another way to discover BKK<br>かっこいいバンコク、見つけた。

another way to discover BKK
かっこいいバンコク、見つけた。

Contributed by 在本彌生(ありもとやよい)

Local / 2022.11.22

だんだんと賑わいを取り戻しつつある街と、そこで生きる活気あふれる人々。単なる旅の中継地ではないクールな街、バンコクを写真家・在本彌生氏が訪れた。



よく立ち寄るのにロングステイをしたことがない町、私にとってのバンコクは大抵旅の途上の中継地だった。

初めて訪れた時から数えてかれこれ30年近く経つし、回数だけは相当数立ち寄っているのに、町の地図が全く頭に入っていない。ラオス、ミャンマー、ブータン、南インド、エチオピア、南アフリカなどなどに行ったときはフライトの中継地なので、ここでワンクッション入れてビザを取得したり、目的地へ元気に向かうためタイマッサージのとタイ料理で鋭気を養ったりした。そんな風に、バンコクは旅の通過点として私の中に印象付けられている。

ファッション撮影の仕事で滞在したことも何度かあるが、バンコクを休暇気分で過ごした経験がない。それではなんとも寂しいではないか。いや、でも、世の中の働く人々、日本からも来るビジネス目的の人々の多くも、私と同様にバンコクを楽しみきれていないのではないかしら。アジア有数のメガシティ、バンコク、都会の中にあるコントラストを感じながら、じっくり遊べたら楽しいに違いない。





早速街に出てみると、コロナ禍を乗り越えて賑わいを取り戻しつつあるように見える。通りに面したカフェや屋台も明るく元気に営業中で少しホッとした。

タイでは長期間に渡って厳しい外出規制があったと聞いていたので、人々が活気を持って動き回る様子に接すると、こちらも背中を押されるような気分になる。ヨーロッパからの旅行者たちが散策しているのも多く見かけるし(その一方で東アジアからの旅行者は以前に比べてまだ少ない)、地元の人々も日常生活を徐々にコロナ禍前の感覚に戻り、外出も普通にしているようだ。ナイトマーケットや歓楽街も、遅い時間まで人出が多かった。



到着早々、バンコクに住む友人と久しぶりに再会した。日本にいたときもオンラインで彼女とは会話していたものの、久しぶりのリアルな対面だ。嬉しさと同時に少し照れくささが伴う。小さな食堂に入り、氷をたっぷり入れたジョッキに瓶ビールを注いで乾杯した。

そうだ、こうだった、タイでビールを飲むときは。

普段からビールに氷を入れはしないが、南国で水代わりにビールを飲むなら、こうするのが一番いい気がする。冷たいお茶を飲む感覚とでもいうか、タイで食べる辛めの料理にはぴったりのペアリングでもある。小さなひとつひとつの出来事から「タイスタイル」を思い出し、自分のあちこちをチューニングしていった。

あぁ、それにしても、こんな風に飲みながら食べながら、顔を付き合わせてのコミュニケーションにこれほど自分の気持ちが動くとは!少し感動さえ覚えてしまった。そしてお互いに今元気でいることが心底嬉しく胸に沁みる。これから何をどうしていきたいなどと語り合うのも、アフターコロナの今はちゃんと現実味を持って少し未来のことに目をやりながら話ができるようになったので、以前より前向きで気持ちがいい。



「たまらなくローカルで面白くて絵になる、そんなところに行きたい」という私の無茶なリクエストに応え、それならまずはと友人が連れて行ってくれたのは、エビを釣る釣り堀「ジャルンナコン16」だった。



そもそもは美味しい料理を提供するシーフードレストランなのだが、どうやらお客さま方は焼肉の方がお好みらしく、大皿に山盛りになった肉があちこちのテーブルに運ばれ、人々はそれをテーブルに設えられた鉄板で焼きながら食べる。



その一方で大きなプール状の釣り堀が店の3分の1の広さを占拠していて、それを囲むように飲みながら、食べながら釣り糸を垂れる人たちが座っている。釣り堀もレストランも人でいっぱい、なんとも活気に溢れている。釣れた海老はその場で調理してもらうこともできるし、持ち帰っても良い。釣り糸を垂れている人たちは、皆夢中になって水面に目をやっている。今日ついている人にはどんどんかかり、かからない人にはからきしかからない。

友人の息子くん(小5)は、隣に座った近所のお兄さんが二匹釣ったので、自分も釣れるまで帰りたくないと食事もせずに粘ったが、残念ながらこの日はボウズだった。そういう日もあるよ、と母親になだめられ、しょんぼりしながら帰る後ろ姿が可愛かった。



