”Travel is ENCOUNTERS” (フロリダ篇) #5
Photos, essay by T. T. Tanaka
Local / 2018.07.10
“I am together with you.”
“昨日のThanksgiving party楽しかったね。”
“あなたのスピーチ、ちょっとみんな立ち止まってよかったわよ。”
“あんなギャグ言わなきゃよかったかな。。。?”
“あれね? 大丈夫よ~。いつもどおり受けてなかったし。。”
“うっ。。。 あ、あのパ、パームツリー。お、大きいな。。”
“今日は風が無くてシルエットも綺麗に見えるわね。”
朝、手のひらどうしを重ねて二人が歩いていく。
今日は一日、素敵になりそうだ。あ、人生も。。
Alice Lake, Gainesville, FL, USA; by T. T. Tanaka
“Oh my deer!”
カリブからの湿った強風がフロリダの島々を南から吹き殴っていた。滝の中に入り込んだような暴風雨で前が全く見えなかった。でも、やまない雨はないんだね。一瞬、気まぐれに太陽が顔を出す。この時とばかりに生きものたちが顔をだす。
フロリダのサンゴ礁の島々、フロリダキーズに棲む固有の鹿、Key Deerもだ。
陸の鹿より小柄でかわいい。すべすべしたやさしいベージュの毛並み。クリっとしたお目目。目と目が合ってしまった。ごめん。びっくりしたね。
雨宿りのパームツリーの下から出てきて木の芽をそそっと食べて、すすっと奥のパームツリーに消えていった。足跡を大昔のサンゴの白い砂に残して。。
ここはどこなんだろう・・?
Key Deer Refuge-Florida Keys, FL, USA; by T. T. Tanaka
“ランチタイム~!!”
赤い実のランチタイム。パームツリーの実が大好物なんだ。
おっと片足バランス。おれって器用だろ?
体幹鍛えているからな。
これできないと美味しい実も食べられないぜ。
でも飛ぶからビールは無しってことよ。俺ってストイックなんだ。ふふふ。。
Cedar Key;USA; by T. T. Tanaka
“ヤドカリ on ステージ”
さっきまで海の底でぷーかぷーか歩いていたのに、なんなんだよー!
急に体が重くなったじゃん!
水中からだと空も淡く色づいて綺麗なのに、ここじゃまぶしいよ~。。
あら、でも、ここはごつごつしてないし、ふかふか。ちょい気持ちいいぜ。
久しぶりの平面だぜ。。 やさしいブランケットみたいだ。。
折角だから邪魔するなよ。お昼寝していくからさ。
えーっ・・・、だから、海の底がいいっていったけど、しばらくこのままでいいんだってば・・
おーー。あーーー。ぶくぶく・・・(沈んでゆくヤドカリ・・)
いい船出をBon voyage! やさしいお姉さんが進水式・・・ おっと君は浮かばないんだったね。海の底へいってらっしゃい~。大きくなって、素敵なおうちをみつけてね。
Bahia Honda beach, Florida Keys, FL, USA; by T. T. Tanaka
“Fly me to the moon”
昔、お世話になった恩師のアメリカ人の先生のお家に昨年泊めてもらった。
当時、大学では珍しい日本からきた劣等生で英語もろくろくできなかった僕なのに。。
「あした、朝、起きたら好きにお散歩してきていいからね~。私たち朝遅くまで寝てるけど気にしないでね。。」
時差もあって薄暗い時間に起きてしまった。気が付いたら先生宅の愛犬アビゲールがベッドの下から眠そうに顔を出した。6:30 AM。外に出てみた。
ハーフムーンが。そして、飛行機がまっすぐ飛んでいく。
パームツリーのシルエットが手をいっぱいに広げていた。
アビゲールと僕はいっしょに空をみつめていた。
もうすぐ陽が昇ると風が流れ始めてシルエットも動き出すんだ。。
今日もいい日になりそう。暑くなるけど。。
パームツリーは手のひらの木
子供の頃からヤシの木ってリアルには出会っていなかったのに不思議と憧れがあった。お絵かきするとよくどこかに描いていた記憶がある。ありえないのに電車の後ろとか、ワンちゃんの横とか。。
フロリダにはいろいろな種類のヤシの木が沢山育っている。海岸にも、内陸の湿原にも、島にも。背が高くて5m以上伸びているのもあれば、人の背丈に届かないのも結構あるけどどれも尖がった葉っぱが元気に広がっている。
そうなんだ。その広がりって手のひらみたいでしょ? 手のひらはパーム。だからパームツリーっていうみたいなんだ。
フロリダのおばあちゃんに教わったとたんにとってもパームツリーが可愛く見えてきた。
あっちこっちで手を振っているんだもの。
外から見えている人間のからだの部分で一番平らな広がりは手のひらだよ。手を広げると大きな面積で日光をしっかり反射してくれる。すごーい。だからとお~くの人も気づいてくれるんだね。
そういえば音楽で、手のひら、太陽って学校でみんなで歌ったよね。
手のひらで命を感じられるし、いきものとつながる気がする。
フロリダをふと思い出すとき、その景色にはパームツリーと広がった手のひらが浮かぶ。
バイバイ。ありがとう。また、来るよ。フロリダ!
気が付いたら手のひらを振っていた。。
Photo/essay; T.T.Tanaka
イラストレーター; 瀧口希望
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T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。