“Moon River”

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“Moon River”

フロリダ II 篇 #67

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / 2023.10.30



“海がまぶしい”

わー。まぶしい!
キラキラ目の前の海が明るい。
メキシコ湾の午後。
フロリダ半島の西海岸。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


釣りを楽しむボートのシルエットがゆっくり揺れている。
たっぷり波の音、海鳥の声。陽の光と熱を思いっきりあびることができていいなあ・・。


Source; One World-Nations Online Project



Source; One World-Nations Online Project


今いるところはCedar Keyという人口680人くらいのフロリダ州の北西の小さな町。
アメリカ大陸の東のかなり南の方になる。(星印のところね)
メキシコ湾(Gulf of Mexico)の海岸に沿って海流が流れているんだけど、フロリダ半島の西北あたりは海流がほとんど流れなくって湖みたいに静かなエリアもあるんだ。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


ときおり目の前をよぎる大きなシルエット。80cmくらいはあるかしら。ペリカンがゆさゆさと飛んで行く。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


船をつなぐ杭や釣りの桟橋には水鳥たちがよく羽を休めてとまっている。
あ、下の右にいるのは鵜(ウ)ね。水の中をもぐってお魚とります。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


桟橋に釣り人からお魚をもらおうと集まるペリカンちゃんたち。このお船はいまから出航なの。だからもうちょっと別の船が帰ってくるのを待ちなさいね。

おうちのガレージやお庭においてあるカヤックやコンパクトなモーターボートを車の屋根や荷台とかカートに乗っけてエイッとひっぱってきて海に浮かべるんだ。ボートランプ(boat ramp)といわれる簡単な海へのスロープがフロリダには結構あるんだ。道からままつながっていて誰でも簡単に使用できる。
自分で船もっていると行動範囲が広がっていいよね。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


こんなふううにちょうど風もなく、満潮の時だと、まるで鏡面のような海。
ポチャッポチャッと泳いでくるイルカに出会える時もある。
手前の杭はお船用。
後ろはレストラン。
遠くに見えるのは海の上にあったおうちの跡。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


少し歩いて場所を変えるだけで白い砂浜。
パームツリーが元気に育っている。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka



Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


まだアチチの砂浜を裸足で歩くのも足裏でフロリダを感じられてきもちいい。
その感触、大人になっても思い出すよね。
ヤシの木はいい日陰になる。こんな感じで砂をクッションに座って・・
やさしい波の音を聴きながら、人生を考える?のもいい時間なのだ。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


たかーく伸びたヤシの木。
でも、嵐にもきっと遭遇しているよね。
この木が上から見てきたツーリストたちは何万人、いや、もっとよね。
そのベンチにすわるから、君が見てきたこの砂浜景色の変遷をきかせて~


“海の上のお食事--Restaurant on the sea”


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


さっきから香ばしい空気が流れて来るなあとおもったら海岸沿い海の上に並んで建てられたシーフードレストラン。
夕飯にはちょっとまだ早い気がするけどお腹すいたし・・・ ときょろきょろしていたら、
「ここ美味しかったわよ~ Oyster(牡蠣)もフレッシュで・・」とベンチでくつろぐ女性が・・・
「あ、そう。行く行く!」
「Have a good time, good drink!!」
階段のぼってレストランへ向かおうっと。。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


予約していないから、
入口でwaiting listにボールペンで名前書いてと・・
お、ぞくぞく来ますね~
黒板には大きくパイナップル。パイナップルはレモンがわりにも使うときもあるし、ソフトドリンクもあるし、ラムベースのカクテル、ピナコラーダもあるし。
Thursdayスペシャルってなんだろうね。
おっ。順番来た~!!


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


通されたテーブルの真横の壁。牡蠣殻でいっぱい。向こうは海が見えている。そうそう、貝塚みてきたんだものね。
このレストラン、海の上に建っていて、海も空も視界に飛び込んできて気持ちいい。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


高い天井からさがるペンダント。
笑い声、拍手、ナイフやフォークの音、子供の歓声も響いている。みんなの声が聴こえると食欲ボルテージもついあがってくる。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka



Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


抜ける空を背景にドリンクのロゴが見え隠れ。
White Claw SELTZERも。
アメリカでもビール離れ!! なんだけど、2019年くらいからアルコール入り炭酸果汁がすごーくはやってきているんだ。「White Claw」っていうのはもともと波が三つ重なってできる巨大な波のこと… 水しぶきの清涼感あるよね。飲もうと思ったんだけど…


