“Travel is ENCOUNTERS” (アリゾナ篇) #16
Contributed by T.T.Tanaka
Local / 2019.06.17
グラサンだし・・
Tucson, Arizona; by T.T.Tanaka
スマホだし・・
Tucson, Arizona; by T.T.Tanaka
走っているし・・
Tucson, Arizona; by T.T.Tanaka
滑っているし・・
And steps to the next
砂漠広がるアリゾナ州だけど、ちょっとした町には大学があるんだ。州全体で4年制の大学は50以上ある。(隣のコロラド州も60近くある)結構あるでしょ?
キャンパスは、のんびりしているようで、実は急いで動いている人たちが結構多い。真剣にジョギングに励む人もいるし、校舎から校舎へ持参のスケボーですすすーっと滑っていく人もいる。いいなあ~。これ、したかったんだ。。
それにスマホ片手に、前に前に歩む女性たち。
あ、パームツリーを過ぎて画面から目を離したサングラスの女性。
まぶしい中の姿が美しい。。 ドキッ。。。
Tucson, Arizona; by T.T.Tanaka
多くのキャンパスは、碁盤の目状にストリートとアベニューがクロスしている。
道に沿って動く人影。
ターン90°で道をクロス。
体の向きが変わると急に現れるシルエット。はっとする。足の運びが素敵。目に飛び込んでくる。
大学は縦でも横でも斜めでも円でもどう動き回ろうが自由だ。歩みはもちろん、勉強も研究もだよね。
Tucson, Arizona; by T.T.Tanaka
道路に誰が書いたんだろう。。?
Everything is FINE.
Just Keep Scrolling.
そう。
全ては素敵なんだ。
歩き続けるんだ。
その先は、思っていたことよりももっと広い、想定外の視界が待ち受けているんだ。
でも、歩かないと始まらない。
一歩一歩行こう!とにかく。
全ての道はローマに通ずるって教わったし。。
うん?
まさかFINEって罰金の意味もあるけどそれじゃないよね?
よそみしないでただ, ずっと下へゆきなさいってこと?
よそみしたら罰金だぜ。。?
Pima county, Arizona; by T.T.Tanaka
Go smiling! Keep wheeling!
「はーい! ホールはあっちよ~。授業終わったの~。バイバイ~」キャンパスを笑顔とともに自転車が去ってゆく。
フラットなところが多いから通学には自転車、快適なんだ。
アカデミータウンには自転車が似合うよね。遠くの景色を背景に、風を切り、人と街と触れてゆく。。
来るときは駐輪場にとめて、急いで教室につくとどーっと汗。つい飲んじゃう炭酸がおいしいんだ。。 国内外様々な出身のクラスメートとやあやあと盛り上がりだしたところで授業が始まってゆく。眠くなっている暇はない。
Tucson, Arizona; by T.T.Tanaka
Tucson, Arizona; by T.T.Tanaka
あ、そうそう、大学がいくつもあるツーソンにはバイクも多いんだけど、路面電車も走っている。道路と一体となって車輪でころがって、生徒達、街の人達、観光客も移動している。生活の中の流れにのりつつ通り過ぎてゆく。
路面電車の大学対抗試合告知ラッピングはイイ感じよね。ホッケーだ! こういうの、青春時代の景色になっていくんだ。。電車の向こうには砂漠の岩山をシルエットに暮れかかるほんのり赤い空が見えてきた。
さっきからただよっているバーベキューソースがお腹にしみてきたよ~。
T-boneステーキ、だべたいな。あのすっぱいサボちゃんのピクルスもいっしょに。
もちろん最初に、コ、コロナビール。。!
Ehrenberg, Arizona; by T.T.Tanaka
When flooded
おはよー! シロップかけすぎちゃったけど、パンケーキはおなかに入ったから出かけるよ~。
運転しだすとすぐに砂漠にいるぜ! の実感が高まってくる。”DO NOT ENTER WHEN FLOODED”なんて道路標識が目に飛び込んでくるんだ。これ法律で決まっているんだよ。
最初、この意味がわからなかった。そもそも洪水ってあるの、この砂漠に。。。? だし、川なんてないじゃん! 実際には砂漠の中で強い雨が降ると、少しでも低いところに一気に水が流れ込んで大水量の川ができる。怒涛の水流が道路を襲って横切ってゆく。車ごと流されて人が亡くなることがある。毎年数十人が亡くなっている。
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
幹線道路から脇道に入るとKofa野生保護区。ほんの5分でじゃりじゃり音のする未舗装道路になる。道なりに進むとゆるいジェットコースターのようにうねっているところを越してゆく。これが川跡なんだ。だーっと水が流れたflood跡なんだけどまったくそんな感じはない。からっと乾ききった大きな道路がきれいに作られたかのようだ。すごい。こんなものができてしまうんだね。エネルギーが一気に流れおりた感じ。。。
しばし茫然。
足下にはくだけたかわいい石たちがさまざまな色でころがっている。
ピンク、ブラウン、グリーン、ブラック、ホワイト。。。
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
乾いているけど、まわりのひろーいエリアよりここは低いから水っけはあるはずだよね。
じーっとじっと地面をみつめていたら、小さい小さい花が。。
ちっちゃい芽もみつけたよ。もしかして、サボテンなのかな。そしたらこれが200年生きる芽吹きとの出会いなんだ!