今回のバンコク滞在中再訪したい場所がいくつかあった。
そのうちのひとつが、以前ファッション撮影のロケーションとして訪れたモーラムバー「Nakorn Cafe Restaurant」私史上忘れがたい名作を生み出した場所だ。
モーラムは、今やジャンルを超えてのコラボレーションも多くされているタイ東北イサーン地方発祥の音楽。日本人的な感覚でいうと、明るい演歌みたい、とでも言おうか、ちょっとノスタルジックでダンサブルだ。そんなモーラムを生で聴けて踊れる場所がモーラムバー。キッチュな装飾とライティングのステージが設えられていてこれまた絵になる。





面白いのは、この場所がイサーン地方からバンコクに働きに来ている人たちのミーティングスポットになっていることで、そのせいかよそ者の私がそこにいても、違和感なくとても親切に受け入れてくれる。ビールを飲みながらステージで歌うシンガーの声と生演奏を聴いていると、陽気な女性(彼女もシンガーの一人)に踊りましょうと誘われる。断る理由もないので、彼女の動きや手つきを真似ながら両手をひらひらとくねらせて踊ってみる。彼女たちの笑顔の屈託なさといったらない。私も明るくいこう、明日も頑張ろう!そんな気になった。



出張で来ているのだから当然だが、滞在中、日中はホテルの部屋で仕事をしていることも多かった。それでも「よく働きよく遊べ」の精神でいたいから、夜は夜できっちり遊ぶ。バンコクはそれにはうってつけの街だろう。思い返せば、どういう訳かこれまでこの町で正統派のバーに出かけたことがなかったが、今回いくつかお気に入りのバーを見つけられたのがうれしい。



夕闇迫る頃、バンコク・マリオット・マーキス・クイーンズパークの38階にあるルーフトップバー「A’Bar」に向かった。

広い空と眼下に広がる街並み、涼やかな風に吹かれながら、ゆったりとした気持ちで頂くお酒は格別である。こちらで味わうべきは世界各国のジンのセレクション、ずらりと並んだボトルも美しい。この素晴らしいロケーションで色々な種類のジンを試せるなんて最高だ。昼間によく働いた自分へのご褒美として、トロピカルフルーツを使った爽やかなカクテルではじめ、お次は勧められるままストレートのジンを4種類飲み比べてみる。中でもマネージャーイチ押しのプーケットの小さな蒸溜所で作られているというローカルジン「SANEHA」、これが素晴らしかった。





パイナップルの風味が漂いなんとも色っぽい味、爽やかで甘やかな、一口で誰もがうっとりしてしまう飲み口だ。仕事やなんやでいっぱいいっぱいになった気持ちもここに来ればしばし忘れて別世界に飛べそう、明日へのやる気につながるというものだ。



もう一軒は「alonetogether」
まさに大人の社交場という言葉がぴったりの徹底的に洒落た店だ。細長いカウンターでビシッとタイをしめたバーテンダーたちがキビキビと働く所作が美しい。店の扉を開けた瞬間からシアターに飛び込んでしまったよう。甘くないカクテルを、とオーダーすると、女性バーテンダーがシェーカーを振り、薄紫の魔法の液体が綺麗なグラスに注がれて…この時点で既に目でお酒を飲んでいる私。そして冷たいグラスに口をつけると、この瞬間がたまらないのだ。



程よく狭く仄暗い店内がほろ酔いの頃にはやけに居心地が良く、奥のスペースではジャズのライブが始まった。上も見てねと促され二階に上がってみると、そこは全く違うコンセプトの部屋で、まるでレコード好きのだれかの部屋に訪ねてきたみたい。そこはずらりと壁際に並んだLP盤から好きな一枚を選べばレコードをかけてもらえるシガーバーになっていて、ウィスキーの品揃えが豊富だ。



まったく、どこまでもかっこいい店ではないか。
こんなところもあるなんて、クールだな、バンコクは。




協力 バンコク・マリオット・マーキス・クイーンズパーク
2022年7月より2023年1月初頭まで、世界3カ所のマリオット・ホテル(サンフランシスコ・マリオット・マーキス、 バンコク・マリオット・マーキス・クイーンズパーク、ロンドン・マリオット・ホテル・カウンティホール)にて、期間限定でTEDとコラボレーションした「The Curiosity Room by TED」が展開されている。
https://marriott-hotels.marriott.com/ja-JP/ted-x-hotels/
部屋の中に隠されたたくさんのヒントをもとにクロスワードを完成させる仕掛け。内装も街ごとに違いポップで楽しくデザインされている。









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