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


DRINK MENUをみたらやっぱりここに目がとまってしまった。
ラムベースのカクテル、ピナ・コラーダ(Pins Colada).
冷えたココナッツミルクとパイナップルジュースが効いているはず。やっぱ、これ。
ギンギンに冷えたのが来た~!! 
スライスがパイナップルじゃなくってオレンジスライスっちゅうのがフロリダっぽいような・・。
カクテルでものんびりのんでゆくのが「ロングドリンク」(Long Drinks)。縦にながーいグラスが嬉しい。

あー。ピナコラーダにオレンジのフレーバーが合わさると、長ーいスワニー川沿いについにメキシコ湾に着いたっ!て実感がする。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


Oyster On The Half Shell (貝殻付き牡蠣)のレモン添え。二枚ある片方の殻は外してくれてあって(はずすのコツがいるんです)、レモン汁を絞ってかけてフォークでエイッと・・。
大人の味がレモンの酸味で美味しい~(牡蠣ダメな人ごめんなさい)
昔からずーっとこのエリアで賞味されてきていると思うと昔にも旅できる。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


このサラダはアメリカの定番かしらね。レタスとトマトときゅうりとオニオン。ドレッシングはサウザンドアイランド。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


そしてこれも頼んだthe アメリカンのクラムチャウダー。
赤いトマトベースはマンハッタンスタイルなんだけどこれは クリーミーなホワイトのニューイングランドスタイル。白ワインやタイムの香りもして玉ねぎとベーコンの風味もグッドであさりが美味しい。
それと、クルトンじゃなくって小粒な四角いクラッカー、ウェストミンスター・ベイカーズ オイスタークラッカー(WestminsterのOyster Crackers)が添えてあるのが嬉しい。なかなか日本にはないんだ。1828年から作り続けられていて「大草原の小さな家」シリーズに登場している・・
オイスタースープ用に作られたものでぬれてもパリっとした触感が大人気でクラムチャウダーにも広く使われるようになったのね。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


テーブルに描かれたお魚と、二種類のホットソースもいい雰囲気。
やっぱり頼んじゃいました。ビール。
メキシコ湾だし、メキシコの定番ビール、Corona Extra. 小さめの瓶だし、グラスに移さないで、スライスしたライムを瓶の中に落としこんでそのまま飲む流儀でいただく・・・。さっぱりめの喉越しがいいね。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


殻ごとそのまま食べられる蟹(ソフトシェルクラブ)にするかで迷ったんだけど、ちょうどローカルの新鮮な海老(Shrimp Dinner)をみつけてそれに。Brown Shrimpといわれるイキのいいもの。フライパンでさっと炒めたPan searedにしてもらった。ね、なかなかいい色でシャキっとしているでしょ? プリプリでレモンをちょっとつけるだけでおいしい。
コロナビールがすすんじゃうよ・・・

そろそろ日没になるし、スイーツ食べると終わっちゃいそうなので明日にまわすことにした。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


レストランから出るとあら、お日様がもうこんなに傾いて・・
お客さんは みんないい感じにできあがってしまっているけど階段は気を付けておりないとね・・


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


あら、グラスに描かれたお魚。これはGrouper(ハタ)ね。このお魚もすごくうま味があって食感もよく美味しいのよね。次回はこれを是非いただきたいなあ・・。

食いしん坊のせいかしらん・・・。新鮮なシーフードの街は時間が踊るように過ぎてゆく。
お魚の後ろに迫る夕焼け・・・


“サンセットを見に行こう”


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


レストラン並びの海岸通りは楽しい。
この時間になるとどんどん空の色が変わるし、色んな人達が日没を見に集まってくる。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


波止場に向かって・・。
花火とかじゃなくって、
サンセットを見に行くの。
みんなのシルエットもアクセント。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


こっちのカップルはベンチで一休み中。
そろそろ移動しなきゃ。
お日様がもう下がってきたよ。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka



Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


漁に出ていた船も日没に合わせて戻ってくる。
ピンク、オレンジ、レッドが混ざる空。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


帯のようにかかる雲の向こうに沈む太陽。
海岸通りを近づいてきた車。ヘッドライトがまぶしく目に入る。
あのお家の向こうにはちっちゃな空港もあるんだった。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


ああ・・・沈む沈む!
夜釣りのカップルがシルエットに、そして闇に溶け込んでゆく。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


そして、日は沈んだ。
ライトが点いてすーっと風が流れてきた。
明日もお天気になりそう。


“Orange Moon”


