![“Travel is ENCOUNTERS” (ネブラスカ篇) #39](https://container-web.jp/wp-content/uploads/local_post/38623/20210519/f5bb04d5387658040c4e28776bb7787e.jpg)
“Travel is ENCOUNTERS” (ネブラスカ篇) #39
Photos, essay by T. T. Tanaka
Local / 2021.05.24
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“Green in blue”
人口100人足らずの町、Berwynで遭遇したこどもたちの笑顔の余韻にひたりながらネブラスカ州道2号線を西に向かう。
5月末。車から見える景色はブルーの空の下、全面グリーンになった。一面芝生でおおわれたようなゆるやかな丘陵。ぽつんと育っている木が絵になって美しい。
ネブラスカ州は東から西に行くにつれて年間雨量はどんどん減ってゆく。夏は暑く冬は寒い。雪は70㎝くらい積もる。竜巻にもときどき襲われる。大きく育っている木は圧倒的に少ない。昔入植した人々が木々を切り倒していったのではなくて、もともと、気候が厳しくて木が育ちづらいのだ。入植者たちは、木があまりないので、芝生をブロックのように切り取って、これで家を建てていた!そう。その家を sod house という。湿気があるので大変だったらしい。
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遠くに、鳥たちがたくさん舞っていてその下にゴマ粒のようなものが点々と・・・。
放牧されている牛さんたち。あ、こっちまで下りてくる牛さんたちもいました。顔が白いね。
ネブラスカ州は大平原(グレートプレーリー)の中の全米屈指のトウモロコシ生産農家たちに恵まれて肥育牛の数はトップクラスにあるそう。
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ぽつんと生えている木の近くをみんなで草をはみながら黒い牛さんたちが歩いてゆく。いいお天気。
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Mud river沿いの州道2号線。気分転換にエイっと曲がって川近くまで車で入ってゆくことにした。
あ、車はここまでね。だーれもいないけど、標識があるってことは人が来るってことね。ここから先は焚火も花火も禁止。水泳も禁止。5月から7月はワンちゃんを放したりするのは駄目。何か建ててもダメ。車止めて歩いてゆきまーす。あ、地図に特別記載されているところではないの。Googlemapにもね。地元のひとたちはきているだろうけど。そういうところは実はちょっと楽しみなんだ。
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草原の中の小道を10分ほど歩いたかしら。わ、一気に開けた。
気持ちいい風がほほをなでてゆく。きっとここは昔からの自然のまま。
この景色から厳しい冬を想像することはむつかしい・・。
あの向こうが川なんだろうけど、あまりに遠いので仕方なくここであきらめた。
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雨水が少なく乾燥エリアだけど、ところどころ木が連なっているところがある。きっと地中では水が流れているところなんだろうね。動物たちもわかっていてそこを往来していると思う。
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砂漠じゃないのに緑の中にユッカ。元気よく尖がっている。
この辺はやっぱり乾いているのね。でも、寒さによく耐えてるよね。
それにしてもここまで種を運んだのは鳥なのか、人なのか・・・。
まさか1500km離れた南西のアリゾナ砂漠からではないよね・・
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ブーンという声に振り返ったらみつばちがホバリング。緑の地面にちょっぴり黄色のお花が。
あ、菜の花ね。カミキリムシみたいなのも元気に手を足を伸ばしている。
※ “Green in blue” ではなく ”Blue in green” というタイトルのヒットしたJazz tuneがあります。検索してみてくださ~い。
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“Smile in Great Plain”
オマハから西に300km 。ちょうどネブラスカ州の真ん中あたりにある町、Broken Bow に着いた。人口3500人ほど。1882年に市になり、鉄道はその2年後にこの町に到達した。この近くでキャンプしていた先住民の折れた弓(Broken bow)が発見されてそれが町名となっている。今ではこの南にネブラスカ最大の肥育牛サイトがあるらしい。その頭数、85,000頭! この町人口の20倍以上・・・!!
