ローマで出会ったスケーターたち #02

ー MEN FINAL ー
-World street skateboarding Rome 2022-

ローマで出会ったスケーターたち #02

Photo:Leonardo Rodriguez
Interviews & Text : Aco Hirai

Local / 2022.07.26

イタリアの首都、ローマで開催されたスケートボードの世界大会「World street skateboarding Rome 2022」ファイナルの様子を、Women、Men、Behind the scenesの3回に分けてお届け。華麗なパフォーマンスから、仲間に見せる最高の笑顔、ナチュラルなスケーターたちの姿をキャッチしました。

7月3日。
私たちは、ローマで行われている「World street skateboarding Rome 2022」のファイナルの会場にいた。
これは、世界最高ランクのスケーターがローマに集まり、2年後のパリ・オリンピック予選のポイントを賭けた今シーズン最初の大会。

ちょうど数分前、日本人女子がファイナルでトップ4を飾ったばかりだった。
そして、今から男子のファイナルが始まるところ。


女子のファイナル。彼女たちのパフォーマンスで盛り上がる観客席。

男子のファイナリストは、この8名。
グスタボ・リベイロ
ナイジャ・ヒューストン
堀米雄斗
マウロ・イグレシアス
マティアス・デル・オリオ
オーレリアン・ジロー
ヴィンセント・ミルウ
ライアン・ディセンゾ

残念ながらファイナルに駒を進めた日本人は今回、堀米雄斗、一人だったけど、関係者から他の有力選手の奮闘ぶりを聞き、参加したすべての選手が健闘したことを知った。
日本人以外の選手で注目したいのが、絶対王者として知られるアメリカ合衆国のナイジャ・ヒューストン、ポルトガルの若きスケーター、グスタボ・リベイロ、フランスのヴィンセント・ミルウなど。
とにかく、豪華すぎるファイナリストたちの顔ぶれに、彼らがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、と胸がワクワクした。

そして、女子のファイナルが終わってウォームアップエリアへ移動しようとしていたとき、幸運にもナイジャ・ヒューストンとマティアス・デル・オリオを発見したので、思い切って話を聞いてみたところ、一言だけコメントをもらうことができた。



―今の気分を教えて。
ナイジャ:I feel great. こういう大会に出て競い合うのはやっぱりいいことだね。そしてさっきまで女子のファイナルを見ていたんだけど、トップ4が日本人だったね、勝者におめでとう! そして次は男子、僕たちも戦う準備はできてるよ。

1クエッションで終わろうと思ったが、あまりにも笑顔で快く対応してくれたので、もうひとつ聞いてみた。

―ちなみにバンクではいつもどんな曲を聴いているの?
ナイジャ:主にハウスミュージックだね。Black Coffee、SOLOMUNとか。グッドバイブスな曲はテンションをあげてくれるからね。

ありがとうございます、Good Luck.



次に、マティアス・デル・オリオ。

―今の気持ちはどう?
マティアス:I’m feeling really good. この大きなイベントのファイナルに参加できて本当にうれしく思っているよ。僕はここまでくるために本当に一生懸命やってきた。そして、一生懸命やったことがやっと報われたと思う。

ありがとうございます、Good Luck.

9:00pm
焼け付くように照り付けていた夏の太陽もいつの間にか沈み、薄暗くなった空にはぼんやりと三日月が顔を出した。
さぁ、ついに男子のファイナルが始まった!
男子のスケートボードは、スピード感やダイナミックなトリックが魅力で、たとえスケートボード観戦が初心者でも、その技に圧倒され、たちまち魅了される。

 
ライアン・ディセンゾ(CAN)、ヴィンセント・ミルウ(FRA)

セミファイナルを8位で通過したカナダのライアン・ディセンゾからスタート。
難易度の高そうな技を次々に繰り出し、果敢にも新しいトリックに挑むファイナリストたち。
ふと辺りを見渡すと、観客席は大勢の人で埋め尽くされ、会場に入れないファンたちがフェンス越しに応援していた。

 
オーレリアン・ジロー(FRA)、マティアス・デル・オリオ(ARG)

 
マウロ・イグレシアス(ARG)、堀米雄斗(JPN)

 
ナイジャ・ヒューストン(USA)、グスタボ・リベイロ(PRT)

中でも、大喝采が起こったのが、現状1位だったナイジャ・ヒューストンを追いかけ、2位のオーレリアン・ジローが5回目のトリックを決めた時だった。
華麗でダイナミックなトリックが見事に決まり、オーレリアン・ジローがスケートボードを観客に向かって投げたのだ。
観客からは「Wooooooooooooo」と歓声が上がって、誰もが最高得点を期待した瞬間だった。
でも、ジャッジは期待通りには行かず、91.83スコアと本人の表情からも観客の様子からも納得のいかないように見えた。


オーレリアン・ジローが最後のトリックを決め、スケートボードを観客向かって投げた瞬間。

パフォーマンスが終盤に近づくにつれて、観客もヒートアップ。そして、また歓声が上がった。
ナイジャ・ヒューストンが最後の5回目のトリックで、この日の最高スコア93.32を叩き出した。
会場の誰もが彼のパフォーマンスに魅了され、称賛した瞬間だった。
そして、ナイジャ・ヒューストンの優勝が決まった瞬間に、堀米雄斗とハグをし、お互いの健闘を讃えあう姿が見えた。

結果は、
ナイジャ・ヒューストン(279.43点)が制覇。
惜しくも3.47ポイント差でオーレリアン・ジロー(275.96点)が2位、
3位はグスタボ・リベイロ(261.40点)。
そして、奮闘したものの堀米雄斗は8位という結果に。
ファイナル直前のインタビューに答えてくれたマティアス・デル・オリオは、4位で残念ながら表彰台に登ることができなかった。

10:30pm
男子の決勝が終わるとそのままアワードセレモニーへ。


左から 西矢椛、中山楓奈、織田夢海。セレモニーでは、日本の国歌が流れ、聞き覚えのあるメロディーに誇らしさを覚えた。


男子のトップ3。左から オーレリアン・ジロー、ナイジャ・ヒューストン、グスタボ・リベイロ。


ワールドスケートのサバティーノ・アラク会長と、女子にプライズを渡した政治家のロベルト・タヴァー二。

アワードセレモニーで、女子トップ3にプライズを手渡したラツィオ州のスポーツ政策顧問、ロベルト・タヴァーニに話を聞いてみた。

―大会全体を通してどうでしたか?
ロベルト:若いスターたちの活躍ぶりは本当に興味深かったよ。今回のイベントでたくさんの人がローマを訪れ、さらに、本大会はフリーエントランスだったからみんなに楽しんでもらえたと思う。

―日本人の活躍はどうでしたか?
ロベルト:僕は女子3人にプライズを渡したんだけど、日本人の活躍ぶりは本当にすごいですね。きっと日本は最高の環境で、スケートボーディングの文化も根付いているんだと思う。確か去年は、女子も男子も日本人が優勝したのを覚えているよ、東京・オリンピックもそうだったね。おめでとう!

2年後のパリ・オリンピックへの出場切符がかかった大会だったとは言え、一緒に戦う仲間をリスペクトすること、ナチュラルに楽しむこと、そんなスケートボードの精神を教えてもらえた気がする。

10:45pm
感動とエキサイティングな夜が終わった。

ウォームアップエリアからはDJのサウンドと、関係者やスケーターたちの賑やかな声が聞こえてくる。

さぁ、パーティの時間だ。


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