“Travel is ENCOUNTERS” (グリーンランド篇) #31

“Travel is ENCOUNTERS” (グリーンランド篇) #31

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / 2020.09.29


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

“カモメさん、行ってきます~”

おはよー。
Ilulissat(イルリサット)港で氷山巡りボートツアーに。といっても数人乗る小さなお船でのんびり。
可愛い小舟でしょ?
9月も中旬。もう観光シーズンは終わり。
乗り込むのはドイツからのカップルと僕だけ。船長さんとデンマークの女性ガイドと計5人。
朝は零度以下で冷え込んだけど今は3℃くらい。でも湿度0%。すごーく寒いはずなんだけどお出かけの時はその感覚を忘れている。タラップおりて陸にバイバイしながらウキウキ。
(※グリーンランドの地図はこちら)


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

Frankさんのお船で港から湾に出ていきます。
お船のまわりには最初から小さな氷山のかけらがプカリプカリ…。
静かな海です


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

氷河から海に放出された氷(雪の塊)。だんだん溶けて小さくなって陸近くに浮かんでいます。これでも大きいと思うんだけど。
カゥーカゥーという声が聴こえてきた。
カモメさんたち。
朝日をあびて氷のエッジ近くのシルエット。
お目覚めね。
あ、こっちの子は元気に飛んでいくね。羽根がくっきり。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

お日さまがのぼってくると氷山の表面がキラリキラリ。
北緯69度の一日が始まる。
さわやかな風がゆっくり流れてくる。
カモメさん、行ってきま~す!




Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

“As time goes by”

お、氷山の塊がおおきくなってくるね。
ボートにちょっと並走して追い抜いてゆくカモメさん。
ショートケーキみたいな氷山が現れたと思ったら、今度は たい焼きみたいなかたまりが並んで浮かんでいる。きれいな筋が入っている。
そうか。この氷山たち、浮かんでいるんだよね。ふーん。あっちもこっちも。
湾の向こうに見えているのはGreenlandの二番目に大きな島Disko island。これは浮かんでいるわけではなくて山の高さは2000m近く。地層が雪の間に見えている。
ボートは手前に浮かんでいる氷山の間にずんずん入ってゆく。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

静かな海に浮かぶ氷山。この塊とて高さ15mはあるよね。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

大きな島の下の手前に青っぽく小さく水面に浮かんで横に広がっているのが大きな氷山たち。降ったばかりの若い雪は白く、何年も何万年もたつ雪は青い。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

氷山たちのかたまりに近づいてきました。
ブルーがすこーしずつ迫ってきます。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

大きな、まさに山があちらこちらに浮かんでいます。
高さ100mくらいはありますね。え。水中に200mあるってこと…!
海深く、氷山高し。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

大きな湖に雪をかぶった山脈が迫っているように見えるけど、海にぽっかり浮かんでいる氷山たち。
海の中を潜ってまわってみたい。全然違うスペクタクルがあるはずよね。うわー。
あれ、手前の山に尖がりの時計台のような…。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

一気に陽がさしてきて目の前がキラキラキラキラ…。
近づくとまさに時計台…。
ボートが二つ。漁をしています。
このあたりは大きなカレイのようなオヒョウや、カニ、エビなど沢山。
ちゃぷりちゃぷりとゆれる水面の音。
ジーという音、チチチーというあちこちで氷がとけてゆく小さな音。
ここには10万年以上前の水も空気もただよっている。
息をするのをとっても意識してしまった。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

どうやってできたんだろう?  数万年前から10万年以上前に陸の渓谷に降り積もった雪がどんどん重なって固まりながら河口にずりずりと移動。河口は浅いので盛り上がって崩れたり割れたりして海に放り出されて浮かび、そしてゆっくり溶けたり部分的に崩れ落ちたりして・・ 刻一刻、形を変え、そして、その居場所も移ろってゆく。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

緯度の高い北極圏で太陽光線は斜め。
少し角度が変わるだけで一気に影になったり、急に光ったり。
わ、光ったら、この表面、すごい。
この時計台は針がないけど、ずっとずっと動き続けています。
塔のように尖がっていられるのはあとどれくらいなんだろう?
明日はどこで時を刻むのだろう?