メインストリートから入るとすぐにかわいいお家が並んでいる。このお家の入り口は昔の荷車車輪がアクセント。素敵ね。
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白い雲のように密集した小さな可愛い白い花たち。ガマズミみたい。秋には赤い実になるのかしら。
タンポポも春が終わり真っ白のぼんぼりさんに。長い綿毛が飛んで行きそう。
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昼下がりの町。大平原のお日様がまぶしい。
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木陰に素敵な住宅が点在する。鳥たちの声がきもちいい。目の前をイエローのアメリカムシクイ鳥が飛んだ。
わ、おうちの壁もイエロー。美しい。
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ポーチのライトの横にアメリカの国旗がときどき揺れて見え隠れ。
Cotton woodの木が美しい。
庭のお掃除の音や芝刈りの音が聞こえてくる。
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「あ、こんにちは。階段とポーチ、素敵ですね」
「ありがとー。今から短いけどいい季節なんだ。のんびりポーチのお昼寝は最高なんだ。でも、今芝刈っておかないと・・。どこから? おー日本かい?」
「日本で本出しているんですけど、お撮りしていいですか?」
「嬉しい嬉しい。あの子は孫なんだ。おーい、おいで~」
ピンクとブルーのサンダルはいた女の子が駆けてきました。おじいちゃんにべた~。
「こんな感じかい?」
「いいですね~。ピンクのフラミンゴも入りましたよ~。」(カシャリ)
お二階のクリームイエローの出窓、あそこからの景色も最高だろうなあ。
「あ、すみません、おじさん、この町のお気に入りのレストラン、教えてくれます?」
「あ、ふむふむ。え、なるほど・・。わ、そこ行ってみます~。ありがとうございました!」
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“Sod House Frontier”
裁判所の前にBroken Bowの町の由来が掲示されている。アメリカはどんな町でもメインのどこかに説明があって嬉しい。発見された折れた弓のことも、木がないから芝生で作った家のことも。あ、二階建てのsod(芝生)houseもあったのね・・・
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郡の裁判所。Custer郡(county)のcourt house 。はるか昔風にUがVとして彫られているけど・・。(アルファベットは500年ほど昔、VはあったけどUはなかったんですって!)
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ダウンタウンでみつけた1887年の建物。国の登録文化財になっている。ストリートから隣のストリートまでの一ブロックにまたがる当時では一番大きかった建物。今でも1Fは使われている。昔はオペラハウスがあって、嵐で被害をうけたときもあったけど、人々が集まり銀行も入っていたそう。かつてこの町では6つの週刊誌と6つの新聞が発行されたいた。それらも今はなく、食料品店が一つ、老人ホームが一つ・・・。
殆どの人は離れた大きい町に買い出しにゆく。
ここも人影が少ない・・でも、前回コラムのMason city(200人),Ansley(600人),Berwyn(100人)にくらべるとはるかに多い方。規模を比べるものじゃないってわかったはずなのに・・・
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古いレンガの建物の元お店。木の扉。どうみても50年以上は経っている。あまり湿気がないせいか塗料ははげていてもあまり傷んでいない。
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これは1912年~1960年に全米で紳士に人気だった葉巻 San Felice cigar。当時のお店看板をペイント再現しているみたい。2本で15セント(約20円)って書いてあるね。メインストリートでも人通りが少ないんだけど、倉庫の壁のペイント演出は素敵な趣。
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教えてもらったレストランBonfire Grill(焚火グリル)に向かう。
昔ながらのレンガ風の外壁とテラスが見えてきた。
お、話し声が、外のテーブルが賑やかね。
ステーキのリッチなにおいが漂ってきた。
お昼を食べ損ねたのでとりあえずちょい補給。のども乾いたしね。
入りましょう。
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ちょうどこの時間帯はすいていてゆったり。大きな空間で一息。
ああ、お三時おやつどきだけど、やっぱりステーキにそそられてしまう・・。ステーキサンドのオニオンとマッシュルーム炒めとスイスチーズのせを注文してしまった。9ドル。
多すぎるじゃん・・。
わ、それに・・・
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喉乾いているしの言い訳でコロナビールをたのんでしまった。
ほら、ライムスライスが入ってやってきた。
いかんよ~。
歩けなくなるよ~。
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そうだそうだ。ここを教えてくれたおじさんが言ってた。インテリアが面白いって。CowboyじゃなくてCowgirlのポートレート写真が壁に何点も。革の乗馬具もいっしょに。彼女の目線が私を見ているように思えて・・。かっこいい。
あ、ここの壁もクリームイエローだよね。
明るくて一息つくのにいいなあ。
はやくステーキサンド来ないかなあ・・・
グビっ・・(コロナビールがもうすぐなくなる)
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“Wheels(自動車たち)”
お店を出るともう夕暮れ。
わ。この雲は何? ダイナミックにはるか奥まで続いて光っている。
ups(アメリカの宅配便)の集配所。トラックがやってきては停車する。運転手が駆け下りて事務所にゆき、急ぎ戻ってくる。彼らが過疎のコミュニティーを支えているのは日本も同じ。
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ドライバーさん。ちょっと一息ですよね。ご苦労さまです。まぶしい夕陽。
今日はこれで終われるのかしら。
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あ、このかわいいフォークリフト。
日本のブランドですね。
こういう出会いはなんか嬉しい。
頑張れ~。
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こっちのストリートではがっしりした四駆に出会った。これも日本のブランド。
最前部に電動ワイヤー巻取りウィンチがあるのはタフな作業をする人ならでは。泥道とか、雪道とか、水があふれるところなどで荷物を運んだりのためなのだ。やはり、厳しい自然が控えているんだね。
この子も頑張れ~。
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わ、このピッカピッカの子は何?
