐあがるんだね。きっと大丈夫、大丈夫。


やっぱり雨はみんな好きじゃないみたい。
おじさん、仏頂面になっちゃったし、
このご婦人は車にあああ~って感じで急いで戻っていくし。
でも、確かに皆傘なんて持ってないよね。
大丈夫、大丈夫。ね?


緑の三輪車が雨の中をゆく。。
あ、二人乗って窓しめると曇るよね。
ヤシの木が雨で揺れている。
古い建物の前を車のワイパーの音が過ぎてゆく。
たどり着いたらいつも雨降り。
おいらの旅も終わりだけど、でも大丈夫。
心の中に傘さしているもの。
※“たどり着いたらいつも雨降り” は同タイトルの日本のヒットソングがあります。検索してみてください



“Pretty world”
雨がやむとお家からワンちゃん登場。
「は~い。お散歩、お散歩! 行くよ~!!」
ご主人が先にどんどん行きます。
車の傍ら、石畳歩道の上。
雨の後は、ひんやり、快適。
ちょい。ご主人、スピード早いみたい。
ワンちゃん、頑張れ~。
息が乱れているよ~。
でも、必死が可愛い。


そりゃ、そうだ。
雨止んだら、少年たちも一気に出てきたよ~。
ドアに手をかけながら、「おーい、いるか~?行くぜ~」
あ、友達のお母さんが窓から顔出し。
「車に気を付けるのよ~。もうすぐごはんよ~。すぐもどんなさいね~」
・・・全然、聞いていないような気がする。。
わ、でも、すごいわ。この坂。
鍛えられるよ。


あ、そうね。学校、夏休みだもの。
お父さんと一緒にウォーキング。
スマイルいっぱい、一生懸命お父さんに話しているね。
学校のことかしら、夏休みの計画かしら、おねだりかしら。。?
イエローとブルーの壁。石畳にピンクの靴がゆく。
お父さんはお嬢さんの方にすこーし、前に、横にかしいでいるの。
It’s a “Pretty world”.
※“Pretty world” は同タイトルのヒットソングvocal (原曲はSa marina)があります。検索してみてください


“Step lightly”
古い石畳。
鮮やかなレッドが軽やかに過ぎていった。
海の近くは曇っていても明るい。サングラスに映った建物がくっきり。

大きな石の建物に反射する海の音。
軽くなったり重くなったり。
リズムにのって Step lightly.

白い石畳、白い服、白い靴。
夏の光線がキラリキラリ。

急坂を上った車が目の前でUターン。
我が家へ急ぐ。
女性のアクティブなシルエットが回転して過ぎていった。元気。
もうすぐ夕飯時間だ。

赤い車と赤いお洋服が交差する。
軽やかなステップ、軽やかなリズム。

もうすぐ日没。女性が帰路につく。
海からのいい風。
ありがとう。気持ちも軽くなってきた。
Step lightly. Step for tomorrow.
※“Step lightly” は同タイトルのJazz tuneがあります。検索してみてください


“Day by day”
夏。
じわじわ、陽も高く、光も強くなってゆく。
二人の笑顔も明るく輝いている。
サマードレスとTシャツが過ぎてゆく。

夏休み。
野球帽の彼とロングヘアの彼女。
ベンチで港をみながら・・
ちょっとあいている隙間が初々しい。
毎日毎日、愛が育つといいなあ。
そ、目の前の海よりも深く。
Day by day.

二人の笑う声が過ぎていった。
マグノリアの緑が明るい。
彼女の髪の毛もキラリ。
歩を止めないで~。
いい感じ

Kissing in the street.
胸が高鳴る。
Islandの坂のドラマ。
じっくり育ててきたんだろうなあ。
あ、その道路標識のポール君、貢献していますね。
これからも二人で愛を育ててね~。
Day by day
※“Day by day” は同タイトルのヒットソングvocalがあります。検索してみてください


“It’s Atlantic cool!”
Azores、この島での最後の晩。じっくり振り返りたくて、ゆっくり海を見ながらお食事をたっぷりすることに。
ローカルの食材たち。もう食べられないだろうなあと思うと。。。

タコのテリーヌ。ローカルフレッシュ野菜が添えられ、ポルトガルならではの悪党魚!(マスの一種?, vilao fish) sauceがかかっている。ごめんなさい。本当に美味。

グリルしたホタテ。
海の波のような豆のムース。パルミジャーノ・レッジャーノチーズが添えてある。食用スミレも。キャビアも少し乗っています。
ポーチドエッグとパルミジャーノ・レッジャーノチーズが入ったマッシュルームリゾット。
デザートは、ワイルドベリーのミルフィーユ。ピスタッチオのシブーストクリームがはさんであります。アソーレス産パッションフルーツのアイスクリームが横に。
ああ、この食事できるだけでも来てよかった。。

この港町から島に入って、大西洋を北から南から、西から東から見て過ごした一週間。
終わろうとしている。
日没。
灯台のまわる光が目に入った。
明日は朝早い。リスボンに戻ってアメリカに飛ぶ。
もう寝なければ。。


おはよう。
もう日が上がっている。雲の間からの朝日。反射した大西洋がまぶしい。
荷造りをして、レンタカーに積まねば。デイバック一つと、カメラ二つ・レンズ二つ入れるトートバッグ一つだけだけど。
ありがとう。行くよ。
窓のカーテンをあげた。
え、なんで君そこにいるの? 昨日可愛がってあげたB&Bのネコちゃん。
こっちをずっと見て待っていたのね。ごめんなさい。目があっちゃったね。
去りがたし。窓をあけてなでてあげたいけどやめた。
だって、涙が出てしまうから。
そのまま反対側のドアから外に出てエンジンをかけた。元気でいてね。

“Eu E A Brisa(私とそよ風)”
アソーレス(Azores)。この大西洋ど真ん中の島。
面白かった。意外だった。
日本から遠いのにずっと日本にいるみたいな不思議な感覚の一週間だった。
行くところ行くところでそよ風にあたりながら歩いていた。
黒と白の石畳、カツオの烏帽子君のビーチ、温泉と日本のアンティーク、緑と青の湖、伊豆から来たアジサイと杉たち、カルガモの湖、ヨーロッパで唯一の茶畑、海しぶきのしたたりおちるピンクの藻に磯の香り、やさしい野良犬と猫たち、海からあがる夕日と朝日、海沿いの村の大きなキャベツやすずめたち、海辺の白馬と太古の渓谷の三日月。。
島は孤島でなくて私たちとつながっていた。
海はさびしく囲むものではなくて命あふれるものだった。
それぞれ思い出すと頬を撫でていった風の感触が蘇る。
そよ風は驚きもくれるけれど、
そよ風にあたっていると寂しさを感じなかった。
そよ風には命を感じたもの。
そよ風の向こうにはスズメちゃんもいたし、馬もいたし、ヤギもいたし、クジラも泳いでいた。
そうなんだ。
そよ風は大切な人のことも運んできてくれる。
ありがとう。そよ風。
ありがとう。アソーレス。
Eu E a Brisa, Eu E a Azores.
(私とそよ風、私とアソーレス)
※“Eu E A Brisa” は同タイトルのBossa Novaヒットソングvocal があります。検索してみてください

(※2019年に取材したものです)
Photos, essay by T. T. Tanaka
イラスト by 瀧口希望
アソーレスに関することはこちらのアソーレスノートをチェック。
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T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。




