広大なジオラマの中で超ミニチュアフィギュアを次々発見するようなわくわく。とっても不思議な感じで楽しい。
砂漠には小さい命がいっぱい育っていた。
一年後に来たらもう川は別の流れになっているのかしら。。
地面に腹ばいになって小さい命をカメラにおさめた。
あ、君は人間にあったのは僕が初めてね。
こんにちは。
人に会うことはもうないと思うけど踏まれないように~
嵐とか雷や熱風にも合うだろうけど、くじけず生き延びてね~。
ばいばい。
会えてよかった。。
ありがとう。
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
クーガーとゴジラ
車は更に砂をはんでじりじりと音を立てながら進んでゆく。ゆっくり。でも砂煙を後ろに上げながら。40kmほどのループロード。あっという間に2時間が経ってしまう。その間、すれ違う車はゼロ、いや、行く車も僕のだけだった。
山ってきくと三角形の円錐をつい思い浮かべるけど、そんな整ったなだらかな山はまったくない。あちこちにゴジラが天に口をあけて吠えている感じだ。それだけでも緊張して筋肉が張ってしまうのに、なんとアリゾナ周辺の山々には大型のヒョウのcougar(pantherとかmountain lionともいわれる)が3000頭近く棲息しているって。僕は色々ないきものは好きだし、まず彼らは人を襲わないと言われているけど。。緊張する。彼らは僕が近づく相当前からとっくに車ごと存在を察知しているからまず出会うことはないんだ。
岩山が奥にそのまた奥に何層にも重なって見えている。夜中に冷えた地面近くの空気が夜明けとともにじんわり霧となって立ち上ってゆく。そして層状態でゴジラや怪獣の顔面をあがって空に、大気圏に抜けていくのだ。 その光景には茫然と見入ってしまった。すごい。この世のものとは思えない。見たことがないのに火星や月の景色ってこんなのかしらと思ってしまった。
あ、生きものたち、そうそう、cougarたちもこんな景色を一緒に見ているのかしら? この景色好きだったら会話ができるかな。。
太陽の位置が動くと霧もシルエットも影も移動していく。一刻たりとも同じ景色が続かない。午後も深くなると、西の山の向こうはちょっとした瞬間に赤味を見せるのだ。
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
やっぱりいましたサボちゃん。道の脇に、あそこにも、そしてゴジラ岩山の方まで育っている。白っぽくヘアをふわふわに盛ったようなサボちゃんもいてゴツゴツシルエットの中でやさしく光っている。きれいね。
Kofa National Wildlife Refuge, Arizona; by T.T.Tanaka
あんな向こうの山と山の間にぼつんと育つサグアロサボテン。シルエットが小さいけどはっきり見えた。ああ、もう、あのすぐ後ろは空、宇宙だ。。。
あのサボちゃん、クーガーも、ゴジラも、晴れた日にはひろーい砂漠も、ひろーい夜空も当たり前に見ているんだよね?
一人だけど、僕よりもずっとずっと世の中のことをしっているのかもしれない。
君と一緒にここで一夜あかして地球を宇宙をいっぱいいっぱい感じてみたいな~。
きっと自分が素敵な存在になれそうな気がする。。
また会えるといいな。
大変な時も来ると思うけど、元気で育ってね~。
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
宇宙がそこに・・
砂漠は太陽が地平線に沈むぎりぎりの高さまで光をダイレクトに感じることができる。でも沈むと一気に暗くなってゆく。
都会は太陽が見えなくなっても実は太陽はまだまだ地平線の上でダイレクトな光がビルなんかにさえぎられているだけなんだよね。
砂漠では夜明けもなんだけど日没時間は本当にゴールデンタイム。色のグラデーションがゴージャス。しかも刻一刻深くなっていく。自分の幸福感がどんどん高まってゆく。
だからここではどうしてもぎりぎりまで見とれていて、それはいいんだけど、突然、慌てることになる。
今日の泊るところ、どこだっけ? あらまだ20マイル(32km)あるじゃん。やばい、ガソリンもないよ~ひえー、く、暗いよ~ガソリンの針がもう下についちゃったよ。。。あと、10㎞。
祈りつつ手に汗。じっとりハンドルを握りつつ、何とかたどり着いた。。
みたいだけど。。。
え、UFO? 空飛ぶ円盤みたいなシルエットが道沿いにぬ~っと。
ここなんだ。Space Age Lodge。
もともと1965年に開業して、オーナーなど変わったり、レストランも燃えたりしたけどリノベートしてホテルチェーンの一つとして元気に地球上で再開している。開業時は月に宇宙に人類が挑戦開始したころだ。アリゾナには軍や宇宙・天文関係の施設も多くそういうことからのようだ。お部屋にはspace shuttle時代のいろいろな写真をはじめ、インテリアがいきなり宇宙になっている。
夜、まさか宇宙が出迎えてくれるとは。
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
看板や、受付への入り口など宇宙タッチであふれている。円盤の入り口、ふむふむ。あら、Gの文字、矢印になってるね。あ、Aも。
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
宇宙がお迎えしてくれる。自分もちょっと宇宙飛行士になった気分でわくわくする。
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
宇宙遊泳だ!