Ford の1960年代の自動車だね。
のびのび~としてメタリックグリーンが青空に光っている。
あら、そういえばこれも大草原のグリーンだ。
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50年以上前の車が大切に磨かれている。
今も夕陽をあびてキラリキラリ。
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車種名、Fairlane 500の文字。
緑のペイントに青空や雲が映っている。
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テールランプが・・・!
全体にまーるいけど、真っ赤に絞り込まれたようなとんがりと凸凹と。
夢いっぱいな感じがする。宇宙に飛んでゆけるような。
希望をかなえてくれるみたい。よくデザインして量産したよね。
大平原の小さな過疎の町、後ろをハイブリッドの輸入車が静かに過ぎてゆく。
エンジンはこれから消えてゆくのだろうけど、このデザインには今でもみんなの夢が乗っているような気がする。
折れてしまった弓(Broken Bow)ではなくて希望の弓で矢が飛んでゆくみたい。
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“Cupid, draw back your bow”
Nebraska州に来たのは2020年より前の5月末。
抜けるような青空だった。
昔習ったGreat Plains(大平原)なるものをこの目でいつか見たいと思っていた。それが現実に車の前にずーっとずーっと広がっている。美しいグリーンでとっても開放的な浮かれた気持ちだった。
その地について学ぶのはそこを本当に旅をしてからだと思う。この気持ちよく見える大草原も、実は自然が厳しすぎて木が育ちづらいからなのだ。以前、砂漠の土でつくるAdobe houseのことを知った。ここでは木があまりないから、かつては、家は芝をブロックに切り出して積みあげて作るSod houseが中心だったことを初めて知った。
Broken Bow という町に来た。この町設立のとき、最初、人の名前でその町名を申請したら他にもあるからって却下された。それならと、その時、話題になっていた、近くの先住民キャンプ地で見つかった折れた弓(Broken Bow)で申請して決まったとのこと。まさに、アメリカ開拓時ならではの香がする。
川沿いの、そして、鉄道沿いにできた町。1882年。明治15年。
人口は3500人。町のサイズが大事じゃないってわかったはずなのについサイズが気になってしまう。ネブラスカ州では大きな方。ネブラスカ州の都市の89%! が3000人未満だから・・・。
町にはかつての建物がわずかに残りhistoric areaがあるものの、観光地でもないので、人もまばら。
けれど、ここでも素敵な笑顔に出会えた。僕のたどたどしい英語で申し訳ないなあと思うのだけど、旅人のことを気配りしてくれたし、やさしさを沢山感じることができた。家の前に置物をちょっと飾ったり、表札に自分でかわいい鳥さんをペイントしたり。そしてあちこちのお家で国旗を出していたり・・。
厳しい自然にみんな向き合い、助け合いながら、でも自然を愛して人を愛して、国も愛している。
色んな歴史が町にも人にもあるのだろうけど、一緒に乗り越えてきた建物や、車にも注がれている愛情を感じることができて嬉しい。
ここでは幸運なことに、農産物も畜産物もフレッシュで美味しい。ポテトもマッシュルームもビーンズもビーフもポークもチキンも。
つい、昼間からコロナビール飲んでしまったけど・・・。
でも、幸せな笑顔の瞬間があるからまた次に進んでゆける気がするのだ。
そう、弓(Bow)を引いて、矢で的をねらうの。幸運を。あ、彼女・彼をねらうのも含めてだけど。
幸せのためにCupidに矢を射ってもらうっていう神話があるけど、
みんな自分がCupidなんですよ~。
そして、BowはBrokenじゃないんです~。
※ "Cupid" という全米で、イギリスで大ヒットした曲があります。検索してみてくださ~い。
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Photos, essay by T. T. Tanaka
イラスト by 瀧口希望
(※2021年より前の取材を元に書いております)
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T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。
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