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


西に日は沈んだけど、今日はもう少しするとお月様が東から出てくるはず・・。しかも満月。

その間ちょっと歩いてみようっと。
桟橋近くのモーテルの中のラウンジに灯がともっている。外にはブルーのベンチ。昼間はにぎわっていたのにね。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


こちらのモーテルもブルーの屋根明かりが美しい。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


静かな波の音がホテルの壁に反射してくる。イエローの壁とオレンジ色の灯り。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


サックスとギターのメロディ。刻むドラムの音と歓声。ライブが聴こえてくる海上レストランのライブ。反射して揺れる明かりもエネルギーが満ちている


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


ステージの熱気あふれる1F フロア。仲間同士の食事でもりあがる2F フロア。やっぱりみんな元気でなくっちゃね。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


ママとbabyも外のテーブルでご機嫌。中の音楽のリズムに合わせて二人が揺れている。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


賑やかな音と光にすっかり気がとられていて・・・
振り返ったら・・・!!!
なんと、わっ・・・
東の海上すれすれにぬっとオレンジみたいな満月が・・・
とっても甘くておいしそう・・・
濃淡ある色に圧倒される。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


水平線からみるみる高くのぼってゆくお月さま。
一気に明るいお月様になってゆく。
海には反射した光が長ーく長ーくつながっている。


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


まるで月から流れてきた川のように・・・


Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka


身分の目線より上にまでのぼった。
真っ暗の空にまんまるで今だけそこに浮かんで止まっているみたい。
吸い込まれそうな満月。
雲の影がその前を横切ってゆく。

フロリダ、メキシコ湾でみる月。
この月を昔からみんな見つづけてきたんだね。
今もね。
同じ月を見ているかもしれないあの人の顔が浮かんだ。


“Moon River”

こんなにながいながーいお月様の反射する光を見たのは久しぶりだった。
光が川のように流れていた。

月が水平線からぽっと誕生したときの色はまさにオレンジ。
そして上がりだすと明るいイエローにそして一気にホワイトになってゆく。
水平線から出て姿をどーんとみんなに見せるお月さんは舞台上の主役みたいにすごい存在感がある。
まぶしいし、そこから光の川がキラキラ流れだしてくる。

Moon rise は何度見てもドラマ。
じっくり見れたときは もうとっても幸せな気分になる。

“Moon River” スタンダードナンバーとして数えきれないくらい多くのミュージシャンが歌い続けてきた曲よね。 1961年にオードリー・ヘップバーンが主演した映画、“ティファニーで朝食を” (Breakfast at Tiffany’s)で彼女が歌った(アカデミー主題歌賞)のが最初。62年前なんだね。
感情の抑揚が奏でられるメロディーは大好き。これが1オクターブの中におさまっているとはびっくり。

素敵なその歌詞はこんな感じ; あなたは 夢を見せてくれるけどその夢を壊しちゃいもする。さまよう二人の間にある川は1マイル以上もある川かもしれないけど、その川を私は越えてあなたと一緒に歩んでゆく。あなたはトムソーヤーの冒険に出てくる冒険友、ハックルベリー・フィンのようかもしれない。

同じ月を見ていると行く方向が同じだと気づける感じがする。
キラキラ光るいくつもの筋でわたしとあなたがつながっていて元気も出てくるのだ。

あ、そういえば、
今回とりあげた満月は、ちょうど “Pink Moon” といわれる満月だったんだ。
月の色がピンクに見えるからじゃなくて、昔からちょうどピンク色の花が鮮やかに咲く時だからなんだそう。
僕はこのお月様が姿を現した時、ピンク色じゃなくってオレンジ色に見えたのだ。その瞬間、レストランで飲んだピナコラーダ(Pina Colada)に添えられたローカル自慢のオレンジを思い出していたのだった。
だって美味しかったし・・


Photos, essay by T. T. Tanaka


※ “Moon River” は1961年に誕生。ジョニー・マーサー(Johnny Mercer)作詞、ヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini)作曲。オードリー・ヘップバーンの他、アンディ・ウィリアムス、ルイ・アームストロング、サラ・ヴォーン、フランク・シナトラ、エリック・クラプトン+ジェフ・ベック、イーディ・ゴーメ、Ben E King、ミルスブラザーズ、ボビー・ヴィントン、カウントベイシー楽団、平井堅、内田勘太郎・・・カバーは無数。 1994年には3人のクラシックテノール歌手José Carreras, Plàcido Domingo, Luciano Pavarotti,による合唱もある。全曲Moon RiverだけのCDもあるみたい。検索してみてください。




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