UFO?, Gila Bend, Arizona; by T.T.Tanaka
空飛ぶ円盤に記載されたお部屋番号にいくんだよ。1Fしかないけど。
今思うととっても不思議な空間なんだけど、現地にいるとなんの違和感もなくなじんでいた。どうしてなんだろう・・?
そういえば、明るい昼間からずっと目には空が、宇宙が映っていた。。
サボちゃんの背景にも見えていた。。
宇宙がこんなに身近に感じられるなんてとっても素敵だ。
ぐっすり寝ながら宇宙遊泳しようっと。
あ、ワンちゃんの宇宙服もあるのかな?
一緒にね~
身近なものたち
「きのうのお月さん三日月だった?」と聞かれると答えに困ってしまう。
「きのうお月さんきれいだったね~」と言われてもどう反応していいかうろたえる。
きっと僕だけじゃなくって都会に住む多くの人たちは答えられない。。。
そうなんだ。「月」は都会にとって身近な存在じゃないから。
ニュースは、月や他の惑星などに行けた!、とか、大気圏打ち上げに成功した!と大きく扱う。私たちがそれらと距離を縮めることができたという意味だよね。
現代人の方が、大昔のたとえば縄文人やギリシャ・ローマ人よりぐんと宇宙への距離は近くなっているということか。。
でも宇宙は私たちの身近なものなのかしら?
アリゾナの砂漠にずっと身をおいていると、身近なものが増えてくる。
まずはサボちゃん。サボちゃんがじわじわ大切な日々感じる命のひとつになってくる。
そのサボちゃんの育つ砂漠が身近になるし、大地を感じて地球が自分とつながってくる。山のてっぺんにあるサボちゃんに気持ちを寄せるからその背景の大空や宇宙も身近になってくる。自分の延長に。いや自分が宇宙の一部になってくる気がするんだ。
うん。まさか砂漠にいったら宇宙が身近に感じられるなんて想像もしていなかった。
ネットで国境は関係なくまた距離も関係なくつながるから多くのものがもっと身近になれるしなったのかと思ってたけれど、実は多くのものが身近な存在じゃなくなっている。
もしかすると、昔の人達の方がはるかに幅広く多くのものたちを身近に感じていたんじゃないかしら。。とっても彼らがうらやましく思えてきた。
そういえば、今まで僕が訪れたどこの大学のキャンパスでも気持ちよく歩けた。
そう自由な空気・・多くの人が前を向いて縦横に活動している。普段の自分をしばる境界をとっぱらって、今まで全く身近じゃなかったものと出会い、結びついて、自分の、みんなの可能性を感じて挑戦していく。
そのキャンパスが砂漠の中にあることはとーっても素敵。都会への人の流入は増える一方。彼らに欠落しがちの、でも、宇宙の中の、地球に住む人類にとって決して忘れてはならない身近なものに気づかせてくれるもの。
えーっと、今日は、満月に近い月齢13.5。。。あ、だめでした。そういうことじゃなくって、
「今日のお月さんはちょっとぽっちゃり、ぽっと赤くてちょっとニキビもあって恥ずかしそうだったよー。けどお芋の煮っころがしみたいでおいしそうだったね~。あの月をあの人に贈るカードに描いてみたいんだ・・」て言える人間になりたい。ね。
Photos, essay by T. T. Tanaka
イラスト by 瀧口希望
アリゾナに関することはこちらのアリゾナノートをチェック。
旅はENCOUNTERSアーカイブ↓
フロリダ篇
カリブ篇
アリゾナ篇
ワイオーミング篇
アソーレス篇
グリーンランド篇
ネブラスカ篇
ラトビア-バルト海篇
Tag
Writer
-
T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。