※ “As time goes by” は 同タイトルのJazz/vocal があります。検索してみてください




Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

“Blue velvet”

あ、こっちは山のてっぺんがやわらか曲面。
光が散ったり、集まったり。そして影になったり。
やさしくやさしくブルーの中で光がまわっている。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

つるんとした巨大斜面。
ところどころの凹面もするっと。
こんなにツヤツヤになっちゃうのには何年かかるのかしら?


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

望遠でのぞくと、ブルーベルベットの大きな布がふわーとかかっているみたい。
偶然と巡りあわせがじわじわ色と形を作ってゆく。
自然のアートはすごい。茫然とする。

※ “Blue velvet” は 同タイトルで大ヒットしたpopular song があります。検索してみてください




Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka



“All blues”

「崖」が浮かんでいる…。ブルーの「崖」が。



「崖」の下にもぷっかり浮かぶブルーのミニ氷山。
はがれそうな「岩」の表面もブルー。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

この氷山はきりりとシャープ。
ぐるっとまわってゆくとライトブルーが藍色に、更にメタリックなダークブルーに変わってゆく。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

カモメちゃん、ここにもいるの?
すごいわ。泳ぐし、飛ぶし。
こんなすごーい景色のところも当たり前にすいすい。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

あ、氷の上で休んでいるね。
そうだ。僕たちも一休みしよーっと。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

そうなの。嬉しいことにCafé on the boat.
北極圏で飲むコーヒー。美味しかった。
湿度0%のcool air。しっかり芳しい香がストレートにただよってくる。
ブルーの中のカフェ。
We are now in “All blues”.

この先も楽しみになってきた~~~、
(船の旅後半、次号に続く…)

※All blues; 同名のJazz tuneがあります。検索してみてくださ~い。


Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

“Am I blue?”

ブルーはさわやかなイメージがあるけど、一方で沈んだ暗い気持ちのイメージもある。ブルーな気分というあれです。
でも、グリーンランドに来て遭遇したもうひとつのイメージ、Timeless。
何万年も前からの流れがぎっしり詰まった時空間の色なのだ。
北極圏は太陽のあがらない極夜は二か月近くもあるし気温も零度にはるかに届かない日々も多い。ここに来るまでは草花も極端に少ないしColorfulな自然はなくColorlessだろうなと思い込んでいた。

陸地のミネラルを多く含む雪は渓谷でどんどん積もり上から押されてかたまってゆく。
そして雪の中の空気の泡はじわじわ外に抜けて透明に近づいてゆく。日に日に。年々。ゆっくりゆっくり。
氷は空気の泡があると光を反射して白っぽく散乱しがち。
でも途方もなく時を重ねると光は赤っぽい色だけ吸収して青く青くみえてくる。

そうなのだ。
生まれながらにblue, ”Born to be blue” ではなく、青くなってゆくのね。

思い出した、20代で言われたこと。
「君はまだまだ青いね…」って。
ちがうよね。
「もっともっとこれから青く澄んでゆくよ~」
「一歩一歩進めばいいんだよ~」
「じわじわ君にとって必要なものだけ吸収していけばいいんだよ~」
青。大好き。
“Am I blue?”
“Yes, you are. ”

コーヒーをもう一口すすった。
わ、さすがに船の外は体が凍り付くよ~。
さぶーー…。
わ、指が冷たくてシャッターが切れない…。
ひえーーーーどうしよう~。
私の顔は瞬時に真っ青になっていったのであった。

※ Am I blue”, “ Born to be blue” は 同タイトルのJazz/vocal があります。検索してみてください



Photos, essay by T. T. Tanaka
イラスト by 瀧口希望

(※2020年より前の取材を元に書いております)

グリーンランドに関することはこちらのグリーンランドノートをチェック。


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